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巨大クマのぬいぐるみ討伐

翌日は、1人と6人の精霊王で謎のモンスターを討伐に行くことになった。

まあ、現状分かっている情報を考えると、全長20メートルのクマのぬいぐるみなのだけれど・・・


相手が怪人の場合は、仮面ライダー、怪獣の場合は、ウルトラマンと決まっているが、この場合どちらなのだろう・・・


異世界のモンスターを考えてみると、スライムに始まり、ゴブリン、トロール、ドラゴンなどどの異世界ものにも共通して出てくるモンスターはいる。

だけど、黒いクマのぬいぐるみはモンスターじゃない。

そして、かわいいものは大体小さいのだ。


目の前のメアリーの頭をなでなでしながら「いってきます」を言った。

見えないメアリーのしっぽは、ちぎれるくらいにふるふる振られている・・・はずだ。


昨日の夜の作戦会議は、結局宴会になってしまい、詳細まで詰めることはできなかった。

テネブレの強さを聞いてみたけど、人間の基準では計れなかった。

簡単に言うと、「めちゃくちゃ強い」。


その強さを真似て強くなったのだとしたら、「もっとめちゃくちゃ強い」だろう。

とりあえず、今回のモンスターを「ロバー(盗人)」と呼ぼう。


ロバー攻略法としては、そいつよりも強いものを見せて、進化している10秒の間に倒すこと。


ロバーには、剣が効くのか、魔法が効くのかも分からない。

そもそも、10秒なのかも分からない。


普通に考えて一発勝負。

相手がけた外れに強くなってしまったら、こちらに手はないのだから。


しかも、既に「めちゃくちゃ強い」テネブレの力を盗んでいる可能性が高い。

少なくとも、テネブレと戦わせるのは得策ではないだろう。


さて、ステップ1として、森の外側からライフルで狙撃してみよう。


ステップ1

ターゲットまでの距離は約2km。

ライフルを構えて・・・撃つ!


「当たった?」

「お姉ちゃんが見た感じ、当たってるわね」

「ん、間違いない」


「じゃあ、倒せたかな?」

「残念だけど、ピクリともしていないわね」

「ノーダメージ」


まじか~。

無反応は想像しなかった。


「ステップ2」は、近づく必要があるから、いきなりリスクが上がる。

俺が近づいて行って、直接ロバーを攻撃するプランだ。


ただ、精霊王であるテネブレに俺が勝る可能性は低いから、ロバーは進化しないかもしれない。


ついでに、「ステップ3」として、四大精霊の1人が攻撃に行く。

テネブレと同等の強さの可能性もあるけれど、見た目的には四大精霊の方が年上っぽい。

経験的な何かがテネブレを超えている可能性がある。


そしたら、ロバーは進化するだろう。

その進化のタイミングを見て、光っているうちに神剣アスカロンクラスの剣で一刀両断・・・ってところだろうな。


「コーちゃんが考えていることは、だいたいわかったわ。じゃあ、お姉ちゃんが行ってみようか?」


思考を読んで、グノームが申し出てくれた。

ステップ2は、ロバーが進化しない可能性が高い。

悪戯に危険に身をさらすだけと言う可能性もある。


グノームに頼むか。

そして、剣は、現在最強の聖剣アスカロンの10倍の強さを持つ剣を新たに創造しよう。

「ソハヤの剣」とでも名付けよう。


やると決めたら、善は急げ。

グノームと2人だけで森に入って行った。


グノームの能力なのか、森の奥深くで座るようにして動かないロバーの姿が見える。

確かに、全長20メートルのクマのぬいぐるみだ。


あんなやつが大暴れしたら、王都もどうにかなってしまうだろう。

イスス村にもどのようにか影響があるかもしれない。


勇者くんも死ぬほどのケガを負っている。

気は抜けなかった。


あと1km。


「グノーム、お前の力でロバーまで一瞬で近づけないか?」

「できるわよ」


ちんたら近づいていたら、ロバーと「こんにちは」したときには、進化後と言う可能性もある。

作戦はこうだ。

グノームが飛び出て、ロバーが光った瞬間に、俺が出てソハヤの剣で仕留める。


・・・ツッコミ役がいないから「それ作戦?」っていう人はいない。


気付けば俺はロバーの手前5メートルにいた。

グノームも既にロバーの前にいる。


ロバーは、うつむいた状態で身体が光り始めていた。

ベスト・タイミング。

ジャスト・タイミング。


ソハヤの剣を振りかぶったところで、ロバーは急激に小さくなり、グノームのような容姿になってしまった。

その時間3秒ほど。

気が焦っていたから、実際は2秒かもしれないし、4秒かもしれない。


ロバーは目を開けた。

次の瞬間、地面から円錐状の針が数えきれないくらいそそり立った。

高さは約2メートル。


俺とグノームは、木の上に回避していた。


「コーちゃん、大丈夫?ケガはなーい?」

「助かったよ、さすが精霊王」


「もー、『お姉ちゃん』って呼んで♪」

「まだ、余裕あるな」


「失敗しちゃったけどー、次はどうするー?」

「うん、逃げようか」


幸い理由は分からないけど、一定以上距離を取るとロバーは動きを止める。

ゲームのボスみたいだな。


ああ、セーブポイントがあったら戻りたい。

ロバーの進化のスピードはこちらの想像以上だ。


進化に10秒かかるとしたら、余裕で一太刀、二太刀入れられたはず。

折角の作戦が水の泡だ・・・


・・・そんなに頑張って作戦考えたかな?


いや、早速リベンジだ!


「みんな集まってくれ!」


右腕を天高く突き上げながら叫んだ。

すると、地水火風、そして、光闇、6人の精霊王が集まってくれた。

自分の中に精霊王が入ったのを感じたら、ロバーにまっすぐ進んだ。


ついさっき撤退したばかりだから、Uターンと言ってもいいかもしれない。


「ちょっと、あんた、また戻ってるけど、策はあるの!?」

「もちろんだ」


「グノームの力はコピーされちゃったんでしょ?」

「確かにな。地面からでっかいトゲがたくさん出てきたよ」


「次、進化する2~3秒を狙うの!?」

「よく考えたら、進化の時間も短くなる可能性だってある。逆に遅くなるかもしれないけど」


「お兄ちゃんが考えている事ちょっと分からないよ」

「そりゃあ、そうだろう。この辺は人間に任せとけ。信じてくれ」

「信じてあげてもいいけどねっ」


「よし、ロバーの前まで飛んでくれ!」

「行くわよー」


瞬きをする間もなかったと思う。

次の瞬間、目の前にグノームに似ているロバーがいる。


『カッ』とロバーが光ったかと思ったら、1秒後には自分そっくりになっていた。

偽物が出るときは、黄色いマフラーをしているか、全身が黒くないとルール違反だろう。


「あれ!?失敗!?」

「ちょっと、ちょっと!」

「あんたどうすんの!?」


「いや!これでいいんだ!・・・多分」

「多分!?」


ロバーの形は定まったようで、まだ一部安定していなかった。


「逃げるか」

「「「「「えー!?」」」」」


10メートルほど瞬間移動した後だった。

当たりが一面大きな光に包まれて爆発した。


『ドーン!』


「ロバーが爆発した!?」

「多分な」

「どういうこと!?あんた何したの!?」


「・・・何もしなかったんだよ」

「どういう・・・こと?」


「風船だよ」

「風船?」

「この間、ご飯の時に遊んでた、あれ?」


「そう、あの風船だ」


「ロバーは、例えるなら風船だ。そして、お前たちの強さは水。空気でもいいけど」

「?」


空気が入っていない空の風船を1つ取り出した。


「テネブレちゃんの強さを真似出来るほどのキャパがあるんだ。ただもんじゃない」


思いっきり膨らませて見せた。


「そこに、チートな俺と、精霊王6人分の強さを入れたら・・・」


『パン』風船は割れた。


「「「「「あ」」」」」


「いくら強くても、限界はあるでしょう。精霊王様だってあり得ないほど強いのに、その6人分だぜ?当然限界くるでしょ!?」


割れた風船のかけらは、地面に落ちている。


「あとは、割れた風船のかけらを、念のために集めとく必要がある。」


何かあっても嫌だからな。


「「「「「ああー」」」」」


「よし、もう一回行くぞ!」


瞬間移動でロバーのいたところに戻ると、地面には触手のような物が無数にうねうねしていた。


「なにこれ?きもちわるーい」

「何かは分からないけど、ロバーの残骸だろうな・・・」


右手をかざして「ストレージ」と唱え収納した。

別に手をかざす必要もないし、唱える必要もないけど、雰囲気ね。


「あれ?終わり?」

「コーちゃん、大丈夫?お腹痛くない?」


ストレージってお腹なのか?

どこに収まっているのかは分からないけど、身体には全く問題がない。


「やったー!」

「平和だ!」

「すごいわぁ、お姉ちゃん誉めちゃう!」


「いやいやいや、今回も俺何もしてないだろ」


「「「「「・・・」」」」」


何にもしていないのに、また何か問題が解決された。

・・・いいのだろうか。

チートな転移者なのに何も活躍できてない・・・


注目されても困るし、誰かから誉められたら恥ずかしいので、また勇者くんに肩代わりしてもらうことにしよう。

適当なトロールの首をとって、勇者くんに渡し、一人で倒してもらったことにする。


多少強引だけど、以後あの変なのは出ないから、全く問題ない。

・・・帰るか。


こうして、多分この世界で最大の危機は誰にも知られることなく解決したのだった。


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