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みんなで夕食

「これはなんですかー!?」


声を上げたのは王妃だ。


「それは、『みそ汁』と言う異世界のスープです」


味噌汁にはさつまいもが入っていて、甘くなっている。


「これは城で再現することは出来ないのですか!?」

「味噌があれば簡単にできますね」


「今後この村からの税は全て味噌にすることは・・・」

「お母様落ち着いてください」


王妃がことのほかさつまいも料理が気に入ったようだ。

さつまいもチップスは、新食感だったらしい。

かなり根掘り葉掘り聞いていたし。


焼き芋に至っては、焼いただけだけど、すごく気に入ったみたいだった。

皮をチコがむいてあげるあたり、チコも侍女としての仕事があったみたいで得意げだった。


夕食には、さつまいもの味噌汁、きんぴらとさつまいも料理が並んでいた。

甘煮も予定していたけど、畑作業から帰るときに村の人から豚肉をもらったので、「甘辛炒め」に変更した。

さすがに、いもばっかりじゃ・・・ね。

ちなみに、食後のデザートには、スイートポテトを作った。

みんな自分で掘ったというスパイスがプラスされ大好評だった。


「今後、この村からの税は全てさつまいもと味噌にすることは・・・」

「お母様落ち着いてください」


この子にして、この親あり・・・ぜったい王妃も面白い人に違いない。


「それにしても、昨日も思ったのですが、この屋敷は、夜になっても明るいのですね」

「あ、照明です」


「光魔法ですね。でもこんなに明るいとかなり魔力を使うのではないですか?」

「そこはどうなのでしょう?コーテー様」


メアリーがコーテーに話を振った。


「どうなんだろう?」


コーテーの中にも答えはなかった。

そもそも天井にはシャンデリアがあり、明らかにLED照明が光っている。

この世界ではありえないオーパーツだ。


『お兄ちゃんから魔力をもらって光ってるね』

「あ、俺が電池みたいです」


「『電池』ってなにかしら?」

「あー、そうか。魔力を溜めておける魔石みたいなものです」


「そんな魔石があるのですね」


「王妃様、それだけじゃないんです!使っていない部屋は小さな桶が勝手に掃除していました」

「まあ!桶が!」

「『ロボット掃除機』です。お母様」


「今日はまだ分かったのですが、昨日のメアリーの料理はもう魔法です。私は侍女として自信を失いました」

「え?どういうこと?」


確かにキッチンには『魔道具』をたくさん置いているけど・・・


「まず、メアリーが『お湯魔法』を使うんです!」

「まあ、『お湯魔法』とはなに!?」


「多分、水魔法の発展形で、水汲みをしなくても水が出てきて、その水が既にお湯なのです」

「まあ、すごい!そうなの?メアリー?」

「瞬間湯沸かし器ですね、コーテー様が作ってくださった魔道具です」


まあ、誰か精霊が作ってくれたんだろうし、多分、魔道具で合ってるな。


「お湯を沸騰させるのも一瞬でした」

「あ、それはサラ様が・・・」


「サラ様?」

「サラマンダー様のお力で・・・」


ここで、あんまりサラの話をしてしまうと、サラが出てきてしまう可能性がある。

自分が神だと思って崇めている存在が食事中に出てきてしまったら、王妃もチコも食事どころではなくなってしまう。

ちょっとお茶を濁した感じで止めたのだろう。

メアリーの気遣いも相当なものだ。


「昨日の複雑な味のソースも一瞬で作っていました」

「まあ!あのソースを一瞬で!?」

「缶詰なので、あらかじめ途中まで出来ているものです」


「それであのように素晴らしい味になるのならばたいしたものですね」

「そうなんです!お皿の準備なんか合わせても30分かからずに全員分の料理を作ってしまったのですから!」

「もー、やめてよチコ」


「は、ちょっと待って!?メアリーってばいつの間にか王妃様の娘さんってことは姫様!?私って不敬罪!?」

「ちょっと、ちょっと、ちょっと!私は普通のメアリーだよ」

「しかも、いま、チコも王妃様も勇者くんも魔王に捕まってるからね」


「え!?こんなおいしいものをたくさん食べて捕らわれの身!?」

「実際、城からさらってきたし」


「ちょっとまって!?私どうなってんの!?なんか、これまでの常識が全部崩れてきて・・・」


チコは面白いなぁと思いつつニマニマしながら、生暖かく見守ることにしたコーテーだった。



「あのー、王妃様・・・」

「どうしました?勇者様」


「僕、お城に戻るのちょっと長めにしたいんですけど・・・」

「やはり食事ですか?」


「そうですね・・・良くも悪くも懐かしくて・・・」

「これだけおいしい食事を毎日されていたのなら、城の料理では物足りなかったでしょう・・・」


「豪勢なので、感謝はしているのですが・・・もっと家庭の味と言うか・・・」

「メアリーの食事で、『おふくろの味』を感じるのやめてもらっていいかな」


「そ、そういう意味じゃないですよ!魔王様」

「「「ははは」」」


「そうですね、チコ!」

「はい!」


「あなた、1週間で出来るだけ多く、料理をメアリーから習いなさい」

「え!?ええ!?は、はい!」


「そして、この料理を城に持ち帰るのです」

「わ、わかりました!」


「魔王様、よろしいでしょうか?」

「メアリーもチコと一緒の時間が増えて楽しいと思うので、構いませんよ」


チコは、どこかこの屋敷に残れるのではと思っていたのだが、王妃から命令が出たのならばしょうがない。

メアリーとの絶対的な差を見せつけられて、絶望していたのだけれど、それを1週間で少しでも埋める決意をした。



「ちょっと待って、私が城に戻らないという選択しないのかしら?メアリーともずっと一緒にいられるし、おいしいご飯も食べられるし・・・」

「それだと国が混乱してしまいます!陛下もお寂しい思いをされます」


チコが慌てて軌道修正を試みた。


「あと、王妃と勇者が両方とも死んだことになって、魔王の脅威は残ったままになりますね」

「ちょっと本気で考えたわ。じゃあ、私は1週間後には城に戻るしかないのね」

「メアリーは、ちょくちょく城に連れて行きますよ。誰にも見つからず、城の部屋に直接瞬間移動できますし」


「魔王のお城は、快適過ぎね・・・人間のお城が色あせて見えてしまうわ」

「この屋敷も、城の物ですけどね」


「あ、それなら既に魔王様の物となっていますよ?ずっと使っていないお屋敷でしたし。こんなに状態がいいとは思いませんでしたが」

「それなら、コーテー様がリニューアルされました」


「『りにゅーある?』」

「見た目はほとんどそのままに、中身は全く違うものに作り替えることです」


「どんなところが違うの?」

「私もよく分かりませんが、『汚れない壁』とか『枯れない花壇のお花』とか『自動で掃除されるお風呂』とか・・・色々です」


「城のどの魔法師でも1つも実現できなさそうだわ・・・ああ、魔王様は人も物もどんどん変えてしまわれるのね・・・」

「そう言われると、悪いことをしているみたいだけど、メアリーは、元々きれいですよ」


「もう、母としても何も言えないわ・・・」



■四大精霊と作戦会議

食事をした後、お茶を飲んだり、お酒を飲んだりしながら、作戦会議をすることになった。


勇者くんもテレビやネットがない分、食事をした後寝るまでの間、時間を持て余し気味だ。

暗くなったら寝るのがこの世界の常識だろうけど、この屋敷は夜になったら照明を点けるのが当たりまえなので、当然勇者くんも遅くまで起きがち。


作戦会議は、時間の使い方としては有効だろう。



またリビングに勢ぞろいした。

今度は勇者もちゃんといる。


「じゃあ、1週間後に城に帰るときの計画を説明しますので、何かあったら教えてください」

「はい」

「はーい」

「わかりました」


司会進行はコーテー。

計画の説明と穴がないかの確認となる。


「まず、勇者くんが荷馬車に乗って、王妃様とチコを連れて城に戻ります」

「王妃様なのに荷馬車ですか?」


チコが早速気になったみたいだ。


「魔王の城から王妃を奪還して逃げてくるわけだから、あんまり整った物に乗ってきていたら余裕がありすぎるからね」

「あ、そうか。私たちさらわれているんでした」


「城の近くまでは、瞬間移動で行くから、お尻が痛くなったりしないから心配しないで」


「えへへ・・・」と先読みされたチコが照れる。


「この時、勇者くんは魔王と戦って帰ってくるんだから、ちょっとくらい汚れていた方がいいね」

「あ、はい!」

「では、私とチコも?」


「女性たちは汚れていたら、何かされたと言う印象を与えてしまうので、きれいなまま帰ってください」

「そうですね、いらぬ誤解を与えてはいけませんね」


「王妃様が帰ってくるとなると、当然騎士団なんかが城周辺を守るでしょう」

「たしかに」


「王妃様とチコが城に入った時点で、魔王が追いかけて城の真ん前に出現します」

「「はい」」


「勇者くんは、そのままUターンして、城の前で魔王と戦います」

「あ、あい」


「魔王は倒されて、ハッピーエンドとなります」

「はい・・・」


「勇者くん、元気ないなぁ」

「そんな簡単にいきますかね?僕と魔王様の戦いってどんな風にしますか?城から離れているとちっこくしか見えないから何やってるか分からないと思うんですけど・・・」


「そうだね。だから、黒い雲と共に現れて、いかにも魔王って感じで追いかけるよ」

「派手ですね。魔法ですか?」


「そうだね。神剣「アスカロン」ならばその雲を真っ二つに切ることができるから離れたところからは魔王を倒したように見えるはずだ」

「魔王様は、その瞬間に瞬間移動で屋敷にでも戻ってくるという事ですね」


「そんな感じだね」

「でも、ここで全ての工程を確認してしまったら、その通りにはならないフラグになりませんか?」


「変なことを言わないでくれよ」

「現実はそんなに定石通りにはならないよ」


「その筋書きで行くと、私とチコは無傷で勇者様に救っていただいたことになりますね」

「そうですね。しかも、みんなの目の前で魔王が倒されるわけですから勇者くんの仕事も終わりますね」


「仕事が終わるという事は、急激に勇者くんが要らなくなってしまう」

「なるほど、手を打っておかなければ消される可能性がありますね」


さすが王妃、暗殺のことを先読みしたみたいだ。


「その後の勇者の扱いは決まっているんですか?」

「いえ、魔王討伐しか視野に入っていませんでした」


「元の世界に戻れるという事は・・・」

「分かりません。ただ、召喚の儀式は『呼びよせ』の儀式、召喚するのならば、勇者様、魔王様の世界から召喚の儀を行う必要があります」


「元の世界には魔法がないし、そんなノウハウはないから、事実上無理かな・・・」

「そうなると、魔王討伐の褒美を取らせてお役目終了という事になると思います。普通は」


「(あ、勇者くんがあからさまにテンション下がってる。先に予想だけでも知らせておいてよかったな。ダメージは分散されたかもしれない)」


「国の誰よりも強く、国に縛られない存在を王が許しますかね?」

「どうでしょう・・・暗殺はないと思いますが・・・」

「やっぱ僕、殺されるかもしれないんですか!?魔王様、何とかなりませんか?」


「隣国にも名声が届いていたら、勇者がいる限り隣国が攻めてこないし、抑止力として機能しませんかね?」

「確かに。ただ、隣国に警戒すべき国があればですが、我々の騎士団は最強です。そこまで重要性がないかもしれません」

「うわー、正義の味方ってもっと単純だと思ってたー」


「正義は悪がいないと成り立たないからね。物語には正義がいるときには、必ず悪がいるだろ?」

「悪が滅びたら幸せに暮らせるわけじゃないんですね。じゃあ、魔王様が定期的に攻めてくるっていうのはどうですか?」


「そんなマンネリはそうそう続かないし、事態が進まないことに対する革新派があらわれてきたりして、益々国は混乱するんじゃないか?」

「うわー、平和って難しいですね」


「良い方法がないかあと数日のうちに考えよう」

「そうですね。難しい問題です。すぐには答えが出ないかもしれません」


「あと、これは王妃様に伝えておかなければならないかなぁと。」

「なんですか?改まって」


「出てきてくれ」


コーテーの合図で次々精霊王たちが姿を現していった。


「あの・・・この方たちは・・・」


「左から、シルフ、オンディーヌ、グノーム、サラマンダー、ルミニス、テネブレです。俺の協力者です」

「え!?その名前って・・・」


「そう、四大精霊に加えて、光と闇の精霊王です」

「え!?ええ!?」


王妃がその場で跪いた。

王都の宗教的に神様としている人たちが目の前に現れたのだ。

疑うことすら失礼と考えたのかもしれない。


「魔王様が次々と新しい魔法を作られたり、常識を超えた力をお持ちなのが理解出来ました」

「証明は不要ですか?」


「もう、あなたは数々の証明をしてきたではないですか。メアリーのことは、一番私に効く証明だったともいえるわ」

「そうですか。信じてもらえてよかったです」


「それにしても、私たちの神様が全員魔王様の方についているなんて・・・私たちはもう一度『正義』について考え直さないといけないわね」



「次は、メアリーとチコの1週間の過ごし方だけど・・・」

「わたくしはチコに料理を伝えます」

「私はメアリーから料理を習います」


なぜか、メアリーとチコが敬礼して答えた。


「そうだな。でも、この屋敷じゃないと出来ない料理もあるから、出来るだけ簡単なものから行こうか」


ただ、メニューは考えないと意外と城での再現が難しい。

一つは材料の問題。

例えば、シチューの場合は、屋敷ではルーを使う。

城ではルーが使えないので、再現がいきなり難しくなる。


かつおだし、昆布だし、チキン・ブイヨンやフォン・ド・ボーなどだし系は基本避ける必要がある。

インスタント系もダメだろう。


調味料の問題もある。

塩や砂糖、胡椒くらいは城にもあるだろう。

メアリーも普通に知っていたし。

醤油や味噌、ソースなどは多分ない。

塩胡椒と砂糖だけの味付けだと、確かに味が単調になってしまうし、レパートリーもたかが知れている。


さらに調理器具の問題がある。

屋敷では、電子レンジやオーブンはもちろんのこと、グリラーやスチーム・コンベクションなど業務用の機器までそろっている。


「焼く」「茹でる」「煮る」「炒める」「あぶる」「蒸す」など思いつく限りの調理方法ができるのに対して、城では、かまどで、「焼く」と「茹でる」、「煮る」くらいだろう。

工夫すれば「あぶる」「蒸す」くらいはできるかもしれない。


城でも再現できるメニューを一緒に考えてあげないといけないだろう。

いまんとこ、ソースなしのハンバーグしか思いつかないし、物足りないだろうと思っているので。


「コーテー様、ちょっと思ったんですけど」

「なに?メアリー」


「調味料なんかは、お城だとたくさん使うからこっそり持ち込むのって難しいと思うんです」

「そうだろうなぁ」


「じゃあ、食材と調味料は、村からという事でお城に売ったらどうでしょう?」

「なるほど、正規ルートってことか」


「ある程度までは、税として納めれば、村の負担も減りますし、それ以上ならお金が入ってきます」

「また無駄に金持ちになってしまう・・・」


金貨自体を錬金できてしまったので、この世界ではお金に対して執着がほとんどない。

欲しいものも自分で出せるので、お金を使うこともない。

一方で、大金を得るとそれだけで注目されてしまうので、リスクしかないのだ。


「現実的には、正規ルート案だろうな。そしたら、『調理器具問題』だけで何とかなるだろうし」

「はい」


醤油や味噌、ソースは作り方を公開することにした。

城や王都でニーズができれば、それを作ろうとする人や団体が現れてくるだろう。

ありふれたものになれば、わざわざ村から納入する手間がなくなり、お金も入ってこなくなる。

「地方創生」の真逆だな。

地域の特産品を殺す考え・・・

日本でやったらみんなから嫌われそうだ。


あとは、メアリーとチコに頑張ってもらうしかない。


会議では、『勇者くんを生き延びさせる問題』だけ残し、他は大体解決したみたいだ。

勇者くんは、自分が殺されるかもしれないと思ったら、テンション低めだった。

何とかしてあげたいのは山々なので、夜にはよく『会議』をした。



ここからは、連日、コーテーと勇者は対決の練習。

メアリーとチコは料理の練習。

王妃は、メアリーとチコの様子を見に行ったり、味見をしたりする役。

割とみんな忙しかった。


もっとゆっくりしたいのに!

もっとのんびりしたいのに!

このままでは、タイトル詐欺になってしまう。


コーテーは誰に向けてか分からないことを考えていた。


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ありがとうございます。

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