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一緒に料理をしよう

コーテーとメアリーの2人はキッチンに来ている。


「ささ、早く火を起こしてみて!」

「わたくしの場合、種火だけですよ!?種火だけですからね!?過度な期待はしないで下さいね!」


メアリーはかまどに小さな木片を入れ、小さな声で唱えた「ファイヤー」

次の瞬間、木片に火がついた。

メアリーは、その後筒状の道具で軟らかく吹いて、その火を育て、火を起こした。


「どうですか?」


少しメアリーがドヤってる。

忖度的に空気を読んだコーテーが「おー!」、『パチパチパチ』と手をたたきながら驚いて見せた。

でも、心の中では「なんか違う」と思っていた。


「ファイヤー」


コーテーが唱えても何も起こらない。


「やっぱりダメだ。コツみたいなのはないの?」

「コツですか・・・唱えるときは、『火をだすぞー』って思いながら唱えます。」


「(面白いな、この子)」


何度やっても、コーテーが火を出すことはできなかった。

とりあえず、レベルと経験値は上がってるみたいだからいいか。


「ねえ、メアリー」

「はい、何でしょう、コーテー様」


「これからここで暮らしていくことになるわけじゃない?」

「はい、そうですね」


「メアリーは俺の身の回りのことをするのが仕事じゃない」

「はい、そうです」


「円滑に仕事したいよね?」

「もちろんです!」


「よし!じゃあ、今日買ってきた食材で宴会しよう!2人だけど!」

「はい!いいですね!お料理作ります!」


「それはありがたい!キッチンは広いから、俺も地元の料理を作るよ。一緒に食べよう!」

「ご主人様にお料理を作っていただいてしまっていいのでしょうか・・・」


「俺がいいって言ってるんだからいいんじゃない?主人のニーズに応えるのも出来るメイドの仕事じゃない!?」

「そ、そうですね!じゃあ、甘えさせていただきます!」


「ちなみに、お酒は・・・」

「はい、色々ご準備させていただいてます。」


「メアリーは・・・この国の成人は何歳?」

「成人は13歳です。」


「え!?メアリー大人!?」

「もちろんです!お酒も飲めますし、結婚だってできるんです!」


「ええ!?何歳なの!?」

「15歳です」


エヘンと聞こえてきそうなほど、ドヤり顔だ。

逆に、コーテーは15歳の女の子とお酒を酌み交わしていいものかと、罪悪感とか背徳感とか色んな道徳的なものと密かに戦いながら、誰も見てないし、異世界だしいいかと割り切ったのだった。


この1週間、この屋敷でコーテーはメアリーの作る料理を食べていた。

城での料理はいよいよ味が薄かった。

メアリーとは料理人が違うのだろう。

メアリーの料理は、強めの味付けなのだが、それでもうっっすい!

最初はバツゲームかと思ったほどだった。


そこで、いきなりカレーとか作ったら味が濃すぎて、メアリーには受け入れてもらえなさそうなので、肉じゃがとか、ポトフとか、煮込み系で薄味で作ることにした。

特に、ポトフだったら、野菜を切って入れて、ブイヨンを入れて煮込めば完成なので、簡単だし、味が濃すぎるということはないだろうと考えたのだった。


そして、そこまで考えた時に、ふと気づいた。


「(この世界にブイヨンはあるのか!?)」


「メアリー・・・」とキッチンで声をかけようとした時、今作業している作業台の上には、ジャガイモ、ニンジン、ブロッコリー、たまねぎ、ソーセージ、ブイヨン、とコーテーがこれから必要だと思う材料が準備されていた。


「(さすが、メアリー、できるメイドだ)」


「サンキュウ!」とメアリーにお礼を言ってから作業を始める。

「まな板は・・・ここか。包丁は・・・こっちか。」と欲しいものは、すぐ手の届くところにある。

メアリー優秀だなぁと思いつつコーテーは自分の作業に没頭していった。


煮込むのに時間がかかるのも何なので、圧力鍋で煮込んだので、7分加熱の10分弱火で完成した。


「あ、すいません、自分の作業に没頭していました。コーテー様、何か足りないものないですか?」


ふいにメアリーに質問された。

何か炒め料理を作っていたみたいだが、1品出来て区切りがいいみたいだった。


「いや、色々準備してもらったので、追加で必要なものなんてなかったよ」

「え?わたくし何も準備していませんが・・・」


「え?」

「え?」


2人が顔を見合わせた。


「えーーー!?」


大声をあげて驚いたのはメアリーだった。


「そ、それなんですか!?」


メアリーは圧力鍋を指している。


「普通に圧力鍋だけど?」

「鍋もですけど、そ、そこ、そこ一帯!」


コーテーが、改めて周囲を見渡すが、何も違和感はない。

キッチンに据え付けられたコンロ、五徳に載った圧力鍋、作業台の上のまな板と残った材料、包丁、レシピを調べたスマホ・・・何も変なものはない。


「ん!?」


思ったところで気付いた。

「ここは異世界だった!」と。


この1週間、メアリーが料理をしているのを見ていたが、薪を使っていた。

さっき、ファイヤーの実演も薪を使ってかまどのような設備を使っていた。


ところが、コーテーの目の前にあるのは、普通のガスコンロ。

ブイヨンには、日本語で説明が書かれている。

レシピを調べたのは、いつも使っているスマホだ!


「あれ?」


鈍い2人もようやくここで変な事に気が付いた。

この世に存在しない道具が目の前にゴロゴロと存在しているのだ。


「えー、スープ皿2枚」


コーテーがつぶやくと、その手にはスープ皿が2枚持たれていた。


「ま、魔法!?魔法ですか!?コーテー様!!」

「いやー、魔法は使えないんだけどなぁ・・・」


ちょっと抜けているコーテーは、驚きもある半面、完成した料理を早く盛り付けたくなっていた。

圧力鍋もいい具合に温度が下がり、安全装置がOFFになっていたので、ふたを開けて、オタマで皿に盛って行った。


「変だなぁ、おかしいなぁ」


おかわりすることも考えて、3人分くらいを作ったので、2人分の皿には十分盛っても、まだ圧力鍋には残りがある。


「え!?これ煮込み料理ですか!?もう!?こんなに短い時間で!?」


またメアリーが驚いている。

自分が作ったもので驚いてくれるのは嬉しいもので、スプーンを取り出し、メアリーに渡す。


「え!?スプーン!?この屋敷にはスプーンはなかったのに!」


スプーンは、地球では、ナイフやフォークと比べ、宗教的な意味も持ち、庶民に広まるのはかなり近代になってからだ。

この異世界が中世くらいの文化レベルならばスプーンがそれほどメジャーでなくても不思議ではない。

しかし、そんなことは現代っ子のコーテーが知っているはずもない。


「味見してみて」と言って、スプーンを自然に使って、味見しているコーテーにメアリーは驚愕していた。


おそるおそる、コーテーの真似をして、スプーンでポトフのスープをすくい、一口飲む。


『ズキューン』か『ビビビ』かは分からないが、メアリーはのけ反るほどの感動を覚えた。


「こ、これ、ナンデスカ?」


ちょっと片言になったので、コーテーは恐る恐る答えた。


「ポトフだけど・・・おいしくなかった?」


「ぜんっっ、ぜんっぎゃくです!こんなおいしいもの初めて食べました!!」


メアリーは、味見味見と、もうスープの半分以上を飲んでしまっていた。

気に入ってくれたみたいでコーテーとしては嬉しかった。


それよりも、問題があることに気が付いた。

この世界にないはずのものがある。


オーパーツと言っていいのか、よくわからないが、ガスコンロがあるのだ。

どこからつっこめばいいのかもはや分からないが、ガスコンロ、圧力鍋、スマホ・・・


メアリーが作ってくれた炒め物料理もあったので、ふと気づいたら持っていたフランスパンを斜めにカットして、トースターで焼いて、スープと合わせて夕飯兼宴会のつまみにすることにした。


トースター!

ここで新たにトースターが出現していた。


コーテーは、お腹が空いていたので、驚くのは食べながら出良いかと思っていた。

何事にも柔軟に受け入れる性格であった。


とりあえず、テーブルについた。

メアリーはいつも一緒の食卓にはつかなかった。

メイドとは、主人の食事の世話をして、その後キッチンでそそくさと栄養補給的に食事をするものだと教えられてきたからだ。


でもそれでは2人しかいないのに宴会にはならないよ、とコーテーはテーブルの向かいに座ることを強めに提案した。

1度に食事が終わった方が、片付けも1度で終わるとか、話しながら食事をした方が楽しいとか、情報交換には会話が必要だとか、色々言ってみたが、どれもこの世界のマナーからは外れているらしく、一緒のテーブルにつくのに時間がかかった。


結局は、『コーテーは異世界人』と言うのをネタにメアリーが折れた。

『相手の望むサービスを提供するのも一流のメイド』とかメイドがどういうものか全く知らないコーテーの言葉に乗っかる形だった。


ワイン的なお酒を準備してもらい、ポトフ(コーテー作)、野菜の炒め物(メアリー作)、フランスパン(バケット)、が食卓に並んでいる。


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