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異世界ダンジョンつくります!  作者: 桜ジョー


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第20話:四大悪魔降臨!

「よしっ! 無事に竣工検査もパスしたし、怪我人もゼロ! 龍王の『深海温泉ダンジョン』、これにて無事に施工完了よーっ!」


極上の『琥珀の湯』から上がり、濡れた髪をタオルで拭きながら、サクラがすっきりと爽やかな笑顔で声を張り上げた。


「ふぅ……いいお湯だったわねエルザ! さあ、現場を綺麗に撤収したら、次はいよいよ我が社の自社ビル(社屋)建設に取りかかるわよ!」


「ええ! ずっとプレハブ仮事務所だったから楽しみだわ、サクラ!」


 エルザと親方が満足そうに工具箱をまとめ始める。

——だが、ただ一人。湯船のふちにある手すりに、半泣きで必死にしがみついている男がいた。


「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だーーーーーッ!! 帰りたくない! 私はこの温泉ダンジョンに永遠に住み着くんだぁぁぁーーーーーッ!!」


 サクラに減給処分と居酒屋『ギャルド』出禁を言い渡されたマルコスである。


「ちょっとマルコス! いい加減にしなさい! 現場の撤収作業の邪魔よ!」


「嫌です社長! ここならギャルドのツケ取りも追ってこないし、新しい自社ビルの資材搬入も手伝わなくて済む! 居心地最高、私の理想郷なんです! 頼むからここで一生引きこもらせてくださいぃぃぃーッ!」


「往生際が悪いわね! ほら、手を離しなさい!」


 サクラがマルコスの腕を引っ張り、不毛な押し問答を繰り広げようとした——まさにその時である!


ズギャギャギャギャギャーーーーーッ!!!!


 突然、深海1000メートルの空間を覆っていた巨大な水圧障壁が激しく裂け、紫色の禍々しい魔力の嵐が吹き荒れた!


「な、なに……!? この凄まじい魔力は……!?」


 エルザが咄嗟に魔導杖を構える。


 切り裂かれた空から颯爽と降り立ったのは、見るからに只者ではない三人の異形——魔王軍の最高幹部『四大悪魔』のうちの三人であった!


「ハッハッハ! ここにいたか『サクラ迷宮建設』!」


 艶やかな衣装で欲望を体現する悪魔・アスタロテ、絶対零度の冷気を纏う氷の悪魔・レヴィア、そして巨大なバトルアックスを背負った悪魔・バルバトス。


 ド派手な着地の衝撃波により、出来上がったばかりの温泉の壁にミシリと亀裂が入った!


「我が主・魔王様より直々の厳命である! 我ら四大悪魔の領地に、それぞれの個性を活かした至高のダンジョンを同時に建設させてもらう! 我らの要求を拒むならば——」


「ちょっとアンタたちーーーーーッ!!!!」


 悪魔たちの威圧的な口上を粉砕したのは、ピンクのヘルメットを被ったサクラの雷鳴のような怒号だった!


「施工完了したばかりの現場に傷をつけないでちょうだい!! どれだけ精密な構造計算をして引渡したと思ってんのよーーーーーっ!!」


 サクラは顔を真っ赤にし、壁に走った亀裂を指さしながら地獄の底から響くような「元・現場監督のドスの利いた圧力」を三大悪魔に叩きつけた!


「この亀裂の箇所! あんたたちが壊したところよ!! 自分たちでしっかり直してもらうわよーーーーーッ!!」


 三大悪魔たちは、言葉を失ってその場で固まった。


 悪魔界の頂点に立つ自分たちに対して一切怯むことなく、即座に怒鳴り散らして補修作業を命じてくる圧倒的な眼光。そして何より、可憐な見た目の裏から津波のように押し寄せてくる「数々の死線を修羅場としてねじ伏せてきた真の覇者特有の圧倒的威圧感(違和感)」。


(な……なんだ、この者は……!? 自身の莫大な魔力を覆い隠し相手を油断させるための神級の擬態……! そして身体の奥底から溢れ出る、絶対的な支配者の風格……!)


 アスタロテ、レヴィア、バルバトスの脳裏に、電撃のような閃きが走った。


(……間違いない。400年間誰も顔を見たことがなかった我らが主……姿を隠されていた真の魔王様……このお方のことだったのだーーーーーッ!!!)


 ドッサァァァァァッ……!!


 三大悪魔は一斉にその場に膝をつき、サクラ社長に向かって深く頭を垂れた!


「お、お赦しください魔王・サクラ様……! 我ら四大悪魔、貴方様のお姿を拝見できず、大変な不敬を……!」


「……はい?」サクラがポカンと口を開ける。


「ちょっと待ちなさい! 誰が魔王よ! 私はサクラ迷宮建設の社長よ!」


「フッ……お戯れを。我らを一瞬で平伏させるその絶対的な威圧感……隠さずとも分かります! 貴方様こそが、我らが追い求めた真の主!」


 その時、アスタロテが、サクラの足元で小さくなって震えている男に目を留めた。


「……あら? そこにおられるのは……我らに『魔王様からのダンジョン建設指令』を伝えに来られた、我が四大悪魔の同僚……知性の悪魔・マルコス殿ではありませんか!?」


 アスタロテの言葉に、サクラの足元にいたマルコスが「ギクッ!」と肩を揺らした。


 ヤバいッ!と思いながらも、マルコスは威厳と知性溢れる雰囲気を醸し出しながらすっと立ち上がった。


「ふっ……社長には正体を隠し通したかったのですが……致し方ありませんね。実は、四大悪魔の筆頭にして知性担当……それがこの私なのです!」


 バッとポーズを決めるマルコス。


 しかし、サクラは冷ややかな目でマルコスを一瞥すると、パシッと手を払った。


「はいはい、またまた〜。冗談言ってないで撤収作業を手伝いなさい。あんたが四大悪魔筆頭なわけないでしょ」


「えっ!? ちょ、本当ですって社長! 私が四大悪魔の筆頭、マルコスですよ!? 疑うならこの知性溢れるオーラを——」


「いいからダンボールまとめて!」


「ひえぇぇっ! す、すぐやりますぅ!」


 サクラ社長にあっさりとあしらわれ、半泣きであたふたと段ボールを拾い集めるマルコス。


 その光景を目撃した三大悪魔の全身に、激しい戦慄が走った!


(バルバトス:なんということだ……! 我らに魔王様の指令を伝達してきたあの冷徹かつ傲岸不遜な四大悪魔の筆頭・マルコス殿が、一瞬で威厳を打ち砕かれ、パシリのように顎で使われている……!)


(レヴィア:マルコス殿すら手玉に取り、従順な下僕として支配しておられる……。サクラ様こそが、我ら悪魔の頂点に立つ絶対無二の『真の魔王様』に間違いないわ……!)


(アスタロテ:恐ろしいお方……! 我らを競わせ、最高のダンジョンを作らせようというご意向なのですわね……!)


 完全に勘違いを確信した三大悪魔は、サクラ社長に向かって再び深くひれ伏した!


「サクラ様! 我ら四大悪魔、各々の領地にて至高のダンジョンを作り上げ、貴方様のご期待に応えて見せます!」


 意気揚々と燃え上がる悪魔たちに対し、サクラはピンクのヘルメットを被り直し、パンパンッとメガホンを威勢よく叩いた。


「何度も言うけど誰が魔王よ! でも、施工の発注は大歓迎よ! ……だけどその前に!!」


 サクラは威風堂々と胸を張り、ドスの利いた現場監督の声で言い放った!


「まずはウチの社屋(自社ビル)を建てるわよーーーーーッ!!」


 三大悪魔も、あたふたしていたマルコスも、派手にズッコケて深海の床へ崩れ落ちた!


「ちょっと社長ぉぉぉーっ!? ダンジョン建設より自社ビル優先ですかーーー!?」


「当たり前でしょ! マルコス。ギャルドにいたあなたと違って、ずっとプレハブの仮事務所で図面引いてたのよ! 自社の安全な労働環境を確保しないで、何が他人のダンジョン施工よ! 現場の基本はまず足元(自社)から!!」


「そんなぁぁぁーっ!? 我らのダンジョン建設はーーー!」


「社屋の基礎工事が終わるまでお預けよ! 三大悪魔もマルコスも、全員ヘルメット被って壁の補修と資材の搬入を手伝いなさい! 現場は安全第一よ。――ご安全に!」


「ご、ご安全にーーーーーっ!」


 こうして、三大悪魔とマルコスは、ダンジョンのコンペを始める前に、まず自分たちの壊した壁の補修と「サクラ迷宮建設の自社ビル建設作業(荷揚げ)」へと駆り出される羽目になったのである。


 ーーサクラはこの時まだ気がついていない。スキル『施工管理』の威力がチート級になっていることに!


 サクラ、魔王になるのか?!


(『いせダン』第20話・完)



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