第35話 国家ダンジョン建設!
「はぁ……ギルド長、ホントに詳細は忘れているようね……」
ヴァルキリーとマルコスは顔を見合わせた。
「行くしかないですね。冒険者ギルドへ」
依頼内容が分からなければ、ダンジョン建設契約どころではない。
「佐藤くん、勇者だからギルドにも顔がきくでしょ。ちょっとギルドまで行ってきて。あなたも営業担当なんだから」
(ヴァルキリーは、ギルドかギャルドか怪しいのよね)
「はい、喜んで!」
勇者佐藤はサクラ社長から託された「見積もりメモ」を胸ポケットに押し込み、冒険者ギルド本部へと足を踏み入れた。
冒険者ギルド受付には、セクハラギルド長に代わって苦労人の表情を浮かべたギルド副長が待っていた。
「やあ、勇者佐藤くん! サクラ迷宮建設からの正式な仕様確認だね? あの高齢のギルド長が適当なことを言ってサクラ社長を怒らせていないか心配だったんだよ……」
「あはは……うちの社長とヴァルキリーさんがバシッと(拳で)対応したので大丈夫です。それで、ギルド長がマルコスに白状した『国家防衛向けダンジョン』の件ですが——」
佐藤くんが見積りのメモをポケットから取り出すと、副長は勇者に詳細を告げた。
「ギルド本部がサクラ迷宮建設に正式発注したかったのは、『国家存亡の危機に備える、対・極大魔獣用 超・高難易度Sランク要塞ダンジョン』だ!」
「何と!」
勇者の叫び声がギルド本部に響き渡った!
「よ、要塞ダンジョン……!? 」
「予算は5000万ゴールド! 階層は全100階層! 最深部には伝説級のモンスターを配置し、国境の防衛線として機能する巨大要塞ダンジョンの建設依頼だ。ギルド長は、ヴァルキリーに会いたかっただけだよ」
(あのジジイ(ギルド長)、どこまで現場を混乱させたら気が済むんだぁぁぁッ!?)
副長は目を輝かせながら佐藤くんの手を握りしめた。
「勇者佐藤くん! 今のサクラ迷宮建設なら、あの三大悪魔や魔族の労働力まで一括手配できると聞いています! この超巨大プロジェクト……サクラ社長なら受けてくれますよね?」
「受けるどころか……『工期半分で終わらせてやるわ!』ってピンクのヘルメット被って大喜びで乗り込んできますよ!」
ギルド長の見当違いなセクハラ発言の裏に隠されていたのは、会社創立以来最大の「超大型国家プロジェクト」であった!
佐藤くんはこの規格外の朗報(という名の地獄の過密施工スケジュール)を社長室で待つサクラに報告するため、新社屋へと引き返していく。
が、疲労とストレスがマックスの勇者佐藤の前に都会の魔物が襲いかかるのであった!
(『いせダン』第35話・了)




