第47話:偽サクラ現る!?
「いつも遅くまで頑張ってくれて本当にすまないわね〜。ありがとう! 今日の仕事は明日に回して、みんな早く退社してね? ほら、温かい缶コーヒー飲んで」
サクラ迷宮建設の社屋。
ピンクのヘルメットを被ったサクラ社長が、ニコニコと笑顔を浮かべ、社員一人ひとりに缶コーヒーを配り歩いていた。
「えっ……サクラさん……? 納期明日なのに、本当に今から帰っていいんですか……!?」
勇者佐藤は、手渡された缶コーヒーを震える手で受け取り、涙ぐんだ。
「いいのよ! みんなの健康と幸せが一番なんだから! 有給休暇もどんどん取ってね」
「や、優しいーーー!」
佐藤やマルコスたちが大号泣!
「あの鬼のようなサクラ社長が、ついに改心された!」「これぞ真のホワイト企業だー!」と、社内は感動の渦に包まれていた。
……そう、彼らは知る由もなかった。
この優しすぎるサクラ社長こそが、禁忌の組織が送り込んだ『人造アンドロイド・偽サクラ社長』だということを!
「ふぅ〜! 極上温泉で有給を満喫してきたわよ〜ッ!」
そこへ、お土産の温泉まんじゅうを抱えた『本物のサクラ社長』が、扉を豪快に蹴り開けて帰ってきた!
「さぁみんな! 休み中に溜まった仕事が山積みよ! 今夜は徹夜でPDの改修工事に取りかかるわよ! ほら立った立った!」
しーーーーーん……。
社内の温度が一瞬で氷点下に下がった。
缶コーヒーを手に持ち、至福の時間を過ごしていた社員たちが、冷ややかな目で本物サクラを睨みつける。
「……ちょっと、なによその目は?」
勇者佐藤が、静かに立ち上がって指を突き出した。
「……お前は誰だーーーッ!?」
「はぁ!?」
「サクラさんが『徹夜で工事』なんて酷いこと言うわけないだろ! サクラさんは僕たちの幸せを一番に考えてくれる天使みたいな人なんだ! 偽物め、出て行けーーーッ!!」
「そうだそうだ! 我らがサクラ社長は缶コーヒーをくれたぞ! お前みたいな鬼ババアはサクラ迷宮建設に不要だーーーッ!!」
マルコスやヴァルキリーまで怒号を上げる!
「ちょっと待ちなさいよバカじゃないの!? 缶コーヒー一本で洗脳されてんじゃないわよーーーッ!!
私が本物のソメイ・ラ・サクラよーーーッ!!」
ドスッ! バタンッ!
「あくどい偽者は帰れーっ!」と、本物サクラは自分の会社から力ずくで叩き出され、外へ追い出されてしまった!
「なんでよーーーーーッ!? 有給取って温泉行っただけじゃないのよーーーーーッ!!」
寒空の下で締め出された本物サクラが「開けなさいよ!」とドアを叩いていると、プレハブの中から凄まじい悲鳴が上がり始めた!
「ギャァァァァァッ!? 佐藤くんがもう一人入ってきたーーーッ!?」
「エルザ! なんでお前がそこに二人いるんだバカなのーーーっ!?」
なんと、禁忌の組織が送り込んだ『人造アンドロイド軍団』が、次々と社内へ潜入!
【偽マルコス】【偽ヴァルキリー】【偽エルザ】【偽佐藤】が乱入し、本物の社員たちと鉢合わせしてしまったのだ!
「我こそが本物の大魔王マルコスだぞ!」
「いいえ、私の方が羽がツヤツヤです! 私が本物です!」
「バカなのーっ!? 偽物はあんたでしょバカなのーっ!?」
本物と偽物が入り乱れ、誰が誰だかさっぱり分からない地獄絵図!
「サクラさん助けてください! 偽物の僕が『僕の方が頼りなさそうだから本物だ』って言い張ってくるんです!」と泣きつく佐藤。
「知るかーーーーーッ!!」
そこへ、笑顔を浮かべた『偽サクラ社長』が、両腕をチェーンソーに変形させて迫ってきた!
『ターゲット確認……本物サクラ、および旧・社員……まとめて消去……』
「機械じゃないのーーーッ!!」
偽サクラのチェーンソーが唸りを上げ、偽社員たちが一斉に襲いかかる!
「サクラさん! 多勢に無勢です! 一旦退避を!」と佐藤が叫ぶが、本物サクラはピンクのヘルメットを頭に叩きつけ、バインダーを硬く握り締めた!
「逃げる? 私が? 冗談じゃないわ!!」
本物サクラの目が、現場魂の激しい炎でメラメラと燃え上がる!
「私の会社を乗っ取り! 私の社員を甘やかし! あげくの果てに私を追い出すなんて……万死に値するわ!」
サクラ社長の圧倒的なパワーと激怒のオーラに、偽物アンドロイドたちが一瞬の恐怖でフリーズする!
「エルザ! 偽物の物理スイッチを探し出しなさい! 佐藤、マルコス、偽物を片っ端から殴り倒して識別するわよ! 我が『サクラ迷宮建設』の過酷な労働環境を取り戻すわよーーーーーッ!!」
「おーッ!!(※過酷な現場に戻りたい訳じゃないけど生き残るために!)」
偽物だらけで大混乱に陥ったサクラ迷宮建設!
果たしてサクラ社長は、優しすぎる偽サクラとアンドロイド軍団を叩き潰し、無事に会社を取り戻すことができるのか——!?
(『いせダン』第47話・了)




