第44話:バブル崩壊!
栄華を極めたプライベート・ダンジョン建設バブルの頂点は、突如として牙を剥いた。
数ヶ月後——王都の街角で、異変が起きる。
「おい見ろよ、あいつの家、庭にプライベート・ダンジョン建てたんだってさ」
「え〜……ダサっ。今どきPD持ってるなんて、成金っぽくて恥ずかしくない?」
「うちの近所のパン屋のおやじも庭に10階層建ててたぜ。どこ行ってもダンジョンだらけで飽き飽きだな」
そう……街中にプライベート・ダンジョンが増えすぎた結果、大富豪たちの間で「誰でも持っている庶民的な娯楽」へと成り下がり、「ステータスとしての価値」が急落してしまったのだ!!
「サ……サクラ社長ーーーーーッ!!」
営業本部長のマルコスが、青ざめた顔で吐血しそうになりながらプレハブ社屋へ飛び込んできた!
「王立証券取引所で、ダンジョン建設業界の株価が暴落しております!! 新規のPD発注キャンセルが100件超え! 前払い金の返還請求が殺到し、株上場の話も一瞬で立ち消えになりましたぞーーーーッ!!」
「な……なんですってぇぇぇぇぇッ!?」
さらに追い打ちをかけるように、人事部長のヴァルキリーが絶望的な報告をもたらす。
「モンスターバブルも弾けました! ダンジョンモンスターたちの派遣日給は大暴落! バイトで稼げなくなった悪魔や人族のコスプレおじさんたちが『サクラ迷宮建設に騙された!』と社屋を取り囲んでデモを起こしています!」
「ちょっと待ちなさいよ!! 昨日の今日でなんで一気にバブルが弾けてんのよーーーーーッ!?」
社屋の周りを取り囲むデモ隊の怒号。「返金しろ!」「株価を戻せ!」「暴走メカモンスターを引き取れ!」と悲鳴が飛び交う。
「さ、サクラさん……! 僕たちの夢の一億ゴールド完済と社屋新築が……また遠のいていきます……」
勇者佐藤が頭を抱えて震えている。
「バカ言わないで佐藤くん!! ピンチはチャンスなのよ!」
サクラ社長はピンクのヘルメットを頭に叩きつけるように深めにかぶり直し、ドカンとデスクを蹴り飛ばした!
「いい!? 貴族や大富豪が『誰でも持ってるからダサい』って飽きたのなら……『持っていること自体が究極の恐怖と名誉』になるように、見せ方を変えてやればいいのよ!!」
エルザ、マルコス、佐藤、ヴァルキリーがハッと息を呑み、サクラ社長を見つめる。
「サクラ社長……『見せ方を変える』とは……一体!?」
サクラ社長は不敵にニヤリと笑い、ホワイトボードの『PD=大富豪のステータス』という文字をバッと消し、新たな言葉をデカデカと書き殴った!
『個人所有型・激ムズ試練ダンジョン(※攻略不可)』
「ただの自慢用温泉リゾートだから飽きられたのよ! これからは『我が一族のダンジョンは、王立騎士団すら一階層目突破不可能な至高の要塞である』という【難攻不落の威厳アピール】にシフトするわ!!」
「な、なるほど……! 確かに貴族どもはプライドの塊! 『うちのPDは誰もクリアできない』となれば、新たなマウント合戦が始まりますぞ!!」とマルコスの目が輝く!
サクラ社長は開発室のエルザを指差した!
「エルザ! 納品済みのメカモンスター全機に……『全自動・超絶理不尽難易度アップグレードプログラム』をオンライン魔法で緊急配信しなさいッ!! 自爆機能と不条理暴走の確率を10倍に跳ね上げるのよ!!」
「あんたバカなのーっ!? そんなことしたら世界中のPDが魔境と化して二度と誰も入れなくなるわよーーーッ!!」
「入れなくて結構!! 『誰も入れない』ことこそが、最高級のステータスなのよーーーーッ!!」
「全社、緊急改修作業に取りかかるわよッ!! バブル崩壊なんて我が社の現場魂で力ずくで巻き返して見せるわ!!」
「ご安全にーーーーーッ!!」
バブル崩壊の絶望的な大暴落すらも、狂気のパラダイムシフトで力ずくで逆転させようと暴走するサクラ社長!
頑張れ、サクラ!
異世界ダンジョンつくって、つくって、ーー
どうなるの?
(『いせダン』第44話・了)




