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異世界ダンジョンつくります!  作者: 桜ジョー


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第4話:人事部発足! モンスターの採用面接


「ハァ……ハァ……ダンジョンは完成したのに、中で働く『従業員(モンスター)』がゼロってどういうことよ!!」

 完成したばかりのピカピカなダンジョンのエントランスで、サクラは頭を抱えて叫んでいた。


(箱「建築」は完璧。罠の仕掛けもバッチリ。だが、冒険者を驚かせるモンスターが一人もいない。これじゃただの「ハイテクなからくり屋敷」だわ)


「社長、ご安心ください。私めが最高の人材……いえ、人『材』ならぬ『魔材』をスカウトできるスペシャリストをお呼びしておきました!」

 マルコスが揉み手しながら呼び寄せたのは、凛とした金髪に羽の生えた兜を被り、ビジネススーツの上から鎧を纏った美しい女性だった。


「元・冒険者ギルド人事統括幹部、ヴァルキリーと申します。サクラ社長、これより『サクラ迷宮建設・第1期モンスター採用面接』を開始します!」


「元・ギルド幹部がなんでうちに!? っていうか面接って何!? モンスターって力づくで手なずけるもんじゃないの!?」


「甘いです社長! 現代のダンジョン経営において、モンスターの労働環境保護と適正配置は必須! 待遇に不満を持ったモグラどもが職場放棄したらどうするのですか!?」


 ヴァルキリーの真剣すぎる眼光に圧され、サクラたちは急遽、事務所に面接会場をセッティングすることになった。

 面接官は社長(サクラ)、人事部長(ヴァルキリー)、現場監督(ゴルドン親方)の3人。


 マルコスは面接官に視線を配り、サクラが頷くと同時にドアを開けた。


「では、志望者1番、お入りください!」


 ズザザーーッ……と、ぬめりけのある音と共に面接室(プレハブ)に入ってきたのは、半透明でプルプル揺れる一匹の緑色のスライムだった。


「面接官の皆さん、初めまして。スライムの『スラりん(仮名)』です。本日はよろしくお願いします」


(喋ったー!? しかも流暢!?)


 サクラが目を見開く中、ヴァルキリーが眉ひとつ動かさずに履歴書に目を落とす。

「スラりんさん。あなたの前職は『野良モンスター(街道での嫌がらせ担当)』ですね。今回、我が社のダンジョン(トラップゾーン配置)に応募した動機を教えてください」


「はい! 野良時代は通りすがりの上級冒険者に一撃で消し飛ばされる毎日で、キャリアプランに限界を感じていました。貴社の『福利厚生完備・労災保険適用』という求人票に惹かれ、安定した職場環境で自分の『酸性溶解液』のスキルを活かしたいと考え志望しました!」


(意識高い系スライム出たーーーっ! 志望動機がリアルすぎるのよ!)


 少々困惑するサクラを横目に平然とするゴルドン親方。

「なるほど。おいスラりん、うちのダンジョンは二階層目が『水没エリア』だ。ふやけて体積が減ったりしねぇか?」


「ご心配なく! 自宅で毎日ぬるま湯に浸かって耐性を鍛えております! 残業も月20時間までなら対応可能です!」


「合格!! 即採用!!」ヴァルキリーがバシッとハンコを押した。


「えっ、いいの!? スライムの残業手当どう計算すんの!?」


(無視かーい!)


 続いて入ってきたのは、カタカタと骨の音を鳴らすスケルトン。

「志望者2番、スケルトンの『骨川(ほねかわ)』です……」


「骨川さん、あなたの希望部署は?」


「はい……できれば『1階層目の最奥の扉前』で、冒険者を絶望させる固定ボス(中ボス)役を希望します……」


「ふむ」とヴァルキリー。「しかし骨川さん、あなたの骨密度測定結果を見ると、カルシウム不足で強度が足りませんね。冒険者の鈍器攻撃一発で粉砕するリスクがありますが?」


「くっ……! それは……前職の暗黒騎士団での給与が低すぎて、煮干しが買えなかったからです! 貴社に入社できたあかつきには、社食の『骨太ミルク』を飲んで骨密度を200%まで引き上げて見せます!」


「うーん、ガッツはあるが即戦力としては厳しいか……」悩むヴァルキリー。


 そこへサクラが身を乗り出した。

「待って! 骨川さん! 逆にその『脆さ』を活かさない!?」


「えっ?」


「冒険者が一撃で殴った瞬間、派手にバラバラに砕け散る『倒されたフリ演技(リアクション)』ができる!? 冒険者に『俺、強くなった!?』って勘違いさせて快感を与える『接待モンスター』として最高じゃない!」


「そ、そんな役割が……!? できます! 昔から劇団員を目指していたので、砕け散る芝居には自信があります!!」


「決まり! 骨川さんは『エンタメ接待部門』として採用!」


「社長素晴らしい! 弱点を強みに変える見事な適正配置です!」ヴァルキリーがメモを走らせる。


 こうして、人事部長ヴァルキリーの厳格(?)な面接により、次々と癖のあるモンスターたちが採用されていった。

 有給休暇を主張するミミック(「宝箱のフタを開けっぱなしで寝たい日もあります」)

 シフト制を希望するドラゴン(「夜間警備は夜勤手当をつけてください」)


「ふぅ……なんとか初期メンバーの採用が完了したわね」

 面接が終わる頃には、サクラの目の下にはクマが……。


 だが、事務所の前にズラリと並んだモンスター社員たちの顔(?)は、どこか晴れやかだった。


「社長! モンスターたちの雇用契約、および社会保険の手続き、完了いたしました!」

 ヴァルキリーがビシッと敬礼する。


 サクラは気を持ち直し、大声で叫ぶ。

「よし! 箱も完成、スタッフも揃った! サクラ迷宮建設プロデュース『絶景&スリル満点・ホワイトダンジョン』、本日ここにグランドオープンよ!!」


「「「おおおおおーーーッ!!」」」(※スライムもプルプル歓声)


 ピンクのヘルメットを被ったサクラのもと、人間、エルフ、ドワーフ、悪魔、そしてモンスターが一体となった「最強のホワイト迷宮建設会社」が、ついに本格始動したのだった!


(第4話・了)

★★★を!

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