<江戸山南4条西10丁目の防衛戦 伽藍GUILDにて-1>
<江戸山南4条西10丁目の防衛戦 伽藍GUILDにて-1>
「もぐっ、がふぁ、ほふ・・ロルズロイスさん、
ご飯お代わりは本当に宜しいんですか?」
ジグは、テーブルの傍で無表情のまま仁王立ちするロルズロイスに、
ウソウソうっそ~ん定食のメンチカツを頬張りながら、
手持ちの丼を恐る恐る差し出した。
看板に偽りなし
Bランチ ウソウソうっそ~ん定食(ライス食べ放題)
定食のおかずは、A5ランク国産和牛使用のメンチカツ、
南海道産馬鈴薯コロッケ、巨大伊千エビフライ、限界灘産あじフライ、
そして、大ぶりなGUILD長特製ソーセージが3本と、
注文した客が思わず「ウソウソうっそ~ん」と叫んでしまう逸品だった。
そして、その圧倒的なおかずのボリュームに応えるべく、
食べ放題のライスが訪れる者の感涙を誘って止まない。
「伽藍GUILD長ロルズロイス、男に二言はございません。
仰せのままに・・」
ロルズロイスは、ピカピカに磨かれた銀のトレイにジグの丼を素早く載せ、
あり得ない早さで、厨房入り口と思われるところから消えた。
ほどなくして、彼は丼に白飯をマッターホルンのように山盛りし戻ってきた。
「これで満足して頂けますかな、よもや、飯を残すなどということは・・」
ロルズロイスは大量の白飯をジグに差し出し、
勝ち誇ったように低くしゃがれた声で念押しした。
「やだなぁロルズロイスさん、残すだなんて。
これで食べ放題が本当なのがわかりましたし、
お腹がいっぱいになるまでまーだまだ、お代わりを続けますよ!」
ジグはロルズロイスに屈託無い笑顔で応えながら、
ご飯を掻き込むスピードを一層上げていく。
そして、白飯のマッターホルンは瞬く間に胃袋に消え去った。
「す、すげぇぇ・・」
<Aランチ 鵯越のスパゲッティー 880円(スープ・サラダ付)>を食事中だった一二三は、
スパゲッティーの端を口からぶら下げたまま食事を中断し、
唖然とした表情でジグの食事を見守った。
ジグの爆食により、ウソウソうっそ~ん定食が胃袋に収まるにつれて、
風前の灯火だった身体機能は徐々に回復していった。
もっとも、マカインに居た頃のアビリティ回復にはほど遠いレベルだ。
《ジグ様、私めのEPゲージが、
かなり良い感じで上昇中でございます。
私のスキル稼働領域は、このまま補給が続きますと、
約15%まで回復する予定でございます》
白飯で頬を膨らませるジグに、ソラが話しかけてきた。
ソラは興奮しながら、自らのスキルスイッチを次々と稼働していく。
《お前の能力を回復させて稼働させるのが先だよ。
ボクが食べた分のパワーは最優先で廻しているからね。
この人たちが防衛戦とやらをうまく戦えるように、
ボクたちが集めた情報できっと貢献できると思うんだ》
ジグの状態は、マカインで戦ったときとは比較するまでもない。
この世界の人間並しかないジグのパワーは、ほぼ0:10だった。
一方で、15%とはいえソラの稼働率を回復できたことは、
この世界の破滅を防ぐための大いなるアシストとなるはず。
ジグは、無意識にマスターを想いながらそう確信した。
《了解です、既に様々なリサーチモードを稼働しモニターしております。
ターゲットの<R・B>ですが、
現在位置、移動速度、到達予想時刻等、間もなく洗い出しを完了いたします。
<R・B>の攻撃力及び防御力等パラメーター。
討伐のための弱点索敵に関しては、もう少しパワーが必要となります》
ランチがすこぶる美味しいこともあってか、
唖然とする周囲の同席者たちを余所に、
その食欲は収まること無くご飯のお代わりを繰り返し、
いつしか厨房のスタッフまでもがジグのオーディエンスとなっていた。
レストランの巨大な炊飯釜底に白飯が無くなりかけたそのとき、
ソラがジグに緊急事態を告げた。
《ジグ様、想定以上に<R・B>の侵食速度が上がってきております。
恐らくロルズロイス様の想定より3日早いようです。
<R・B>の侵食幅は、断崖から江戸山南4条西10丁目の交差点中心線までのラインを、
ほぼ平行に街を侵食しております。
このまま<R・B>の侵食が進みますと、
当交差点までの到達時刻は本日の夕方6時、以上です》
ジグはソラの報告を聞き、咄嗟に食事を切り上げた。
そしてGUILD長に緊急事態を告げた。
「一二三、ランチご馳走様。
ボクの情報に寄れば、どうやら皆さんの出番がきたようです。
本日の夕方6時に<R・B>がこの交差点に到達します。
間違いありません」
ジグの言葉に、伽藍GUILDのメンバーは色めき立った。
「おお、やったるでー!」
「そうさな、あの野郎ぶっ飛ばしてやる」
「なんとしてでも、街を守り住民の<感化>を解くのが俺たちの使命だからな」
その中で一二三は、軽く膝をガクガクさせながら、
思い出したように自分のランチを胃袋に掻き込み始めた。
「ほほう、この私の想定時刻より随分早い到着ですな。
貴方はどうやって、その情報を手に入れたのでしょうか。
GUILD長の私にもわかるように教えて頂きたい」
GUILD長は、ジグの宣言に動揺することもなく、
手持ちのトレイに鮮やかな手さばきで食器を次々と上乗せしながら、
圧倒的な眼力で問いかけた。
《ジグ様、ここは私にお任せください。
そのまま立ち上がり、後ろの白壁に向かってジッとしてください》
ソラのことだ、何か妙案があるのだろう。
ボクはGUILD長と目線を交わしながらスクッと立ち上がり、
漆喰でできた美しい白壁のほうを向いた。
GUILD長は、冷静にジグの行動を見守っている。
すると、ジグの目元から青みがかった光線が放射状に放たれ、
徐々に漆喰の白壁を広く覆っていくではないか。
そしてそこに映し出された光景とは、
街の外周を<R・B>が怒り狂いながら囓っていく様子だった。
モニターによれば<R・B>の現在地点は、江戸山区荒木戸町10丁目付近。
何事も無く日常を暮らしている人やクルマ、そして平和な街並みが、
恐ろしい早さで<R・B>の刃に犯されていく光景は、
通常の神経では耐えられない地獄絵図だった。
だがここに居るメンバーは、<R・B>による<感化>に耐えた能力者たち。
その中には、過去の戦いを生き残った強者もいる。
この<伽藍GUILD>による最後の戦いを認識する彼等は、
このあと繰り広げられるであろう<R・B>との死闘を前に、
モニター画面の悲惨な状況をジッと見守っていた。




