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異世界ダンジョンつくります!  作者: 桜ジョー


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第9話 新兵器はヘルメット

「いいこと、みんな! 建築現場において、何よりも優先されるべきは『安全』よ!!」


 朝礼のプレハブ事務所。サクラ社長はホワイトボードに、赤文字でデカデカと『安全第一』と書き殴った。


「ブラック建設ギルドのような悪徳業者がいつどんな形で嫌がらせをしてくるか分からないわ! 現場(ダンジョン)は常に危険と隣り合わせなの! そこで親方、例のブツは出来た!?」


 サクラに振られ、腕組みをしたゴルドン親方が豪快に胸を張った。


「おうよ社長! ドワーフ族の秘伝製法とエルザの古代魔法を融合させた、現場革命の最高傑作……『超耐性魔法安全ヘルメット(通称:ピンク・ジャスティス型)』の完成だ!!」


 親方が作業台の布をバッと取り払うと、そこには——怪しくピンク色にド派手に輝く、一見すると何の変哲もない現場用ヘルメットが鎮座していた。


「……親方、見た目がただの私のいつものヘルメットなんだけど?」


「ハハハ! 見た目に騙されるなよ社長! こいつは表面に『魔力反発コーティング』が施されていてな、上級魔法の直撃にも耐えられる優れものだ! だが……現場に導入する前に、厳重な【安全性能試験】を行わなきゃならねぇ!」


 こうして、事務所の裏庭で前代未聞の「ヘルメット耐久実証テスト」が執り行われることとなった。


 木製の被験用マネキンに新兵器のピンクヘルメットを被せ、社員たちが取り囲む。


「ではテスト第一段階! 物理耐性試験!」

 ゴルドン親方が巨大なバトルハンマーをブンブンと振り回し、マネキンの頭部へ全力で振り下ろした。


 ドゴォォォォン!!


 激しい衝撃波と共に地面が割れ、粉塵が舞い散る。

 煙が晴れると……ヘルメットは傷ひとつなくピカピカの輝きを保っていた。


 しかし、ヘルメットの下のマネキンの胴体は、木くずとなって木端微塵に粉砕されていた。


「……親方。ヘルメットは無傷だけど、マネキン(首から下)が消滅してるわよ?」


「がハハ! 首から下はノーガードだからな!よし、気を取り直して別のマネキンでテスト第二段階だ! エルザ、魔法耐性試験!」


「任せなさい! 『極大火炎爆発魔法(エクスプロージョン)』!!」


 ズガガガガガーンッ!!


 至近距離で爆発が巻き起こり、裏庭が焦土と化す。


 爆風が去ると、地面にぽつんと傷ひとつないピンクのヘルメットだけが落ちていた。マネキンは灰すら残らず消し飛んでいる。


「ヘルメットが無傷でも! 中身が命落としたら意味ないでしょうがーーーっ!!」


 サクラの絶叫が響く中、ゴルドン親方とエルザは顔を見合わせた。


「なるほど……頭だけ守ってもダメということか。ならば話は早い!」


 親方が拳を打ち鳴らす。


「頭が大丈夫なら、次は全身を守る『超耐性・魔法安全作業着(つなぎ)』を開発すればいいんだ!!」


「そうよ! 私の古代織物魔法で、どんな爆風も防ぐ最強の作業服を縫い上げてあげるわ!」


「待って! 盛り上がってるところ申し訳ないんだけど——」


 サクラは後ろに控えている社員(モンスター)たちを指さした。


「スライムのスラりん(流動体)に作業着着せたら、隙間から全部でろーんと漏れ出るでしょ!? スケルトンの骨川さんは細すぎて袖がガバガバだし、ミミックに至ってはただの箱じゃない!! そもそもヘルメット被って作業着羽織ったモンスターって何なのよ!! カオスすぎるでしょ!!」


「社長、見た目より安全です!」と骨川がガタガタと袖を揺らす。


「ボク、すっぽんぽんなので作業着ほしいです!」とスラりんも主張する。


「スラりんは最初からすっぽんぽんとか以前に服の概念がないでしょうがーーーっ!!」


 サクラのツッコミが冴え渡る中、現場は収拾のつかない大爆笑の混乱に陥った。


——と、その時だった。


 マルコスの魔法鏡がピコンと緊急通信を告げた。


『緊急ニュースをお伝えします』

 画面に映し出されたのは、先日営業停止処分を受けたはずの「ブラック建設ギルド」の本部前だった。

『営業停止中であるはずのブラック建設ギルドですが、本日、謎の「新興投資ファンド」から巨額の買収資金を獲得。グループ名を【暗黒ダンジョンホールディングス】と改め、事業を再開することが発表されました』

画面には、高級そうな漆黒のスーツに身を包んだ、冷徹な目つきの男が映し出された。

『我が社は効率と利益を最優先する。職人の安全? ホワイトな環境? くだらん。ダンジョンは金を生むマシンだ。サクラ迷宮建設のような甘い素人業者は、徹底的に叩き潰して市場から排除する』

 画面の向こうで冷笑を浮かべるライバル企業の代表。

 

 サクラは灰まみれの裏庭で粉々になったマネキンを見つめ、ヘルメットを強く握りしめた。


「……ふざけたことを言ってくれるじゃない。職人の命も現場の安全も無視して『効率』だなんて……!」


「社長……あいつら、業界全体の施工単価を破壊する勢いで低価格攻勢を仕掛けてくる気ですよ」


 マルコスが目を光らせ、低く囁く。

 サクラは勢いよくピンクの安全ヘルメットを頭に被り、あご紐をカチッと固く締め直した。

「上等じゃない! 綺麗なおべっかと札束で現場が回ると思ったら大間違いよ! マネキンは砕け散ったけど、うちの職人魂は絶対に折れないんだから! かかって来なさい、【暗黒ダンジョンホールディングス】!!」


「「「おおおおおーーーッ!!」」」

(※スラりんもデロデロ大歓声)


 サクラ迷宮建設の技術開発(と迷走)の裏で、復讐に燃えるライバル企業の影が忍び寄る。


 業界の覇権と「現場のプライド」をかけた、真の決戦の火蓋が切られようとしていた。


(第9話・了)

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