村の飢饉
村に行くことにした。
本当は瞬間移動で行く予定だったが、メアリーが一緒に行くと言うので、歩いて行くことにした。
「(相変わらず活気がない村なのだけど・・・)」
村長の家に着いて、村の異常に気がついた。
複数の家族が村長の家にいるのだった。
「どうしたんですか?」
コーテーが聞くと、村長の奥さんが答えてくれた。
「村に食べ物がなくなってしまって・・・」
食料が少なく、病気になっているものもいるのだとか・・・
ここで、コーテーは考えた。
村が貧困で食べられなくなる→城から援助物資が来る→屋敷に人が来る回数が増える
「これはいかん!メアリー!炊き出しの準備だ!!」
「はい!」
村長の家の前の広場を使わせてもらって、炊き出しをすることにした。
自力で歩ける人は来てもらって、難しい人は迎えに行くことにした。
最悪料理をストレージに入れれば持ち歩くこともできる。
そして、炊き出しと言えばカレーが定番だけど、この世界の人に受け入れられるか、まだ試していない。
さらに、何日か食べていない人の胃にカレーは重たいだろうと考え、具を軟らかめに煮た『豚汁』にすることにした。
ちょうどオークの肉が大量にあるので、それを使えばいい。
キッチンは村長さんの家の物を使わせてもらったが、とりあえず100人分作るとしたら、全然スペースが足りない。
キャンプ用のキッチンセットを出して、俺とメアリーはこっち。
ジャガイモ、にんじん、たまねぎ・・・早く煮えるように、いつもよりも小さめにカットして、炊き出し用の寸胴で炒めていく。
ただ、コンロを使っても、寸胴の中身を温めるのには時間がかかる。
すると、目の前にポンとサラマンダーのミニデフォルメキャラが現れた。
「大丈夫なのか?出てきて」
「大丈夫よ。あんた以外にはどうせ見えないんだから」
「なるほど、それでなに?」
「あんた、私が何の精霊王か忘れているでしょ!」
「あ!そういうことか!」
「どーしてもっていうなら・・・」
「どーしても頼むっ!」
「しょ、しょうがないわね!今日だけ特別なんだからね!」
サラマンダーが、寸胴を温める。
周囲から温めるのではなく、中から温めるようなものだから、すごい早さで沸騰した。
十分煮えたら、白だしで味付けしていく。
お腹減ってるだろうし、砂糖は多めで。
あと、食べれる人用にレンチンのおにぎり。
容器はさすがにないので、発砲スチロールのカップとプラスチックスプーンだ。
本来、ここにあってはいけないけれど、背に腹は代えられない。
100人分ともなると作るだけで大変だ。
各精霊と、メアリー、村長の奥さんが手伝ってくれたから、なんとかなったけど、普通に作っていたら大変だった。
ちなみに、村長は、周囲の村々を回って食料の調達をしてくれているらしい。
知らない間に大変なことになっていたみたいだ。
村人からは「美味しい!」「これなんて料理だ!?」なんて口々に聞こえてきたが、華麗にスルー!
容器は捨てようと思ったけれど、多くの村人がほしいと言うのであげてしまった。
食料は城から毎月届くし、今では半分も食べないのが現状。
今後は、これらを村に提供して、森で討伐してきたモンスターの肉なんかも一緒に持ってくることにしよう。
あと、肥料を持ってきて、たくさん作物が育つように陰ながら手伝いをするようにしようかな。
とにかく、村に城からの援助が来ないようにしないと、心の平和が脅かされてしまうのである。
念のため、滋養強壮に栄養ドリンクを各世帯に回って飲ませて回った。
あやしいやつが来たと警戒されないように、村長さんの奥さんも一緒に回ってもらったので、円滑だった。
とどめに、緊急性のある人はヒールで回復させたから村人が死ぬのは回避できた。
・・・まあ、数日は炊き出しだな。
メアリー忙しいのに、余計な仕事を増やしてごめん。
・・・
1か月後には、ほとんどの人が回復して、炊き出しも要らなくなった。
食料も配給制度にして、定期的に配るようにしたので、当面の食糧問題は解決した。
これで城からの援助のためにたくさん人が来ることは回避できる。
あと、村人にメアリーが大人気だ。
『イススの女神』なんて呼ばれている。
ちなみに、「イスス」はこの村の名前らしい。
炊き出しや配給で渡すのは、メアリーと村長の奥さんが積極的に前に出て仕事をしてくれていた。
村人との直接的な接点が多かったのだ。
しかも、メアリーの容姿にも理由があった。
さらさらできらきらの銀髪ロングで、もちもちの肌、超が付くほどの美少女。
老若男女問わず目を惹き、大注目されていたのだ。
屋敷に住んでいることも村中に広まり、一躍注目の人となっていた。
コーテーは、自分自身が注目されると問題になりそうだったので、メアリーが話題になっても気にしていなかった。
むしろ、誇らしいとすら思っていたのだった。
■精霊会議
今朝の朝食はローストビーフサンド。
パンを開けたら具がほとんど入っていないコンビニのローストビーフサンドとは違うよ!
むしろ、パンが盛り上がるほど具の入ったローストビーフサンドだ。
それに、ミルクたっぷりのカフェオレ。
「コーテー様!」
「なんだい?メアリー」
「どうしてコーテー様は、ちょっと目を離したすきに朝食の準備をしてしまわれるのですか!わたくしの仕事を取らないでください!」
「ほら、イススの女神さまは、今日も配給で忙しいかと思って・・・」
「それ!それやめてください!本当ならコーテー様が表立って感謝されるお立場のはずです!」
メアリーは、割と本気で引け目を感じているようだった。
最近では、メアリーが村に行くと、若い衆が求婚したり、ワーワー、きゃきゃーと大騒ぎだ。
子供たちにも人気で、先日は、将来はイススの女神さまになるのが夢だと挨拶をした子供に告げられたらしい。
城からの食糧はほとんど村で配給に回していることを考えたら、胸を張っていいと思うけど・・・
日々の食事は、余りに余っているモンスターの肉と、暇つぶしで作った庭の家庭菜園の野菜で十分賄えていた。
調味料などは、ネットスーパーっぽい能力で出しているので、なくなることもない。
なんなら、レトルトやインスタントも出せるので、食事の準備などの時間はこの世界の人から言ったらかなり短縮できている。
こうでもしないと、メアリーは勤勉すぎて1日中仕事をしている。
そうなると、全然遊ぶ時間がないので、コーテーは自分が遊んでもらえないので嫌だったのだ。
「時間ができたら、またピクニックに付き合ってね」
「いつでもお供します・・・」
そうはいっても、メアリーの中では日々の仕事が最優先で、ピクニックなどに連れて行くときは、コーテーのわがままを聞いているような状態なのだった。
「そうだ、コーテー様、もう一人の勇者様が近々モンスター討伐に出られるそうです。」
まただ!
連絡係りも来ていないのに、どうやってメアリーは城からの情報を得ているのか!?
聞こう、聞こうと思いつつ聞きそびれている。
「なんでも勇者様はレベル18になられたそうで、城の東のダンジョンの攻略に行かれるそうです。」
へー、そうなのか。
「でも、あのダンジョンは難攻不落で、勇者様でも手に余る可能性があるらしく、騎士団4つと共闘するそうなんです」
「騎士団って何人くらいのあつまりなの?」
「ある程度バラバラですが、概ね20人くらいで1騎士団です」
じゃあ、勇者と80人でダンジョン攻略ってことか・・・
結構な大所帯だな・・・
もしかしたら、さらに魔法使いなどが加わり、100人を超える大所帯なのかもしれない。
ここでコーテーは気付いてしまった。
勇者がダンジョン攻略を失敗する→ケガなどで冒険に出られない→コーテーに声をかける
まずい!これは、ニート生活の危機だ!
コーテーは緊急会議を招集した!
「第1205回緊急会議―!」
「「わー、パチパチパチ!」」
「司会進行は、わたくし、水の精霊王ことオンディーヌが務めるわ!」
「「わー、パチパチパチ!」」
「じゃあ、議題!コーテー!言っちゃって!」
「今回の議題は、勇者のダンジョン攻略だ!」
「そんなのコーちゃんがわざわざ行かなくても勇者さんに任せておけばいいんじゃない?」
ダダ甘お姉ちゃんのグノーム(地)は全く興味がないみたいだった。
そもそも、コーテーのこと以外ほとんど興味がないみたいだった。
ちなみに、『コーちゃん』はコーテーの『こーちゃん』か!?
「ところが、そうもいかない!その勇者に何かあったら、俺にその役が回ってくる可能性がある!」
「じゃあ、そんときは、ボクの魔法で治したらいいんじゃない?」
あんまり顔を見せてくれないルミニス(光)がひょっこり顔を出した。
「何かあったときは、そう頼みたいが、何かあってからではダメなんだ。城が、王が、『この勇者ダメじゃね?』と思った時点でスペアを考えるかもしれない」
「あんたは結局ニート生活を続けたいってわけ!?」
ふんっと鼻で笑うように出てきたのはサラマンダー(火)。
「俺が忙しくなるとお前と遊べなくなってしまう。モンスター討伐やらお役所仕事やら大変なことは、もう一人の勇者に任せたい!」
「あ、あんたが、どうしても私と遊びたいって言うなら、協力してあげなくはないわよ!」
「どうしても!」
相変わらずコーテーは、他人に頼むことに躊躇がない。
「王様が・・・邪魔なら・・・私の魔法で呪い殺しても・・・いい。なんなら・・・王都全域を・・・滅ぼせる・・・」
こいつもあんまり出てきてくれないテネブレ(闇)だ。
今日もゴスロリでクマのぬいぐるみを連れている。
「それはだめだ。王に何かあっても、別の誰かが王になるだけだ。今よりも優秀なヤツが王になったら、結局城に呼び戻される可能性がある。王都全域の消滅は、人としてなんかだめだ」
「じゃあ、あんたはどうしたいって言うの!?」
お、ちゃんと司会進行しているじゃないかオンディーヌ(水)。
「ダンジョンに先回りして、強そうなモンスターを全部先に倒す!」
「あんたバカぁ!?」
サラマンダー(火)、それはツンデレではなく、ツンデレキャラの有名なセリフ名だけだ。
「勇者のレベルが18くらいらしいので、それより強いやつを全部倒す!」
「お姉ちゃん心配だな。コーちゃんがケガしないように、お姉ちゃんがひとっ走り行って全滅させてこようか?」
「それも、ダメだ。ある程度モンスターを残しておいて、勇者の功績になるようにしないといけない。勇者とダンジョンと両方の情報をもう少し集めて、適度に活躍できるようにしないといけないんだ」
「コーテー、頑張り屋」
口数が少ないクールビューティー、シルフ(風)がやっと口を開いた。
「そこで、先に城に忍び込んで勇者のことを知りたい。透明になることはできないだろうか!?」
「あんたの想像力では透明になれないっての?」
「俺が知ってる世界の透明人間の映画やアニメは、薬によるものがほとんどで、最後は解除になって見つかるエンディングの物がほとんどなんだ。だから失敗する気がしてしょうがない」
「『えいが』や『アニメ』が何なのかは分からないけど、あんたの想像力の源なのね?」
「まあ、そうだ。」
「石ころみたいになれる帽子をくれる猫型ロボットの話もあるけど、この帽子が外れなくなる話で結局失敗する」
「なぜ、猫のロボットが帽子をくれるのか、あんたの想像力を疑うわ。」
「じゃあ、ボクが光の屈折なんかで人から見えなくてもダメなの?」
「そうなんだ。失敗しそう」
「見つかったら、瞬間移動で屋敷に戻ってきたら?」
「なるほど」
「ついでに、ボクたちが全方位みてるから、誰か近づいたらすぐに知らせるし」
「ルミニスすごいね!できる子だな!」
「えへへ、誉められた」
「よし!早速、今日城に忍び込むぞ!」
「「おー!」」




