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異世界ダンジョンつくります!  作者: 桜ジョー


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第13話:踊る幹部会議!

「というわけで、会社初の公式幹部会議を開きます! 議題は『海底迷宮』と『空中浮遊ダンジョン』、どちらを優先施工すべきか! です!」


 プレハブ事務所の中央に持ち込まれた長机。秘書兼営業のマルコスがホワイトボードに大きく文字を書き殴った。


「ちょっとマルコス、狭いプレハブにそんなデカいテーブル持ち込まないでよ! ギチギチじゃないの!」


 サクラ社長のツッコミも虚しく、会議は開幕から大脱線・大混迷を極めた。


「サクラ社長! 空中浮遊ダンジョン案件なら天界の実家とコネが使えます! 僕を同行させてくだされば、二人きりで雲の上のロマンチックな現地調査が——」


「ガハハハ! 男なら海だ! 水圧で潰れそうな極限現場に男の浪漫があるんだよ!」


「嫌よ! 海底なんて湿気で髪が広がるし、全体的にジメジメして映えないじゃない! 私は空中一択!」


「私の人事部長権限で『空中勤務手当』と『雲の上露天風呂』の設置を可決します」


「全員勝手なこと言ってんじゃないわよーーーっ!! そもそも一度に二つの大型案件なんて受けるの無理に決まってんでしょ!!」


 バンバンと机を叩くサクラ。しかしマルコスが眩しい営業スマイルで爽やかに告げた。


「大丈夫です社長。先方(龍王&天界)から『今週中に現地調査(ロケハン)に来てくれないと他社に頼む』と言われましたので、チームを二手に分ければ解決です!」


「解決してない! 現場の人間が分断されるじゃないのよ!」


 サクラが頭を抱える中、マルコスはテキパキと班分けを発表し始めた。


「まず、天界の空中浮遊ダンジョンへは、元天界公務員のジョージー支店長と、天界の地理に詳しいヴァルキリー人事部長に向かってもらいます!」


「嫌だぁぁぁーッ! 僕はサクラ社長と離れたくないーッ! 支店長勤務から戻ってきたばかりなのに、また遠距離遠征なんて死んじゃうーッ!」


 泣き叫ぶジョージーの首ねっこを、ゴルドン親方がガシッと掴み上げる。


「がはは! ジョージー、天界でしっかり資材の事前手配をしてこい! で、俺はどこに行けばいいんだ?」


「親方とエルザさんには、龍王の海底迷宮へ向かってもらいます!」


「ちょっと待ちなさいよ!」


 腕を組んでプイッと横を向いたのは建築デザイナーのエルザだった。


「私、言ったわよね? 海底なんてデザインが難しすぎるし、ジメジメして嫌だって! 私は絶対に行かないわよ!」


 テコでも動かない姿勢を見せるエルザ。ここでサクラ社長がすっと立ち上がり、エルザの手を優しく握りしめた。


「……エルザ」


「な、なによ急に……」


「海底迷宮のデザインって、光の届かない暗闇で、複雑な水圧計算と幻想的な美しさを両立させなきゃいけない……世界で一番難しいデザインなのよ。正真正銘の『天才建築デザイナー』にしか、絶対に描けないわ」


「……! ま、まあ? 確かに簡単な仕事ではないわね……」


「私、エルザ以外の人が描いた海底ダンジョンなんて見たくないの。……お願い、エルザ。我が社の天才デザイナーの力を、龍王に見せつけてきてくれないかしら?」


 サクラが潤んだ瞳で見つめると、エルザは真っ赤になってそっぽを向いた。


「な、なら……サクラがそこまで言うなら、行ってあげるわよ! 別にサクラのために行くわけじゃないんだからね! 私の天才的なデザインを見せつけてあげるだけなんだから!」


(よしっ! チョロいわ!)


 サクラは心の中でガッツポーズを決めた。


 こうして、ジョージー&ヴァルキリーの天界組、親方&エルザの海底組がそれぞれ現地調査へと旅立っていった。


 数時間後。


 静まり返ったプレハブ事務所。

 サクラは現場デスクで温かいお茶をすすり、魔法鏡(モニター)を眺めていた。


「ふぅ……みんな出かけて、久しぶりに静かになったわね……。事務所で待機しながら指示を出すだけなんて、私、本当に『社長』っぽいじゃない……」


 魔法鏡には、天界の雲の上でジョージーが「サクラ社長ぉぉーッ!」と叫んでいる姿と、海底でダイバースーツを着た親方とエルザが潜水調査をしている映像が映っている。


「現地報告も順調そうだし、明日は本当に温泉に行けるかも……」


 サクラがほっと一息をつき、お茶を口に含んだその時だった。


 メリメリメリ……ッ!


「……ん?」


 ミシミシミシバキバキッ!!


 事務所の天井からサラサラと砂ボコリが落ちてきた。壁の鉄板が歪み、床が大きく傾き始める!


「え……? ちょっと……え!?」


 マルコスが、傾く床でペンの書類整理をしながら淡々と呟いた。


「あ、そういえば社長。このプレハブ事務所、創業以来、一度も地盤補強も耐震改修もしていませんでしたね」


「なんで今それを言うのよーーーっ!!? 自社の事務所の手抜き工事かーい!!」


 ドガッシャァァァァンッ!!!


「きゃあぁぁぁぁーーーっ!!」


 これまで数々の現場の修羅場をくぐり抜けてきたサクラ迷宮建設のプレハブ事務所は、社長の絶叫とともに見事なまでに全崩壊したのだった。


「ふぅ……やはり『自社の改修工事』を一番に議題に挙げるべきでしたね」


 瓦礫の中からひょっこり顔を出したマルコスが、何事もなかったかのように爽やかに書類をバインダーに挟み直す。


 その横の瓦礫の山が崩れ、ピンクの安全ヘルメットを斜めにかぶったサクラが、ワーキャマン作業着姿でズバッと這い出してきた!

全身粉塵まみれのサクラは、空を仰いで腹の底から叫んだ。


「もーイヤーーーーーっ!!!!(泣)」


(『いせダン)』第12話・了)

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