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異世界ダンジョンつくります!  作者: 桜ジョー


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第38話:『プロフェッショナル 地下の流儀』

【語り:魔鏡ドキュメンタリー『プロフェッショナル 地下の流儀』】


(画面に映し出されるのは、暗闇に響くツルハシの重い音と、飛び散る岩塩。画面下に字幕——『語り・魔鏡アナウンサー』)


【プロローグ:忍び寄る「安かろう悪かろう」の影】


 王都の富裕層の間で巻き起こった、プライベート・ダンジョン(PD)ブーム。

 しかし、その陰で「参入した競合他社の手抜き工事」による地盤の崩落や、スライムの大量漏洩といった欠陥被害が相次いでいた。


「ただ穴を掘り、モンスターを閉じ込めればいい」——。


 そんな安易な建設が横行する中、ひとつの現場で静かに、そして苛烈に戦う集団があった。


 サクラ迷宮建設。


 今回、彼らに課されたのは、王都の大商人カフ邸における『最高峰VIPプライベート・ダンジョン施工』。


 工期はわずか2週間。地盤は崩れやすい軟弱な魔導粘土層。

 一歩間違えれば、上の大邸宅ごと地下へ沈む極限の現場であった。


【第一章:現場監督・サクラのこだわり】


(作業着の袖をまくり上げ、レーザー測量魔導具を睨みつけるサクラ社長のアップ)


サクラ社長:

「競合が半額で叩き売ってるダンジョン? あれは『穴』よ。ダンジョンじゃないわ。お客様が求めているのは、我が子に引き継げる『真の資産』なの。1ミリの狂いも許さないわよ」


 サクラが求めたのは、100年崩れない耐震魔力壁と、湿気を完全に遮断する極上の地下空間。


 現場に緊張が走る。


 採掘の指揮を執るのは、魔王であり、現在は営業兼・現場副監督のマルコス。


マルコス:

「いいか魔族諸君! サクラ社長のミリ単位の指示から外れることは不敬であり、即ち手直し(残業)を意味する! 魔力壁の充填、急げッ!」


 かつて世界を恐怖に陥れた魔族たちが、ピンクのヘルメットを被り、正確無比な手つきで魔法セメントを塗っていく。

 そこには「悪の威厳」ではなく、「職人の執念」があった。


【第二章:勇者の葛藤と、限界突破】


(地下3階、汗だくで巨大な岩塊を背負う勇者佐藤)


勇者・佐藤:

「昔は剣を振って魔物を倒すのが自分の仕事だと思ってました。でも……今の仕事は、この地下に『安心』という名の強固な柱を打ち立てることなんです」


 佐藤に課された任務は、最深部『VIP温泉フロア』の補強柱の設置。


 突如、軟弱地盤から噴き出した高濃度の魔導水流が現場を襲う。


「崩れるぞ! 退避しろ!」悲鳴が上がる現場。


 その時、佐藤が動いた。


 聖剣を地面に突き立て、全身の聖なる魔力を防護壁へと変換する。


佐藤:

「逃がすかよ……! ここはサクラさんが『最高の現場にする』って決めた場所だぁぁぁッ!!」


 勇者の限界を超えた魔力展開により、水流は一瞬で固化。

 間一髪、現場は守られた。


【第三章:プロフェッショナルとは何か】


 深夜2時。ランタンの灯りの下、完成した地下5階建てのプライベート・ダンジョン。

 地下1階には完璧な温調が施されたワインセラー。

 地下3階には重厚な古代遺跡風の宝物庫。

 そして最深部には、地熱を利用した極上の地下天然温泉。


 施主である大商人カフが、息をのんで完成した空間を見渡す。


カフ:

「す……素晴らしい……! 競合他社の見本とは比べ物に入らん……! これぞ我が一族の誇りだ……!」


 引き渡しを終え、朝日が昇る地上へと戻っていくサクラ迷宮建設のメンバーたち。

 泥とセメントにまみれた作業着のまま、サクラ社長は静かに缶コーヒーを手にとった。


【エピローグ:番組恒例の質問】


(画面が切り替わり、サクラ社長への個別インタビュー)


スタッフ:

「——サクラ社長にとって、『プロフェッショナル』とは?」


 サクラはふっと小さく笑い、ピンクのヘルメットを深く被り直した。


サクラ社長:

「そうね……。『妥協しないこと』……と言いたいけれど、現場じゃそんなの当たり前。

 私にとってのプロフェッショナルは——『建てたダンジョンの前で、胸を張って『ご安全に』と言えるかどうか』……それだけよ」


(画面が暗転し、テーマ曲『Progress』風のドラマチックな音楽が流れる)


 プライベート・ダンジョンとは、ただの穴ではない。

 競合の手抜き工事が横行する中、サクラ迷宮建設は『完全ホワイト・高品質施工』で100年崩れないプライベート・ダンジョンを完成させた。

 サクラ社長の誇りと、仲間たちの汗が織りなす究極の建築美。サクラ迷宮建設のホワイトな挑戦は、どこまでも続いていく——


(画面に全員で爽やかにポーズを決めた【完成記念写真】が映し出される)


……と、誰もが感動に浸ったその瞬間。


 画面の中の勇者佐藤のポケットから、『冒険者ギャルド 領収書(※会社経費扱い)』がハラリと落ちた。


(音楽が「ズコーーーッ!!」と途絶える)


サクラ社長:

「佐藤ぉぉぉぉぉッ!! 『冒険者ギルド』と間違えたフリして『冒険者ギャルド』の経費落としてんじゃないわよーーーーーッ!!」


勇者佐藤:

「ご安全にーーーーーッ!!(脱兎の如く逃走)」


ナレーション(急に早口):

「……サクラ社長のホワイトな理想郷への道は、まだまだ遠いようである」


【画面右下:『プロフェッショナル 地下の流儀』完】


(『いせダン』第38話・完)


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