新任教師の秘密⑲
「嘘だ」
宇崎は水を吸った下着を前田からひったくり、目の前で広げた。水滴が部室の床にぽたぽたと滴り落ちる。
「だって、こんなの私の前では履いてないじゃん」
「恵ちゃんの中の私に対するイメージを崩したくなくて。会うときはいつも大人しい色とデザインのやつを選んでたの」
前田のイメージといえば、ゆるふわ系で守ってあげたくなるようなひ弱な女性。多くの生徒たちがそう思っているはずだ。香月だってつい昨日まではそうだった。タールの重たいタバコを吸っている姿を見るまでは。
「なに…?今までキャラ作ってたの…?」
下着を持つ宇崎の手がわなわなと震えている。
その質問に対する前田の答えは、「ごめん」という一言だった。
「おー、なんやおもろい事になってきたやんか。前田先生の裏の顔、気になるわ」
「岩崎先輩、茶化したらダメですって。見てくださいよ、宇崎先生のあの顔。魂抜けてますよ」
「ほんまや。えらいショックやったんやろな」
目の焦点が合っているのかいないのか、宇崎の顔は普段の快活な雰囲気を完全に失っていた。ボコボコに殴られて失神する直前みたいだ。
「恵ちゃんを騙す気は無かったの。それは信じて。でも告白されてからずっと悩んでた。恵ちゃんが私に求めてるのって、本当の私と全然違うキャラなんだって」
「本当の、葵?」
昨晩の煙草の件を思い出したのだろう。宇崎が前田に掴みかかり、胸ポケットをまさぐりだした。
「め、恵ちゃん⁉やめて、こんなところで!生徒さんも見てるのに!」
「どこだよ」
「え?」
「吸うんだろ、煙草」
「なんで知って…」
「どこに隠してる!」
気が動転した宇崎は、そんなところにあるはずもないのに、前田のブラウスのボタンを外して中に手を入れた。
「うわあ、お盛んやなあ」
「やばいですって、岩崎先輩、止めてくださいよ!」
「ええやん、おもろいからしばらく見とこや」
あれよあれよと前田はブラウスを脱がされた。彼女の柔肌を包んでいる下着の色は、今日は赤ではない。
「黒やん」
「黒ですね」
「エロいな」




