村を散歩しよう
翌日は、村を見て回ることにした。
この屋敷は田舎にあると言っても、1軒だけポツンとあるようなことはない。
小さな村にある別荘だったのだろう。
これから新しい生活をする上で、村の事も知っておかないといけないだろうと、村を見て回ることにしたのだ。
そうなると、村どころか異世界の事を全くしないコーテーには不安しかない。
ある程度は村の事も知っているメアリーが案内役として村を回ることになったのだ。
あまり華美な服装をしていても浮いてしまう。
ボロでなく、華美過ぎない服を2人とも着て出かけることになった。
朝、屋敷を出てメアリーが気付いた。
昨日作った花壇にすでに芽が出ているのである。
しかも、芽は1つや2つではなく、植えた種ほぼ全部出ているのだ。
コーテーは、『異世界ってすごいな』と思ってなんだか受け入れたのだが、メアリーはあまりに発芽までの期間が短く驚いていた。
「こ、こんなに早いって・・・」
「条件とかよかったのかな?」
2人はそれぞれ腑に落ちないところはあったが、何となく受けいれてしまって、それ以上気にせず出かけてしまうのだった。
コーテーは麻素材の服にマントをまとっていた。
この世界の旅人の服装で、『今着ました感』を醸し出すための服だ。
実際に引越してきたのは1週間以上前なので、なぜそうしたかは謎だが、メアリーのコーディネートなので、特にそれ以上口を出さなかった。
一方、メアリーは、いつものメイド服ではなく、ロングスカートに長袖のシャツと言う色気はないけれど、華美にならず、少し『旅人感』を出すファッションをしていた。
『旅人感』はメアリーのこだわりだ。
「その・・・私服のメアリーも新鮮でいいね」
「!!!」
服を誉められた(?)ことで、メアリーの全身に電撃が走り、激しくのげぞった(ように感じた)
「そ、そ、そうですか?ありっ、あり、ありがとうございます」
メアリーは、あまり誉められ慣れていなかったせいか、思いのほかチョロインだった。
既に顔は真っ赤で、コーテーの事は直視できなくなっていた。
これまではメイド服を着ていたので、『仕事モード』だったのだが、服を着替えることで自分の感情が出やすくなっていたのかもしれない。
村と言っても100戸くらいしかないこじんまりとした集落のようだった。
市場もなければ、繁華街もない。
農業中心と言う感じだった。
店はいくつかあったので、多分そこが村で一番栄えているところと言った感じだった。
日本の田舎の村と比較しても、お世辞にもきれいと言える感じではなかった。
飲み水は川を利用しているみたいだったし、トイレは当然水洗ではない。
食べ物も店に並ぶものは、棚にドンと肉が置かれていたりして、冷蔵庫はそもそも存在しない。
その割に価格は高い。
肉はあまり手に入らないらしい。
野菜は村の中で作られているみたいで、大きくて安い。
ほとんどが農業に従事しているだろうから、需要があまりないのだろう。
コーテーは失敗したなと考えていた。
華美にならないような服装を選んでもらったのに、村民と比べると明らかにいい服だった。
メアリーの『旅人風』の服のチョイスのおかげで浮いていても『よそ者』を装うことができたので、そこは良かったと考えていた。
実は、コーテーは、メアリーからこの世界には魔法があるとか、HPがと言う話を聞いた時点で、冒険者ギルドに登録してみたいと思っていた。
ところが、この田舎の村ではそんなものが存在しないのは聞くまでもなかったのだ。
すごい適性で水晶パーンを体験したかったが、聞くまでもなく夢破れしものとなった。
コーテーとメアリーは、商店の店主と話すきっかけのために、少しのやさいと肉を買って、この村の事を聞いたりしてみたが、あまりにも見たままで新しい情報はなかった。
屋敷に帰るとき荷物をどちらが持つかと言うひと悶着があった。
メアリーはメイドとして主人に荷物を持たせるなんて絶対にできないと全ての荷物を持つことを主張した。
コーテーは人目もあるのだから、男女がいて女性に、しかも年齢が半分くらいの女性に荷物を全部持たせているのは世間の目が痛いと主張した。
いろいろ議論した結果、半分づつ荷物を持つことでとりあえずの解決を見た。
何も事件が起きず、日常系アニメのようにほのぼのした時間を過ごしたコーテーとメアリーだったが、事件はまさかの帰宅時に起きた。
屋敷について門を入ると、庭の花壇に華が咲いているのだ。
昨日種を植えて、朝は芽が出ていたあの花だった。
どれを植えていいのかわからず、結局、ばら、ゆり、なでしこ、ラベンダー、イタリアンパセリ、クレソン、カモミール、ローズマリー、のすべてを少しづつ植えていたら、全部開花している。
メアリーはあまりに驚いて、持っていた荷物をその場に全部落としたほどだった。
そこで初めて、コーテーも『これは通常の事ではない』と理解したようだった。
彼は、よく言えば寛大なので大体の事は許容し、受け入れることができる。
ただ、朝のうちに芽だったものが、ほんの数時間後に華が咲いていたら『異世界とはこんなものか』と思うには異常すぎた。
「これって、コーテー様のスキルか何かですか!?」
「スキル!?スキルってなんだ!?」
相変わらず、この2人の会話は『Q&Q』。
中々キャッチボールは成立しないのだった。
「よし、整理しよう。」
「はい」
「昨日植えた種が、今日は咲いているのは、この世界でも珍しいこと?」
「珍しいどころか、そんな話聞いたことがありません!」
「俺のスキルに関係があるのかもってことか。」
「そうです」
「ステータス・オープン!」
氏名:名座礼 肯定
年齢:28
属性:会社員
LV:2
HP:0000 体力
MP:0000 魔力
STR:0000 力
ATK:0000 攻撃力
VIT:0000 生命力
INT:0000 知力
RES:0000 抵抗力
DEX:0000 防御力
AGI:0000 素早さ
LUK:0000 運
EXP:386 経験値
魔法属性:-
称号:勇者
「スキルってないな・・・ん!?LVが上がってる!あと、経験値が増えている!」
「そうなんですか!おめでとうございます!」
「んー、何が原因で上がったのか・・・」
コーテーは、改めてまじまじと見ると、HPからLUKまでは変わっていない。
経験値が『386』増えているのは、多いのか、少ないのか・・・
「あ!」
「どうしました?」
「魔法!メアリー!魔法見せて!!」
急にコーテーは思いついた。
せっかく魔法があるのだ。
見てみたいし、できるなら使ってみたい。
これまで考えていたことは、とりあえずペンディングで、分かったときに掘り下げたらいい。
時間はたくさんあるのだ。
何も急ぐ必要はないと考え直した。




