表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
85/95

新任教師の秘密㉒

 静かな部室に響く吐息。唇と唇を重ね合わせる、湿り気のある音。どれもこれも、放課後の高校で聞いていい音ではない。


 宇崎と前田がようやく体を離したのは、塩井が帰ってから20分後だった。思ったよりも長く、最初のうちは楽しんでいた岩崎もとうに飽きた様子だ。


 「やっと終わったか。あと5分続いたらしばいてやめさせるとこやったわ」


 始まった時は宇崎が押し倒す形だったが、いつの間にか逆転しており、前田が馬乗りになっていた。さすがに服を脱ぐような事はなかったが、着衣のままとはいえ業務時間内に、しかも生徒の前で肌を重ね合わせるなど教師として言語道断だ。だがそれを咎めるほど、香月もデリカシーのない人間ではない。満足そうな2人の間に割って入るのは憚られる。

 

 「葵が秘密を話してくれたから、私も隠してたこと全部言うよ」


 「えっ、恵ちゃんも何か隠し事があったの?」


 「うん。実は…」


 宇崎は覚悟を決めた顔で、前田を見上げた。中性的でカッコいいと人気の顔立ちの良さを、そんな場面で無駄に使わないで欲しい。


 「ストーキングしてたんだ。葵を」


 うわ、言った。ついに言いやがった。香月は天を仰いだ。


 「へ…?」


 前田がぽかんと口を開け、言葉を失った。恋人がストーカーで、しかもその対象が自分。驚くのも無理はない。驚くというかドン引きだろう。


 「やばいよね、私。昨日も葵のこと、家まで尾けてたんだ」


 コンビニ前の灰皿に前田が捨てた吸い殻を一瞬拾おうとしたこと。前田が棚に戻したおにぎりをわざわざ購入していたこと。思い返せばどの行動も異常だ。


 「キモイならキモイって言ってくれ。私が変態なのが悪いんだから、何を言われても受け入れる」


 一応自覚はあるようだ。


 「宇崎先生、ずるない?さっき前田先生が本性見せたタイミングで、自分も秘密ばらしとけばよかったのにさあ。やることやってから暴露するとか、なんかモヤモヤするわ」


 「確かにあの時に言っておけば、あおいこって感じで済みましたよね。今言うから変な感じになっちゃってますし」


 秘密を話せば前田に突き放されるリスクも考慮して、最後になるかもしれないまぐわいを先に楽しんだのだろう。実にずるい考えだ。


 「そっか、ストーキング…。うん、そうなんだ」


 前田は恋人から告げられた事実を確かめるように、何度もストーキングという言葉を呟いている。


 「葵…、ごめん」


 「嬉しい」


 「え?」


 「恵ちゃん、私嬉しいよ。そんなに私のこと、愛してくれてたなんて!」


 前田が宇崎の手を取り、潤んだ瞳で見つめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ