初めての森
今日はメアリーに内緒で森に行くことにしていた。
四大精霊のおかげで魔法は一通り使えるようになった。
ステータスを見ると、レベルも上がったし、経験値も上がってきた。
LV:55
HP:0000 体力
MP:0000 魔力
STR:0000 力
ATK:0000 攻撃力
VIT:0000 生命力
INT:0000 知力
RES:0000 抵抗力
DEX:0000 防御力
AGI:0000 素早さ
LUK:0000 運
EXP:1206848 経験値
魔法属性:-
称号:勇者
レベル55。
これくらいまで行けば、ゾーマくらいは倒せるな。
ちなみに、ゾーマとは、コーテーが最近片手間にやっていたレトロゲームのボスの名前だ。
十分な練習も出来たし、サラマンダーが実戦練習もしようと言うのだ。
HP0の謎は謎のままだが、異世界に来たからにはモンスター討伐をやってみたい。
事前に武器は何がいいかと考えていたが、モンスターとある程度の距離離れて倒すことができるライフルをコーテーは選んだ。
近くに来られた時のことも考えて、剣も欲しかったが、剣はあまり見たことがなく具体的なイメージが持てずにいた。
精霊たちに聞くと「以前見たことがある」という事で、そのイメージを採用した。
剣の名前は神剣「アスカロン」。
あまり聞いたことがないけれど、かっこいい剣だったのでコーテーは満足していた。
森までは走って行った。
以前よりも身体が軽く、早く走れていることはわかっていた。
比較的遠いと聞いていた森は5分も走ったら着いた。
森は木が多く、昼間でも暗いほどだった。
だけど、日があまり射さない分、地面の草はあまり伸びず、歩きやすかった。
ただ、この森、違和感はあった。
奥に進めど進めど、まったくモンスターが出てこない。
モンスターが多くいるから危ないっていう話だったのに・・・
視界の周囲にサラマンダー(火)、グノーム(地)、オンディーヌ(水)、シルフ(風)のミニデフォルメキャラが浮かんでいる。
「モンスターって全然いないんだけど・・・こんなもの?」
それぞれの精霊に聞いてみたが、口々に「知らない」と言う。
モンスターが出てきてくれないと、魔法の練習はできないのだ。
「いっそのこと森ごと焼き払えばいいんじゃない?」
物騒なことをいうのは、サラマンダー。
「コーテーの練習のためなら森くらいどうでもいいと思ったわけじゃないんだからね!」
なんか変なツンデレをこじらせていた。
「私たちがいるから普通の魔物は逃げているみたいね。森中の魔物の位置をみたけど、コーテーを中心に5㎞は1匹もいないわね。」
グノームが調べてくれたようだ。
「あ、でも森の中心に1匹いるでしょう?あれがいいんじゃない?」
オンディーヌもモンスターの感知ができるようだ。
「でも、あいつはまだコーテーには早いんじゃない?あ、コーテーになにかあったら嫌ってわけじゃないからね!」
「大丈夫でしょう。何か起きそうだったら、私が地面に埋めちゃうから。」
「私だって燃やすわよ!」
グノームはどうもダダ甘だ。
いつも甘やかしてくる。
特訓も色々聞かなくても、ドンドン教えてくれたので、すごくはかどった。
ただ、30分やるたびに休憩にするので、それがなければもっと早かったはずだ。
森の中心には、大きな祠のような物があった。
中に入ってもモンスターは1匹もいない。
なにこれ、壊れてんの?
バグ?
祠はダンジョンになっているみたいで、地下に地下に進んでいった。
4階まで降りたところで、グノームが言った。
「ちょっと待ってね、降りるの大変でしょ?今地下まで穴を開けるから。」
そういうと、ダンジョンの床に直径5mほどの垂直穴を開けた。
その先は真っ暗で何も見えない。
次の瞬間、身体がふわりと浮いた。
シルフが無言でサムズアップした。
シルフはクールな感じであまり言葉を発しない。
クールビューティーって感じだ。
身体が浮いたと思ったら、穴を通って、地下に地下に進んでいく。
50階か、60階か・・・かなり降りたところで終点みたいだった。
シルフが気を使ってくれたみたいでゆっくり降りたので、全然怖くなかった。
でも、この調子だとそのモンスターってやつも逃げてしまうのでは・・・
そう考えた瞬間シルフが再びサムズアップで「大丈夫、捕まえてる」と伝えてくれた。
「熱くない?熱かったらお姉ちゃんに言ってね?」
ダダ甘グノームがついに「お姉ちゃん」とか言い出した。
地下に進むほど確かに温度は上がっているようだったが、別に熱いと言うほどでもない。
こんなに甘やかされていたら、きっと将来ダメ人間になってしまう・・・
目の前には大きな扉がある。
扉の高さは20m以上ある。
これは人が開けることができる扉なのだろうか。
考えるが早いか、扉に大きな風穴が開いていた。
扉には、直線的な傷がいくつか付いている。
「問題ない」と短い言葉で告げてきたのはシルフだ。
そういえば、かまいたちなどは風で物を切ったりもできるのだった。
頼む必要もなく、扉を開けてくれたようだ。
扉の奥は、大部屋になっている。
そこには、両腕を広げて動けなくなっている巨大なモンスターがいた。
抗っているのは様子を見て分かったが、見えない何かを振りほどくことはできず、両腕は左右に開かれ、固定されていた。
ちょうど十字架のような形になって固定されている様は、お行儀がいいようにも思えた。
「捕まえたって言った」シルフが一言いった。
確か随分前にシルフが言ったような気がする。
「さあ、構えなさい」
サラマンダーに言われて、我に返った。
そして、ライフルをモンスターに向けた。
「あいつの弱点はねぇ、頭と心臓を打ち抜く必要があるから注意してね」
耳元でグノームが教えてくれる。
ライフルは頭を正確に狙った。
距離は約20m、これくらいならばリンゴの大きさでも打ち抜けるようになっていたので、全く問題ない。
『ダン!ダン!』
ライフルでモンスターの頭と心臓を打ち抜いた。
倒した後で気付いたが、コーテーはこのモンスターを見たことがあった。
確かベルゼブブとかって言って、超激レア、星5だったような・・・
モンスターを倒したところで、ウインドウが出た。
『ベルゼブブの豊饒の力をゲットしますか?(Y/N)』
「豊穣の力?」と思ったが、もらえるものはもらっておこうと「Y」を選んだ。
パーッと明るくなったと思ったら、すぐに収まった。
「おめでとう!初めてのモンスター討伐」
グノームが誉めてくれた。
「私が助けてあげたからだからね!感謝しなさいよね」
サラマンダーは本当にツンデレなのだろうか。
「グッジョブ」
シルフはいつも言葉が少ない。
「さー、いただくものいただいた訳だし、さっさとこんなところから帰りましょう!」
オンディーヌはもう帰る気満々だ。
初めてのモンスター討伐と言っても、ボスっぽいやつ1匹しかいなかったし、そこまでの道のりは彼女たちに準備してもらい、快適に来てしまったので、「討伐した」などと恥ずかしくて言うことはできない。
言うならば「討伐させてもらった」と言うところだろう。
「そういえば、そいつの首は王都のギルドで賞金がかかっていたはずだわ!持って帰って換金しましょう!」
オンディーヌってどこか打算的だ。
人間的で好感が持てると言えば持てるのだが・・・(汗)
「あ、ちょっと待って、コーテー腕を見て」
グノームに言われて気付いたが、跳ねた石でもかすったのか、少し血が出ていた。
「あんたそれ大変じゃない!」
まあ、痛くはないので、それほど大変ではないのだが。
「『ヒール』って唱えてみて。」
「え?あ、うん。」
ヒールと言えば、治癒魔法だな。
それぞれの特訓の中ではなかったけど、これから先の特訓で出てくるのかな?
「ヒール」
となると、優しい光と共に腕にあったひっかき傷がなくなった。
「これ便利だな!」
見上げると、知らないミニデフォルメキャラがいた。
「ボクはルミニス。ちょっとだけ力を貸してあげるよ」
また新しいやつキター!
たしか、ルミニスって超激レア、星6の光の精霊王だったはずだ。
「じゃあ、帰る」
色々聞きたいことはあったが、シルフが言ったかと思ったら、屋敷の前にいた。
「こ、これは!?」
驚いていると、シルフが教えてくれた。
「一度行ったことがあるところには瞬時に行ける」
ワープみたいなものか。
そんなことができるのならば便利だ。
「あら?コーテー様、お帰りなさいませ」
屋敷の入り口でメアリーにあった。
庭の手入れをしてくれているようだった。
メアリーはすぐに駆け寄ってきた。
まるでわんこだな。
「今日はいつもより遅かったですね。また原っぱですか?」
そういえば、メアリーは全身の傷や痣を気にしていた。
さっきの回復魔法で何とかならないだろうか。
「ヒール」
そう唱えると、ダンジョンの時とは違って、強い光がメアリーを覆った。
ほんの数秒後には収まったが、メアリーはぼーぜんとしている。
「ご、ごめん、驚かせた」
メアリーの長い前髪を少しかき分けて頬を見た。
すぐにメアリーが嫌がって顔をそむけたので、手鏡を出して自分の顔を見せてあげた。
「え!?これ・・・わたくし!?」
メアリーの顔の傷や痣が完全になくなっていた。
ぺたん、とメアリーがその場で座り込んだ。




