城からの視察と共犯者
メアリーと一緒に朝食を食べていると、メアリーから急な発表があった。
「今日は、城から使いの者がきます」
「え?そうなの?へー」
「表向きは、物資の補充です」
「ああ、生活物資か」
「はい、でも・・・」
「『表向きは』ってことは、裏があるんだ」
「はい、その通りです。だから、昨日の金貨の事などは、使いの者には言われないことをおすすめします」
「まあ、そうだよね。突然『金貨をどんどん出します』って言ったら頭がおかしくなったと思われるよね」
「それに、陛下に伝わってしまったら、コーテー様が幽閉されてしまう可能性もあります」
「なるほど、文字通り金を生む鳥か・・・」
「ありがと、心配してくれて。でもそれ言っちゃってよかったの?」
「はい・・わたくしは・・・将来・・・の妻に・・・」
「え?なんて?ごめん、聞こえなかった」
「いえ、なんでもありません」
メアリーは照れ隠しで激しく挙動不審だった。
その後、昼頃には1台の荷馬車が来た。
従者が3人乗って来たようだ。
2人は男、いかにも冒険者と言う姿。
数日の旅だから武装も必要なのだろう。
1人は女、メアリーと同じようにメイドの姿をしている。
本来はこのメイド1人が来ることになっていて、2人は警護ということなのだろう。
ここでコーテーは気付いた「(ちょっと待て、そうなると俺の時は、メアリーと2人だったぞ。道中何かあっても別にいいということだったか。)」
段々自分が置かれた環境を理解してきているようだった。
今朝メアリーが言っていた『情報取り』のためにメイドは来たのだろう。
ただ、この情報取りメイドは、メアリーと仲が良いようだった。
荷馬車から降りるとメアリーと抱き合っていた。
本当に仲がいいんだな、とコーテーは思った。
「メアリー、積もる話もあるだろう。どこかの部屋でゆっくり話してきていいよ。」
「いいんですか?ありがとうございます。」
2人のメイドは屋敷に入って行った。
コーテーは、荷馬車に近づいた。
2人の冒険者は屋敷に荷物を次々積み込んでくれている。
荷物のほとんどは食料みたいだった。
この村でも少しは物が手に入るだろう。
しかし、カネではなく物を送ってくるのには何か理由があるのかもしれない。
コーテーは、密かに後でメアリーに聞いてみることにしようと考えた。
荷馬車の中を見ていると、おろしていない荷物があった。
勝手に開けてみると中身は瓶と薬草みたいだった。
もしかしたら、ポーションと毒消しだったりするのかもしれない。
よく見ていると、空中にウインドウが現れた。
『低級ポーション』
『低級毒消し』
空間にウインドウが浮かぶ現象は、今までなかった経験だった。
一応、ステータスを確認したが、ほとんど変化がない。
「(スキルなのか?)」と疑問は増えるばかりだった。
結局、メイドは2時間ほどメアリーと話した後、冒険者と共に戻って行った。
コーテーは、てっきりこの3人は一晩泊まっていくのだと思っていたので意外だった。
冒険者と言うのは忙しいものなのだなと、世の中の世知辛さも感じたのだった。
城から来たメイドに声をかけられてお茶を出してもらった。
自分だけ座って、メアリーともう一人のメイドは立っている。
久々に変な感じを味わっていた。
「恐れながら、勇者様にお尋ねしたいことがあります」
城からのメイドは、コーテーのキャラを全然把握していない。
客人に接するように、ちゃんとした言葉遣い、対応をしているようだった。
ただ、言葉遣いなどは正しいのだが、どうも自分に対する当たりがきついというか、言葉の端々にとげがあるように感じていたので、この「質問」には少し緊張していた。
「メアリーにネックレスを贈ったという事ですが、間違いないでしょうか?」
メイドはなんか少し怒った口調だった。
コーテーは、冷静に接することにした。
「その通りだよ。間違いないよ」
「では、この国では、ネックレスを未婚の男性から未婚の女性に贈る場合、結婚の約束の意味があるという事をご存知の上で贈ったという事でしょうか!?」
「もちろんだよ!そりゃあ、当然・・・ん?結婚の約束!?」
どういうことなのか、一瞬訳が分からなくなるコーテー。
思った反応と違うことで涙目になるメアリー。
コーテーはメアリーのネックレスを見た。
『名座礼肯定がメアリーに贈った純金の婚約ネックレス』
コーテーは頭の回転のいい男だった。
この瞬間に、これまでのメアリーの反応や言動で違和感があったことの意味が一気に分かった。
そして、ここで「知らなかった」という事で、どれだけメアリーを傷つけて、恥をかかせることになるかまでを悟った。
「こうして、メアリーの同僚のきみから確認されることを想定していなかったから、あわてたけど、そのネックレスは間違いなく婚約の意味でメアリーに渡したネックレスで間違いないよ」
コーテーは出来るだけ冷静に言った。
急に目が生き生きとして、「おめでとー!」と叫びながらメアリーに抱き着くメイド。
改めて涙目のメアリー。
なんだか、今日も宴会をしないといけないような雰囲気だった。
それでもメイドは城に帰らないといけないらしく、泊まらずに冒険者たちと帰って行った。
メイドは別れ際に、メアリーに「おめでとう」とか「幸せに」とか涙ながらに言っていた。
本来、いい子でメアリーの事を心から思っているのだろうな、とコーテーは理解した。
その夜、食事の時、メアリーは全然食事に手を付けていなかった。
しかも、あの金のネックレスはテーブルの上に置かれていた。
メアリーが元気がないようだったのでコーテーは気にしていた。
「どうしたの?元気ないね?」
「いえ・・・」
「遠慮しないで言ってみて。これから2人で暮らすんだから、言いたいことは言ってくれた方が助かる」
「では・・・本当は、このネックレス・・・結婚の意味はなかったんじゃないでしょうか・・・」
城から来たメイドとのやり取りでメアリーは気付いてしまったらしい。
「わたくしは、小さいころの記憶がありません。しかも、体中に傷や痣があってとてもきれいとは言えません。顔にもあってそれで・・・髪を・・・そんなわたくしの事を男性が結婚したいと思うなんてありえません」
メアリーは座ったまま下を向いてしまい、涙を流していた。
「ごめん。確かに最初は間違いだった・・・」
コーテーが正直に話すと、メアリーはいよいよ泣き出してしまった。
しかし、コーテーはつづけた。
「確かに、俺がメアリーに出会ってからまだそんなに時間がたっていない。しかも、俺はこの世界の人間じゃない。そんな俺とこんな田舎で一緒に暮らしてもいいって言ってくれたメアリーだから、俺はきみのためにできることは何でもしたいと思う。」
メアリーは涙もそのままに顔を少し上げた。
「これから知り合って行ってもいいじゃないかな?改めて・・・」
そういいながら、コーテーはテーブルの上に置かれたネックレスを手にして、メアリーの首に付けた。
「俺と結婚を前提に付き合ってほしいんだ」
「でも・・・ぐずっ・・・わらくし、こんなれすよ・・・」
泣きながらなので、ろれつが怪しいが、言っていることはわかる。
「メアリーが優しい子だってことは知り合ってすぐでも十分わかるよ。これから時間はたっぷりあるから、もっと仲良くなっていこう?」
またメアリーが泣き始めてしまったので、コーテーは立ったまま抱きしめた。
メアリーは座ったままなので、ちょうどコーテーのお腹の辺りでメアリーが抱きしめられている。
メアリーはしばらく泣き止んでくれなかったが、コーテーとの仲は1歩か2歩か、進んだようだった。
その後、メアリーは嬉しそうに食事をしていた。




