原っぱでの特訓
次の日からは、一人であの原っぱに通うようになった。
別に、精霊たちはコーテーの中にいるので、原っぱに行かないと会えないわけではないけれど、コーテーの経験から、『原っぱに行けば精霊に会える』と言う思考が完成していた。
無意識にコーテーが許可を出しているので、精霊たちもコーテーの前に出やすくなっているのが、あの原っぱだった。
幸い、広い原っぱは何もないので、村人が来ることもほとんどなかった。
しかも、森とは離れているので、外敵となるようなモンスターが現れないのだ。
正に特訓場として最適の場所だった。
最初は、火の精霊王サラマンダーとの特訓だったが、コーテーの中の精霊は4人。
日替わりでそれぞれの属性の魔法の練習を習っていった。
1か月もすると、全属性の目ぼしい魔法は覚えてしまって、一通り使えるようになった。
中には忘れてしまうかもしれないほどレアなものもあったので、コーテーはノートに記録していった。
ここら辺は、さすが履歴と言うべきか、几帳面な性格と言うべきか、コーテーの性格を表していた。
2か月目に入ると、コーテーが独自に魔法を組み合わせて使うようになっていった。
コーテーとしては、「ファミレスのドリンクバーでコーラとカルピスを混ぜたらどんな味になるのか」程度の遊び心だったのだが、精霊王たちはかなり驚いていた。
それぞれが、それぞれの道を究めた精霊王たちなので、協力しなければならないような局面に出くわしたことがなかったのだった。
コーテーは、風魔法で進行方向に小さくて長い竜巻を起こし、その中心を空洞にした。
その上で、空洞部分に火魔法を通すことで、直径10mmで100m先まで細い火を通す、まるでレーザービームのような新魔法を作って見せた。
この辺りから、各精霊王たちのコーテーを見る目が変わってきた。
これまでは遊びで人間に色々教えてやろうと言う、ある意味気まぐれだった。
ところが、精霊王でも知らない魔法を次々作り出すコーテーを見て、負けじと協力したり、新しいアイデアを出し合ったりし始めたのだ。
コーテーとしても、火がどんなふうに燃えるのか、風がどんなふうに吹くのか、そんなことはイメージが付きにくかった。
そこで、銃を実体化させ、そこから弾を発射させることで離れたところの物を破壊する実験をしたり、ドライヤーの形状を取り出して、温風を出す実験をしたりして、「コーテーのイメージを魔法でどう実現するか」と言う遊びが四大精霊の中で大流行した。
■1か月枯れない花
「花が枯れました」
その日はメアリーの一言から始まった。
「どうした?花は枯れる物じゃないの?」
「はい、そうなのですが、以前、コーテー様と一緒に植えた花なのですが・・・」
そういえば、庭に花壇を作った。
種を植えて翌日には目が出て、その日の夜には花が咲いていたんだった。
「その花がどうした?」
「せっかく花が咲いたので、何本かを切って、食卓のテーブルに飾っていました」
「(そういわれれば、そうだったような・・・)」
「普通の切り花ならば、長くても1週間くらいで枯れます。ところが、1か月くらい枯れずにきれいなままだったのです。」
「へー」
「それが今日、やっと枯れました」
「そうか、それは残念だったね」
「花壇の花はまだ元気に咲いたままです」
「じゃあ、新しいのを生けようか」
「そうではありません。コーテー様どんな魔法を使ったんですか!?」
そうか、とコーテーはやっと意味を理解した。
恐らく、四大精霊の誰かが何かしたのだろう。
すごく早く育ったし。
長持ちするならいいことだ。
どこか畑でもあるなら、今度は食べられるものを植えてみようかとのんきに考えるコーテーだった。
『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。』クラークの三法則の三番目だったか。
この場合、純粋に科学と一定のかすら疑問だが、コーテーもメアリーもそんなことは知りもしなかった。
■想像力が創造力
しばらくイメージの練習を日々繰り返していると、四大精霊は小さいデフォルメキャラとなって、コーテーの周囲を飛び回るようになってきた。
この世界では知らないことや、困ったことが起きた時に、四大精霊がアドバイスをしてくれるのだ。
コーテーはこの1か月くらい、身の回りの物を進化させていた。
一番不満を持っていたのはトイレだった。
もちろん、水洗などなく溜めて置いて、一定量たまったらどこかに捨てるようになっているのだろうが、そこに不安を感じていた。
明らかに嫌な仕事だ。
それを思うと安心してトイレに行けないでいた。
そこで、魔法を駆使して水洗トイレに進化させた。
どこに流れていくのかなんて分からない。
だけど、ちゃんと流れているので安心だ。
しかも、ウォシュレット。
一度使うともう戻れないのだ。
メアリーには一生懸命説明して、理解してもらい、この屋敷のすべてのトイレを水洗にし、ウォシュレットを導入したのだった。
次に風呂。
基本的にシャワーだったので、1階の部屋を1つ潰して大浴場を作り、お湯が出るようにした。
水を出す魔法と火の魔法を組み合わせることでお湯がでた。
色々頑張った結果、蛇口をひねるとお湯だったり、水だったりが出る状態まで進化した。
最後にキッチン。
コーテーもたまに使って料理を作るので、冷蔵庫、電子レンジ、オーブンと必要なものは準備した。
既にコンロはあったし、作業台は錆ないし、掃除がしやすいステンレスに替えた。
短い期間で色々変わったので、メアリーは最初戸惑っていたが、基本的に楽になるように進化した結果だ。
この世界でも普通に受け入れられ、メアリーは普通に電子レンジを使うようになった。
庭の草は草刈り機で刈るので、手で取っていく必要はなかった。
何かが便利に進化するたびにメアリーは目をキラキラさせて興味津々だったので、コーテーも調子に乗っていろいろ新しくしていったのだった。
■変わる生活スタイル
私メアリーの朝は早い。
日が昇るころには起きて手早く自分の身支度をする。
その後、主人の朝食と着替えの準備をする・・・のだけど、朝食を準備する時間がほとんどかからなくなった。
以前は、かまどに火をおこすところからだったけれど、今はコーテー様が準備されたパンを『トースター』に入れ、つまみを『2』のところまでひねったらパンの仕込みは終わり。
この国のパンと違って四角くて薄いパン。
しかも、ふわっふわ。
ほんのり甘くて格段においしい。
多分、異世界でも身分の高い方の食べ物だと思うけど、わたくしまで同じものをいただいてしまっている。
パンの準備がとんでもなくすぐ終わってしまうので、目玉焼きとソーセージを炒めたものを作る。
普通なら油を十分引かないとフライパンは焦げ付くのだが、コーテー様が準備されたものを使うと不思議だった。
油をひかなくてもたまごがフライパンに焦げ付くことがない。
しかも、一番難しいのは火加減だったけれど、この『コンロ』というものは、つまみをひねる角度を変えるだけで簡単に火の強さが変わり、そして安定していた。
そして、この世界にはない食べ物『ソーセージ』は1回いただいたら虜になった。
豚肉なのは何となくわかったけど、食感がすばらしい。
パリッとはじける感触。
この感覚のためだけにもう一度食べたくなるほど。
そして、調理方法も新しい。
これまでお屋敷では、火を使った料理方法は、焼く、煮る、しかなかった。
油を引いて炒りつける調理方法だった。
ここには高価な油が豊富にある。
しかも、油が透明で透き通っている。
こんな上級な油を触ることが来るとは思わなかった・・・
私のご主人様、コーテー様はとても不思議な方。
庶民の家ではまず見ないフライパンも難なく使える。
服装などから判断するに、異世界では高位の身分の方。
食事もナイフとフォークとスプーンを使われる。
その他、『はし』と言う2本の棒も器用に使って召し上がる。
この世界では、こんな棒を使って食べたりはしないけれど、この立ち居振る舞いを見れば、これがご主人様の世界の食事の道具だと分かる。
相当な鍛錬が必要なのでしょう。
やはり、貴族など高位の身分の方だと思います。
お召し物はご自分でお着替えになる。
食事はわたくし(メイド)も同席させる。
見たこともない魔法具を次々生み出されて、それを自由にわたくしに使わせてくださる。
先日などは、金貨400枚を出された。
わたくしだったら、一生働いてもあんな大金を見ることがなかっただろう・・・
いつもは、1時間かかる朝食の準備が、鼻歌混じりでも10分で終わってしまった・・・
さすがコーテー様の魔法具。
わたくしのご主人様を起こしに行くには、まだ少し早いから、お茶をいただいてから行くことにしましょうか。




