第22話:施工順争奪戦!
「やっぱり同時に4カ所なんてムリに決まってるでしょ!! 施工順はアンタたちで話し合って決めなさい!」
屋上プレハブ社長室で工程表と電卓を叩いたサクラ社長の一言が、まさか世界を揺るがす事態になるとは誰も思っていなかった。
「サクラ様(真の魔王)に一番にダンジョンを作ってもらう=最側近の証明」だと捉えた四大悪魔たちは、一歩も譲らず激突。
武闘派バルバトス領、氷結レヴィア領、お色気アスタロテ領。三つの派閥の巨大勢力が、新本社ビルの敷地前に全軍勢を率いて集結したのである!
「我が武闘派軍団が一番に着工してもらう! 邪魔する奴は粉砕だ!」
「論理的思考が欠如しているわねバルバトス。我が氷結軍の魔導インフラが最優先よ!」
「あら、サクラ様には美しき我がスパ施設が一番お似合いですわ!」
数万の魔物や悪魔たちが、殺気立った武器を構えて完全に三すくみ状態で睨み合う。異世界の天変地異すら起きかねない一触即発の緊張感!
そこへ、屋上プレハブからメガホンを構えたサクラ社長の声が響き渡った。
「ちょっと! なんでそんな大騒ぎしてんのよ! もう面倒だから、じゃんけんで決めなさい!」
「……ジャ……ンケン……とは?」
四大悪魔と数万の軍勢が同時に首をかしげた。
「なによ、じゃんけん知らないの!? グーとチョキとパーで……あーもう、じゃあトランプで決めなさい!」
「……トラ……ンプ……とは?」
「知らないのかい!! もー、何か簡単に順番を決める平和的な方法はないのーっ!?」
サクラが頭を抱えて叫ぶと、ヴァルキリーがハッと手を挙げた。
「社長。この世界の悪魔どもの間で古くから伝わる、揉め事を平和的に解決するための風習『線香花火』を行ってはいかがでしょうか?」
「はぁ?! 線香花火!?」
サクラは目を丸くした。
「ええ。誰の『線香花火』が最後まで残っているかで勝負を決める、もっとも平和的で格調高い勝負事でございます」
(……え? 線香花火……? 浴衣着て、夏の終わりの河原で『あ〜ん、私の消えちゃったぁ〜♡』とか言いながらキャッキャしてやるのか!? この(厳つい悪魔の)3人が!?)
脳裏に浮かんだ絶望的に似合わないキツすぎる絵面に戦慄しつつ、サクラは思わず口に出してツッコんだ。
「そんなの、あるんかい!!」
「ええ、ございます」と真面目に頷くヴァルキリー。
サクラは「はぁ……」と深いため息をつき、異世界にそんな風流(?)で平和な決め手があるならと、一旦は胸を撫で下ろした。
「まあ……殺し合いの戦争をするよりは100倍マシね。じゃあその『線香花火』とやらで順番を決めなさい」
「では、用意いたしました!」
マルコスが、恭しく木箱を抱えてやってきた。
その中から取り出したのは——導線が一本ピロリと出た、真っ赤で太い『ダイナマイトの束』であった。
「……ちょっとマルコス。それ、どう見てもダイナマイトじゃない?」
「え? なに言ってるんですか社長。これが我が悪魔界隈の『線香花火』ですよ」
マルコスは爽やかな営業スマイルで堂々と断言した。
「最後まで残る……つまり『最後まで爆発せずに耐え切った者』が勝者なのです!」
「ダメーーーーーッ!!!! それただの爆破耐久レースじゃないのよーーーーーっ!!」
サクラの制止も虚しく、悪魔たちはダイナマイトの導線に一斉に着火!
ちゅん、ちゅん……と静かに火花が散り——次の瞬間!
一本、また一本と、凄まじい大轟音とともに至近距離でダイナマイトが炸裂していく!!
ドガァァァァァン!!!
「きゃぁぁぁぁぁーーーーーっ!?」
まずアスタロテのダイナマイトが爆発し、お色気悪魔が黒焦げになって吹っ飛ぶ!
ドカァァァァァン!!!
「くっ……凍結が追いつか……ぐわぁぁぁぁーーーーーっ!?」
続いてレヴィアのダイナマイトが炸裂し、冷徹悪魔がアフロヘアーになって倒れる!
ドゴォォォォォン!!!
そして最後の一本——武闘派バルバトスのダイナマイトが、新本社ビルの1階大黒柱の真横で最高潮の超大爆破を起こした!!
ドドドカン!!! ズズズズズズ……ッ!!!
「ハ、ハッハッハ! 見たか……一番最後まで耐えたのは……我が武闘派領地だぁぁぁ……(ドサッ)」
真っ黒焦げのバルバトスが倒れると同時に、地響きのような激しい崩壊音が周囲を包み込んだ。
1階の柱を根元から粉砕された7階建ての超豪華本社ビルが、ゆっくりと斜めに傾ぎ始めていく。
黒焦げになった悪魔たちとマルコス、そして全軍勢が呆然と見上げる中——
「あ……」
倒壊するビルの最上階(屋上)。
ぽつんと乗っかったプレハブ小屋の小窓から、ピンクのヘルメットを被ったサクラが「……え?」と口をぽかんと開けて外を見つめていた。
そのままビルはガラガラガラと派手な音を立てて真下に垂直崩壊!
サクラを乗せたままのプレハブ小屋が、崩れ去る瓦礫の頂上でスーッと真下へと落ちていき、最後にドッシーン!!と地上に叩きつけられた。
静まり返る更地。
ゴトン……(プレハブのドアが開く)
瓦礫の中からプレハブのドアが押し開けられ、中からサクラが這い出てくる。
ピンクのヘルメットを被ったまま、顔を爆煙で真っ黒にしたサクラは、地獄の底から響くような鬼の怒号を解き放った!
「……アンタたち……せっかく建てた自社ビルを……やってくれたわねーーーーーッ!!!」
「ひぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」
サクラの圧倒的な鬼の眼光に、黒焦げの悪魔たちは飛び起き、ガタガタと震え上がるのであった!
その勢いのまま、ぼったくり価格でダンジョン建設契約を悪魔と結べ、サクラ!
どっちが悪魔なのか?!
(『いせダン』第22話・了)
ちょっと◯な画像は、アルファポリスで見てね!
サクラより




