1話 青辿の霹靂
初めまして、HalToと申します。
過去に投稿した1話~3話を再編したものになります。
よろしくお願いします。
2015年 春
桜舞い散る季節のとある街中、テーブルを前に一人の中年がこう言う。
「あぁ、今日も今日とてマジック日和だ!」
彼はどうやら街頭芸人、それもマジシャンのようだ。
「あ?いいんだよ、バレなきゃフェアフェア!」
明らかに誰もいない空中に向かって言う。
「どうせ金なんかロクに払いやしねーんだ、その位いいじゃねぇか……。」
そんなやり取りを一人でやってるうちに観客が集まってきた。
「おお、集まってきたな。行くぞ『オーバ』革命だ。」
鮮やかな手つきで次々とマジックを成功させていく。
お世辞にも天才的と呼べるものではないが彼のパフォーマンスは観客の心を魅了していく。
そんな最中、
「なあ、その浮いてるものは何だ?」
「!?」
観客は一人の少年の突飛過ぎる発言により唖然としている。
何故なら少年の指す方向には風船やドローンはおろか、チリ一つない虚空だったから。
マジシャンは言う。
「興が覚めてしまったみたいだな、悪いな、少し早いが今日はもうお開きだ。」
そう言うと、集まっていた観客は散り散りに、行くべき場所へ向かう。
「なあ、見えるのか?」
マジシャンはかすかな声で続ける。
「もし見えてるんだったら……ほれ、口止め料だ。とっととおうちに帰んな。」
マジシャンはポケットから1万円を差し出した。
「いや……。」
「?」
「帰る家……と言ってもなあ……。」
少年は言う。
「なんだ、今どき流行りの家出少年ってやつか?」
マジシャンの質問に渋い表情で少年は答える。
「いや……わからない。何も憶えていないんだ。」
「……は?」
「……本当に。」
「はぁー、てことはあれか、記憶喪失ってやつか。」
マジシャンは頭を掻く。
「あー……ならウチ来い。」
「俺の名は「橘 真司」。お前が記憶を取り戻すまで世話してやる。」
橘は手を差し出す。
「タチ……バナ……さん。えと、俺は……。」
少年は顔をしかめる。
「あ、名前か……んじゃ、「廻りあった記憶喪失の人」で「廻 喪介」ってのはどうだ?」
橘は言う。
「もちろん仮名だ!これなら愛着も湧かないだろ?」
「ああ……。」
少年……改め喪介は微笑んだ。
「ところで、それはなんだ?」
喪介は指差し訊く。
「そういや見えるんだったな。こいつは「ミタマ」の『オーバ』。触れたものと任意の物体の位置を交換できる。」
橘は肩のあたりの空中を指さし、口角を上げて答える。
30㎝くらいの道化師のようなものが浮いて見える。
「俺は『オーバ』の能力を使って観客の財布から金をくすねてた。」
ポケットから紙切れと紙幣を広げる。
「心ばかり、短冊にしてんだ。」
「ミタマ……。」
橘は続ける。
「ミタマってのは幽霊みたいなものさ。触れることはできないし、同じようにミタマを持った者「ミタマ使い」か、霊感の強いものにしか見えない。」
喪介はまたも訊く。
「俺は……どっちだろう、少なくとも俺の周りにはいない……。」
「どうだろうな、ただ霊感が強いだけか、ミタマ使いになりたてなのか。」
橘は答えた。その時。
「危ねぇ!!」
ドジュッ!と音を立てて拳が2人の間を掠めた。
「あー、惜しかったなぁ!?やぁっと見つけたぜぇ!!クソガキィ……。」
強い熱気が伝わる。
「テメーを今から殴れると思うとよぉ……ゾクゾクしてくるぜぇ……。」
男はメラメラと揺らめく先にいた。
「何だ?こいつ。喪介、知ってるか?」
「知らない、それよりあいつ……高熱を帯びたパンチを飛ばしてきやがった……。」
喪介は蒸気を出し赤く光った彼の拳を見て言う。
「あぁ?知らないだとぉ!???」
「俺の名は「本田 猛人」、トラック運転手だ……ある日テメーを轢いた、だが生きていた……そして何をしたと思う?」
本田は問う。
「俺はなぁ!!テメーに殴られた!!!そして目覚めたら朝だった!!!おかげで仕事はクビよぉ!!!」
「でもなぁ……目覚めたときに手に入れたこの力ァ……感謝してるぜクソガキ……。」
拳を赤熱させ、握る。
「これでお前をメッタメタに殴れるんだからよぉ!!!!!!!!」
本田は怒りに任せ、怒鳴り散らす。
「橘さん。あいつ、完全にミタマ使いだな……。」
「間違いない、それに……。」
「『ライデンシャフト』!!」
そう言うと、マグマのような見た目のミタマが現れた。
2m近い体躯だ。
「パンチを飛ばしたんじゃない、これだ。」
「ふん!!」
マグマのミタマは拳を振りかざし、向かってくる。
「逃げるぞ!!!!」
2人は全速力で逃げ出す。
「おいテメー!逃げんのか!!!」
本田は地面に手をつく。
「培熱!!!!」
「はぁ……はぁ……撒いたか?フー……。」
息を整える。
「はぁ……戦闘向きすぎる……とにかく逃げよう、俺らじゃどうにもならない……。」
「確かに、食らったらひとたまりもなさそうだ……。」
膝に手をつきながら、顔を見合わせる。
「ただ、弱点ならある……奴はきっと……ってあっつぁ!!!!喪介!地面が!!!」
「え!?あっつぁ!!あいつだ!!クソ!マズい!!」
周囲のアスファルトは柔らかくなり、タイヤは弾ける。
「あぁ…追いついたぞぉ…クソガキィ!!!」
本田が追い付いてきたようだ。
「来たよ!喪介!!」
おののく橘。
遠くではサイレンが鳴り響く。
「クソ……今やらないと街が……。でも……いや、俺、やるよ。橘さん。」
喪介は呟く。決意とともに。
「え!?無茶だ!」
「いや、できる気がするんだ。」
2話(旧4話)に続きます。
感想など楽しみにしてます。




