みんなで料理をしよう
「え!?ここは屋敷の入口!転移魔法ですか!」
「ああ、そういう名前がありましたね。俺は瞬間移動って呼んでますけど」
「転移魔法は普通の魔法師ではほとんど使える者がいません。しかもこれだけの人数を一度にとなると、王都には・・・」
「まあ、魔王だから」
「どのくらいの物まで移動させることができるんですか?」
「どうだろう、あんまり大きなものは動かしたことはないけど・・・」
『お姉ちゃんが本気を出したらお城を海の中に移動させるくらいは楽勝よ♪』
なんかとんでもない内容が聞こえてきたが・・・
「グノームが言うには城丸ごとでも移動できるみたいです」
「ああ・・・王都が全勢力を上げても絶対に勝てないのだと理解したわ・・・」
王妃が額に手を当てて嘆いた。
「魔王だから」
「まさに魔王様・・・」
「あ、メアリーとチコ、王妃様と一緒に料理を頼む!」
「はい」
「レシピは、いくつかチョイスしたから。こんなのどうだろ」
メアリーにタブレットの検索結果を見せる。
「甘煮ときんぴらは良さそうですね」
「みそしるにも挑戦してほしい」
「じゃあ、お昼はお味噌汁を作ってお昼ご飯にして、甘煮ときんぴらは夕ご飯にしましょうか」
「俺は勇者くんとやきいもとサツマイモチップスを作ってるよ」
「はい、お願いします」
「こっちのはどっちかって言うと、おやつだから、出来次第つまめるようにキッチンに持っていくよ」
「はい、お願いします」
勇者とコーテーは、庭に移動して、焼き芋の準備だ。
「焼き芋ってどうやったらできるんですか?」
「基本的に低めの温度で、長い時間かけて熱を加えた方が甘くておいしくなるね」
「へー、魔王様はやったことがあるんですか?」
「キャンプの時とかね」
「なるほどー」と言いながら、勇者はかなり興味津々みたいだった。
簡単な方法にするために、アルミホイルで巻いて、丸石を蓋つきの鍋に入れ、いもも入れた。
あとは、下から温めるだけ。
「火はどうやって起こすんですか?」
「うちには良いやつがいるんだよ」
「あんたまさか、火の精霊王様にいもを焼かせる気じゃないでしょうね!?」
「しっかり出てきてんじゃん!」
「わぁ!びっくりした!そ、そちらは」
「あ、サラが見える?火の精霊王のサラマンダーだよ」
「私は焼いたいもなんか食べたくないんだからね」
「そんなこと言うなよ、みんなの分も焼くから。中火で頼む」
「中火ってどれくらいよ?」
しっかり手伝っちゃうところサラマンダーは良い人・・・いい精霊王なのだろう。
「魔王様、驚きました。火の精霊王の加護をお持ちなんですね!」
「加護なのかは分からないけど、よく助けてもらうな」
「いっつも変な事ばっかするから、遊んでやってるだけよ!」
「おどろいたなぁ、城で習った精霊王のサラマンダー様ってもっと気高くて・・・その・・・とっつきにくい感じで本に書かれていたので・・・」
「え?サラの本とかあるの!?」
「そりゃあ、王都では四大精霊を神様として崇めていますから、聖書みたいな感じです。あ、僕らの世界の聖書は読んだことないので、そのまんまかは分かりませんけど」
「サラはいつも出来損ないのツンデレをかます赤い髪のやつって印象だったけど、やっぱり神様だったのか」と失礼なことを考えるコーテー。
それを「あんたの考えていることくらい聞かなくても分かるけど!?」と睨むサラ。
「本当に精霊王様と仲がいいんですね!しかも、こんなに美人なんて、すごい!魔王様の周りってメアリーさんとか、チコさんとか、サラマンダー様とか、美人が多くて良いですね!」
そういいながらも、勇者には姫(偽)がついている。
あの姫もだいぶ整った顔立ちだったから、それを言ったら贅沢だろう。
「ボクは?ボクは?かわいい?」
「わ!びっくりした!」
ルミニスが悪戯っぽく出てきた。
「今度は誰ですか!?」
「ああ、光の精霊王、ルミニスだよ。なんかいたずらっ子って感じの金髪ショート半ズボンのボクっ子だ」
「なんか意味はよく分からないけど、ひどい言い方なのは伝わってるよ、お兄ちゃん?」
「すごくかわいい子だ!」
ふふんとどや顔を決めている。
「すごい!光の精霊王様まで!精霊王の加護をいただくなんて多分人間では過去に例がないんじゃないかな。精霊王様に加護をいただくって発想自体がないはず!それなのに、2人も!」
少し離れたところに、シルフ(風)、オンディーヌ(水)、グノーム(地)、テネブレ(闇)もさりげなーく勇者に見えるように出現していた。
「え?ええ!?1,2,3・・・もしかして!?」
精霊王たちは、勇者に驚かれて、美人と言われたくて出てきたみたいだ。
そういえば、見えない人には見えないだけで、『魔王軍』は大所帯だった。
「いやー、コーテー様って本当に魔王様だったんですね!」
「いやいや、『なんちゃって魔王』だから、ちょっとしたら、勇者くんに倒されるからね」
「ちょっと待ってくださいよ!僕にそんなことできませんから!!」
「いいのいいの。勇者くんは、四大精霊の力を最大限に使って、魔王を倒すんだから」
「・・・あ、もしかして、茶番ですか!?」
「茶番だな。寸劇かも」
「魔王様が倒されたらどうなるんですか?」
「悪が滅びたんだから終わりじゃない?『その後みんなは幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし』だろ」
「え?僕ら帰れるんですか?」
「どうだろう?異世界ものは帰れないのが定石だからなぁ」
「魔王様が倒された後って、勇者はどうなるんでしょうね!?」
「なんか、領土とかもらって、貴族的な何かになって、幸せに暮らしていくんじゃない?」
「え?僕どうなるんだろ?考えたことなかった」
「一番最悪なのは、勇者が邪魔になるパターンだよな」
「どうゆうことですか?」
「とんでもない力の魔王を倒す勇者だろ?その勇者が王との考えが違う時が来たらどうなる?」
「陛下や騎士団も倒せるような敵・・・邪魔ですよね?殺されちゃいます?僕!?」
「絶対に逆らわないように人質を取ったり、奴隷契約を結んだり・・・あんまいい感じは想像できないな」
「それって、僕が新しい魔王ってことですか?」
「まあ、簡単に言えば」
「物語ってもっと幸せな結末じゃないんですか!?」
「姫と結婚して、次の王になるとかなら幸せな結末がくるかも」
「え!?僕に国とか任されてもどうしようもないですよ!?」
「いやいや、勇者な時点でもう任されてるから」
「うわー、やっといま自分の立場を理解しました!この先どうしよう!?」
「姫エンドを目指したら?かわいいし、お金持ちだし、逆玉でしょ?」
「でも、国が付いてくるんでしょ?」
「そんな国をお菓子のおまけみたいに言いなさんな。」
「魔王様、代わってもらうことは・・・」
「魔王が国を治めてどうする。俺は滅ぼされるから。」
「じゃあ、僕は魔王を倒したら、世の中からいなくなりますので魔王様の所でお世話になれませんか?」
「うちに来てもいいけど、メアリーは貸さないぞ!?」
「人の奥さん取ったりしませんよ・・・がんばったら村に小さな家を建てられるくらいの褒美はもらえないかな・・・」
「家位ならすぐに建ててあげるけど・・・あと、1週間くらいしたら王妃を連れて帰れば報酬たんまりもらえるでしょ。王妃様だよ!?」
「え!?もしかして、そこまで考えて僕まで連れてきてくれたんですか!?」
「いや、後付けだよ。後付け。」
「あ、でも、この世界、スマホもパソコンもないんだった!」
「村に来るならスマホとパソコンくらい準備してあげるよ。なんかネットにつながるし」
「魔王様、もうめちゃくちゃですね!一生ついて行きます!!」
同郷のよしみと年上という事もあって、面倒見ないわけにはいかない。
しかも、勇者なんて面倒な役も担ってもらっているわけだし。
「じゃあ、料理の続きしようか」
「はい、少し明るい気分になってきました」
「何作るんですか?」
「さつまいもチップスだよ。スライスして、揚げて、塩をかけたら完成。みんな既にお腹減ってるだろうから、つまみながら料理できるようにしよう」
カットして、揚げるだけ。
コーテーはフライヤーを出して、料理したので、焼き芋のすぐ隣でも簡単に料理ができた。
「なんで異世界で電化製品が出てくるのか分からないですし、なんで電気が使えるんですか!?」
「うーん、そこのところは良く分からないけど、精霊王たちがなんかいい具合にやってくれているのだと思ってる・・・」
グノームと目があったけど、にっこりされてしまった。
「さ、出来た!とりあえず、さつまいもチップスをキッチンのみんなに持って行こう。サラ、焼き芋の火見といて!」
「ひどっ!あんた精霊王の扱いひどくない!?」
「火のことはお前以上にうまく扱えるやつがこの世にいるわけないだろ?お前じゃないとダメなんだよ」
「ま、まあ、そりゃあ、精霊王だし?火だし?見ていてあげないこともないけど?」
「あのー、魔王様、あの茶番何ですか?」
「一種のコミュニケーションだ。基本的にとても協力的だ。感謝してる。」
「はー、そういうところが精霊王様達に好かれる秘訣ですかねー?」
「どうだろうな?精霊王様たちが一番楽しそうなのは、俺がイメージしたものを作っている時かな。多分、イメージと言う情報を引き換えに力を貸してくれてるみたいな?」
「それだけじゃないわよ」
急にグノームが後ろから抱きしめてきた。
「うわ!びっくりした!」
「やっぱり魔王様ずるいです!こんな美人に囲まれて・・・絶対帰りたくないやつじゃないですか!」
「確かに帰ってまた毎日毎日図面描く生活は辛いなぁ。メアリーもいるし、俺はこっちで暮らすかな」
「えー!?僕帰れないじゃないですか!」
「なんか、異世界側からドアを閉めないといけない的なシチュがあったら俺が閉めるから!」
「そんなアルマゲドン的なことあるんですか!?」
「いや、わからない」
「もー、真剣に考えてくださいよ!」
2人は笑いながらキッチンに待つ女性陣の所にさつまいもチップスを届けるのだった。




