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異世界ダンジョンつくります!  作者: 桜ジョー


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第14話:現場からのSOS!

「はぁ……なんで私が自社の敷地でキャンプ(野営)しなきゃいけないのよ……」


 秋風が吹き抜ける更地。


 倒壊したプレハブ事務所の跡地にポツンと張られたパイプテントの中で、サクラ社長はワーキャマン作業着のまま長机に頬杖をついていた。


 目の前にはポータブル魔法鏡(モニター)と、簡易型の現場用無線機。


 そこへ、画面の向こうから天界の眩しい雲をバックにしたジョージーの顔が映し出された。


『サクラ社長ぉぉーッ! 天界からの定期報告です! ……って、あれ? 社長、背景がパイプテントとブルーシートに見えるのですが、事務所はどちらへ……?』


『ガハハハ! おいおい社長、ついに社長室も現場主義をこじらせて野外プレイか!?』


 続いて映し出されたのは、ダイバースーツを着て深海の泡をプクプクと打ち上げているゴルドン親方のドアップだった。


「ツッコミを入れるなーーーっ!! 昨日あんたらが出発した直後に事務所が老朽化で全壊したのよ!!」


『『全壊ーーーッ!?』』


 二人が口を揃えて驚愕する中、サクラはハッと周囲を見回した。


「……ちょっと待ちなさい。マルコスは? マルコスはどこに行ったの!?」


 すると、ジョージーの横からヴァルキリーがすっと画面に割り込み、人事手帳(魔法端末)を指でスワイプしながら、無機質な声で報告を始めた。


『マルコスなら、営業活動と称して昨夜から外出していますね。念のため位置情報を追跡していますが……今のところずっと一箇所に止まっている様子です。……あっ! 冒険者ギャルド(ガールズバー)ですね』


『さすがマルコスさん! 徹夜で過酷な(?)営業活動ですね!』


「感心してんじゃないわよジョージー!! なにが営業活動よ、自分の酒代と指名料を会社の経費で落とす気満々じゃないのあいつはーーーっ!!」


 頭を抱えて絶叫するサクラ。しかし、いつまでも怒していても崩れた事務所は建ち直らない。


 サクラは深呼吸をしてパンッと自分の頬を叩くと、魔法鏡に向かってキリッと現場監督の顔になった。


「……ハァ、あいつの処罰は帰ってきたら給料半額カット&現場作業100時間ペナルティにするとして! で、肝心のふたつの現場(現地調査)はどんな感じなのよ!?」


 サクラが問いかけると、画面の向こうでゴルドン親方が参ったように太い腕を組んだ。

 

『おう社長……ぶっちゃけ、こっちの『海底迷宮』は完全に手詰まりだ。深海1000メートルの海底火山地帯でな、凄まじい水圧と熱湯で現場の環境が苛烈すぎる』


「えっ……親方の腕とエルザのデザインをもってしてもダメなの!?」


 すると、画面の奥からダイバースーツ姿で髪を振り乱したエルザが強引に割り込んできた!


『無理に決まってるでしょバカ!! 水圧で図面は潰れるし、熱気で集中力は切れるし……何より、サクラのスキルがないと現場が回らないのよ!!』


「……私のスキル?」


『そうだよ社長!』と親方も画面越しに頷く。


『俺たちの技術や魔法がどれだけあっても、全体を統率して現場の環境や安全を最適化する社長の固有スキル『施工管理』が無きゃ、この極限現場じゃ何ひとつ進まねえんだよ!』


『……そうよ』とエルザは真っ赤になりながらそっぽを向いた。


『現場の安全確保と工程の最適化はサクラの仕事でしょ……!? サクラの『施工管理』で現場の環境を整えてくれないと、私、デザインなんて絶対描けないんだから! ……だから、今すぐこっちに来なさいよ!』


(二人とも……文句を言いながらも、私をそこまで信頼してくれてるのね)


 サクラは胸を熱くしつつ、現場監督としてのスイッチを完全に切り替えた。


「頼りにされたら断れないわね! 現場環境の安全確保は現場監督の責任! 今すぐワーキャマン特製の『超高圧耐性・熱狂遮断作業服』と『施工管理』スキルを引っ提げて、海底現場へ急行するわ!」


 すると、天界の画面からジョージーが必死の形相で割り込んでくる。


『えぇぇぇーッ!? 社長、海底に行っちゃうんですか!? 天界の空中浮遊ダンジョンだって無重力で資材が散乱して大変なんです! 僕もサクラ社長の『施工管理』が欲しいですーーーッ!』


「ジョージーたちは元公務員と人事部長でしょ! 知恵を絞って自力で一時しのぎしなさい! ヴァルキリー、ジョージーを頼んだわよ!」


『了解しました。ジョージー支店長には無重力耐性訓練として、雲の上から100本ノックを実施します』


『ぎゃぁぁぁーッ!? ヴァルキリーさん容赦なさすぎるーッ! サクラ社長ぉぉーッ!!』


 ジョージーの絶叫を通信オフでぶった斬り、サクラは更地のテントから勢いよく立ち上がった。


「よし! 現場へ向かうわよ! ……あ、そうだった」


 サクラは一旦立ち止まり、冒険者ギャルド(ガールズバー)の方角をキッと睨みつけた。


「まずはギャルドに殴り込んで、マルコスを首根っこ掴んで海底現場に連行(現場労働)発注ね!!」


 パイプテントをあとに、ピンクの安全ヘルメットをかぶり直したサクラ社長の突撃が、再び始まるのだった!


(『いせダン』第14話・了)

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