初めての魔法
翌日はメアリーに同行してもらってもう一度村を散歩した。
コーテーの目的は村の散歩と言うよりは、昨日急に目覚めたスキルの確認だった。
何かについて知りたいと考えると、それについての説明がウインドウで出るのだ。
その正体が何なのか確認したいと考えたのだった。
昨日は屋敷中の色々なものを見て、それについての情報を得た。
思えば必ずウインドウが出るので、再現率100%だった。
道端の草にも意識をすればウインドウが出る。
割と便利な能力だと考えていた。
村の中でも割と開けた場所に着いた。
大き目の木は何本か生えているが、ほぼ見渡す限り草むらだ。
「なあ、メアリー」
「はい」
「もう一度、ファイヤーを見せてくれないか」
「はい、構いませんが」
メアリーが「ファイヤー」と唱えると指先に小さな炎が出現した。
コーテーはしっかり見て、その現象について疑問を抱かなくなっていた。
この世界には、魔法があり、誰でも(属性さえ合えば)魔法が使えるのだと理解した。
今度は、コーテーが右手を肩の高さまで上げて唱えた。
「ファイヤー」
次の瞬間、10m先まで炎で覆われるほどの大きな炎が出た。
「わわ!!」
メアリーがびっくりして、座り込んだ。
それに気づいたコーテーが意識を離した瞬間、炎は消えた。
「ど、どういう事ですか!?コーテー様!」
「うーん、なんか出た」
「なんかで出るような物じゃありません!ギガファイヤー・・・いや、テラファイヤーかもしれませんよ!」
何か知らないが、思ったより威力が高い物が出たと言っているのは、コーテーにも理解できた。
「頭の中で声が聞こえたんだ」
「声ですか?」
「火の魔法を使いたいならこうだ、と」
「すごいですね、火の精霊の声でも聞こえたのでしょうか」
「精霊?」
「はい、魔法は、精霊から力を借りて発動します」
「そうなのか」
「はい、わたくしも詳しくはありませんが、目に見えない精霊が魔法発動者に力を貸してくれて魔法が実現します。その代わり、精霊が魔法発動者の魔力を使うので、魔力がなくなると回復するまで使えないのです。」
「なるほど、そういう仕組みなのか」
『馬鹿を言ってもらっては困るわ』
コーテーは、さっきの頭の中に聞こえた声が、さらにはっきり聞こえたと思った瞬間、周囲の景色が全く違う空間に来ていた。
目の前には全身赤い衣装の半裸の女の子が空中に浮いていた。
コーテーはこの子を見たことがあった。
結構やり込んだRPGのキャラクターで、火の精霊「サラマンダー」
女の子なのは、RPG的に萌えキャラでないとダウンロード数が伸びないからであろうが、コーテーにしてみたら、サラマンダーと言えばこの子なのだ。
「サラマンダー!」
「はい、そうよ、サラマンダーよ」
「超激レアの星6!」
「そんなの知らないわよ!」
「ここは!?そしてなぜ」
「はい、はい、そんなに一度に聞かれても」
サラマンダーは真っ赤な色の髪をポニーテールにしていた。
その尻尾を右手でふいっと書き上げると、『ふんっ』と聞こえてきそうな、ツンデレポーズをとった。
「サラマンダーはツンデレ属性だったのか!?」
「ツンデレとか言うんじゃないわよ!精霊王に向かって!」
「精霊王ってなんだよ」
「精霊王は、聞いたままよ。精霊の頂点!それが私!」
「マジか!なんで俺はお前が見える?」
「そりゃあ、あんたの中にいるからに決まってるでしょ?」
「俺の中に!?そりゃまたなんで?」
「そんなこと知らないわよ!グノームもオンディーヌもシルフもいるんだもん。私も当然いるわよ」
グノーム、オンディーヌ、シルフもそれぞれRPGのキャラクターだ。
それぞれ、超激レアの星6キャラだ。
「俺は魔法属性がなかったんだけど、お前が手を貸してくれたから『ファイヤー』ができたのか!ありがとう!」
コーテーは感動のあまり、そのサラマンダーの手を握って感謝の気持ちを伝えた。
サラマンダーは、慌ててその手を振り払っていった。
「ふん!もう少しいさせてくれるなら、力を貸してあげなくもないわよ」
「すごい!見事なツンデレ!」
「ツンデレって言うんじゃないわよ!」
「だいたいね、『属性』なんて、精霊が力を貸すかどうかってことでしょ?精霊王の私がいるんだから力を貸せるような力のある精霊はいないわよ!」
「なるほど。だから・・・」
「じゃあ、俺って火属性の魔法は使わせてもらえるってこと?」
「ふん!どうしてもって言うならね!」
「まじか!どうしても!どうしても!魔法に憧れがあったんだよ!サラマンダーがいてくれてよかったよ!」
「ふ、ふーん。私がいてよかったんだ・・・」
「ああ!どんなことできるの!?どんなこと!?」
「じゃ、じゃあ、ちょっと練習していく?」
「ぜひ!ぜひ!感謝する!」
周囲は真っ白で地平性すら見えない何もない空間で、コーテーはサラマンダーから魔法の手ほどきを受けた。
そのほとんどが、RPGの中であったものばかりだったので、コーテーにとっては『復習』みたいなもので、次々教わる魔法を実現させるのだった。
30か、50か、大量の魔法を習って、コーテーも疲れた。
「じゃあ、今日の所はこの辺で・・・」
切り上げようとしたらサラマンダーは物足りないみたいだった。
「また明日も来なさいよね」
「ああ、そうさせてもらうよ」
どっちに帰ったらいいのかと、きょろきょろしていると、サラマンダーの他に3人の女の子がいた。
「今度は私にも会いに来てくださいませ。」
上品そうに言ってきたのは、緑色の清楚な服を着ている精霊。
たしか、地の精霊グノームだったはず。
超激レアで星6。
「待ってるわよ!」
水色のロングヘアは水の精霊オンディーヌだ。
こちらも、超激レア星6。
「私も遊ぶ」
言葉がいつも少ないのは、緑の髪で風の精霊シルフ。
超激レア星6。
「なにこの豪華メンバー!」とコーテーはわくわくした。
これだけのメンバーをガチャで集めようとしたら、諭吉さんが何人いても足りないのだ。
無料ガチャだけでは絶対に出ない超激レアで、四大精霊がコンプしているのだ。
「これはしばらく退屈しないぞ」とワクワクしていると、メアリーと来た原っぱにいた。
「大丈夫ですか?コーテー様」
「ああ、大丈夫だよ、メアリー。俺ってぼーっとしてた?」
「はい、少しの間ですが、話しかけても反応がなくて心配しました」
「そうか、ごめんごめん」
コーテーの体感では、7~8時間は魔法の練習をしていたのだ。
精霊との会話は時間的にほとんどゼロみたいな時間で会話できるみたいで面白いと思った。
折角練習したので、サラマンダーと練習した魔法が現実世界でも使えるか、試したくなり、人差し指を斜め45度上に向けて指差し唱えてみた。
「ファイヤーボール」
詠唱と同時に直径20cmくらいの火の玉が連続で10個出た。
これはコーテーがイメージしていた通りの物だった。
「え!?ええ!?これってどういうことですか!?実は火属性魔法が使えたんですか!?」
横にいたメアリーがめちゃくちゃ驚いていたので、どう説明するか悩むコーテーだった。




