第7話:現場の絆と、初めての満足度★5
『ぜぇ……ぜぇ……あと一歩……あと一歩で最奥のボス部屋だ……!』
全身泥と温泉成分でボロボロになったSランク冒険者レオンは、息も絶え絶えに最後の扉を開けた。
そこにあったのは——息をのむほど美しい空間だった。
エルザが設計しゴルドンが組み上げた『鏡面コーティングの回廊』。その中央には、マルコスがこだわった『黄金色に輝くラグジュアリー温泉プール』が豊かに湯気を立てていた。
立ち上る湯気に、クライアントである起業悪魔バアル様が持ち込んだ「魔鏡」の光が乱反射し、まるで満天の星空と黄金の波紋の中に浮かんでいるかのような、圧倒的に幻想的な光景が広がっていたのだ。
『な……なんだこの空間は……!? 恐ろしい激闘の後に、こんな至高のスパリゾートのような癒やしの絶景が……!?』
レオンは思わず剣を落とし、うっとりとその光景に見入ってしまった。
そこへ、拍手をしながら現れたのは、バアル様と、ピンクのヘルメットを被った(そして全身汗と泥まみれの)サクラ社長だった。
「素晴らしい……! 完璧だ!!」
バアル様が魔法鏡を掲げながら大絶叫する。
「見よ! このSランク冒険者すら死闘の末に感動させるストーリー展開! そしてこの圧倒的『ラグジュアリー魔鏡映え』! 配信の同時視聴者数が過去最高の100万人を突破したぞ!」
『な、配信……!?』驚くレオン。
バアル様はレオンの元へ駆け寄り、ガシッと握手を交わした。
「君の必死の攻略、実に映えていたよ! 報酬として最高級の宝箱をあげよう! さあ、その黄金温泉で疲れを癒やしたまえ!」
『えっ……? あ、ありがとう……? なんかめちゃくちゃ達成感あるし、温かくて最高だぞ……!』
ボロボロになりながら温泉に浸かるレオンの顔には、心からの満足げな笑みが浮かんでいた。
【大型新築案件:施工完了。利益:金貨200枚+特別ボーナス50枚+評価★5(最高得点)獲得!!】
「やった……やったわ……!」
レオンとバアル様が温泉で記念撮影(魔鏡パシャリ)をしている横で、サクラは力尽きてその場に崩れ落ちた。
「社長! 大勝利です! 我が社の『ラグジュアリー黄金温泉』の知名度が暗黒界全域に轟きましたよ!」
マルコスが嬉しそうに帳簿を叩く。
「……サクラ。あんたの手動演出と、この男の無茶な温泉案の組み合わせ……悪くなかったわよ。私のデザインがより引き立ったわ」
照れくさそうに顔を背けるエルザ。
「へっ、手動で岩を落とし、ボイラー焚きすぎて腕がパンパンだぜ。だが……悪くねぇ現場だったな!」
ゴルドン親方が豪快に私の肩を叩く。
「みんな……ありがとう……」
泥と汗にまみれたピンクのヘルメットを見つめながら、心から笑った。
無茶なデザイン、暴走する営業の温泉案、突入してきた冒険者。全員の力が噛み合ったからこそ掴み取れた、初めての『満足度★5』。
「よし! 大金も入ったことだし、今夜は会社設立以来初の『打ち上げ&特別手当支給』よ!」
「「「うおおおおおーーーッ!!」」」
(※スライムもプルプル大歓喜)
現場の絆を深めた『サクラ迷宮建設』。
だが、急速に有名になった会社の名声は、やがて業界の「暗い影」を引き寄せることとなるのだった……。
(第7話・了)




