112話 あこがれた放課後
関わりのある異世界転生者たちへレイニーの状態を伝える。もしもの時は俺が思うよりずっと早く来そうな気がして後悔しないためできるだけレイニーを知る人にはこの現実を知っていて欲しかった。
レイニーの部屋は窓をカーテンで塞ぎ、ランプの灯りはガラスを汚して暗くしている。
「よぉレイニー、お見舞いにきてやったぞ!」
「……ガゴリグさん」
「こっちはウルフに、風邪ひいたらしいから好物の魚もってきたぞ」
「カドマツ様に色々教えてもらったんです、人付き合いの仕方も……今それを持っていくと嫌な顔されると思いますよ」
「もう渡した!! すげー複雑そうな顔されたぜ!!」
だろうな、魚で死にかけたばかりだし。
「ガゴリグさんに頼みがあります」
「なんだ?」
「魔王のコアを持つ四天王の4番目が動き出しました」
「え?まじ!?」
「最後の四天王討伐に協力して頂きたい」
「俺は家族を守るために強い奴は他に任せることにしてんだってば……」
「ええ、分かっているうえで協力せざるをえないかと」
「ん?」
「敵は〈大群〉。陸・海・空に大きさ100分の1程度の小さな魔王が大量に湧き出ることが分りまして――連携しないと船、どうなるか分かりますね?」
まさかここに来て数だとは思わなかった。
予言みたいスキルではなく、異世界転生者たちの調査でたどり着いた結論。
レイニーはこれいじょう戦力として表にでれば、本当のラスボス、ハクアが討伐できなくなる。
一番まずい状態は〈ハクアが最後の四天王との戦闘でボロボロになった異世界転生者や協力者を殺しにくること〉だ。
「何匹ぐらいとか検討はついてんのか?」
「ニカナに出てきた陸の穴からは最低限50万匹ぐらい沸きます」
「50万!?」
「普段はティラノが率いている『一番手行動隊』を覚えていますか?」
「あいつらの調査力は半端ないことならな」
「確認できたのは3カ所、ニカナ上空 ドリの地下 そしてアトランティア」
「なんの意味がある神殿なのか誰も分かって無かったアレか」
最初に何もない神殿について聞いた時はゲームでいう没イベントの残骸かな~と思ってた。
影ハクアがいた場所で本当になんもない場所。
建物はあるし息もできるので寺とか見る気分で旅行ていどならできる。
※レイニーが破壊したことを教えてもらってない
「さすがに海へ50万もC~A程度の魔物が放たれて自由になったら困るのは……」
「3匹目の時点でやめる―――ってのもアリだったんじゃねぇの?」
「魔王がこの先に出なくなれば、ノアのように魔王と戦うことで命を落とす者はいなくなりますから」
珈琲を飲みながらやったことを後悔していないと告げるレイニー。
俺におかわりを強請ってくるので二杯目を入れてやりに行こうとしたら人とぶつかった。
ガゴリグさんのあとに続いてきたのはまさかの彼女。
「ちょっと!? 僕ちんに状況もう少し詳しく教えてよ!!」
「……ワンズ様」
「チッ」
「舌打ちするような場面なのか?」
「子供に罪はねぇ、だがてめーの親父は死ね」
「いいよあんなオヤツ殺したければ好きにして、そんなことよりママンが泣き出しちゃったの!! おまえママンに何言ったんだ!?」
「私がもうじき消滅します、ですね」
「ママンが悲しむことだけはダメだ、僕ちんに従ってもらうからな」
「……従ったら消えずに済むのならばそれも悪くはないですね」
二人にはレイニーの部屋から出て行ってもらいわずかな灯りを消した。
暗闇の中でも俺は見える。
そんな便利なスキルは持っていないがポチに暗視ゴーグルを頼んだ。
「バッチリ見える、どう?」
「色までは厳しいですが空間の把握は出来ます」
「楽しい?」
「え」
「だって、ラスボスに挑もう! そのために準備じゃ! って時に俺はゲームやっててすげぇ楽しかった。嫌いなヤツをボコボコにする準備なんだから楽しいのかなって」
「……そうですね、#産まれて初めて__・__きちんと#楽しい気持ちになれている気がします」
今まではレイニーをついてこさせるために俺がでていたけど。
最終地点に俺がいたら邪魔なことも分かってる。
でも、ラスボスの討伐は見届けたい。
「一緒に行きたいけど今のままだと役にたたないなー……何か悲しいことでもあれば、俺も今よりは強くなれるんだろうけど」
「最後まで弱いままのカドマツ様で、それでもお連れしますから大丈夫ですよ」
レイニーは友だちと遊んでいる時の、今までで一番自然な笑顔だった。




