新任教師の秘密⑰
「ん、前田先生。どうしましたか。そんな青ざめた顔をして」
そりゃ青くもなるだろう。生徒が自分の下着でずぶぬれの髪を拭いているのだから。
「そ、その、塩井さんが持ってるそれ…」
「これですか。岩崎から借りたハンカチですが」
塩井はそれをハンカチだと信じて疑っていない。水滴が目に入ったせいで半目になっているので、ろくに見えていないのだろうが、それにしても感触とかで分からないものだろうか。
「あのですね、塩井さん。昨日私、ベランダに干してた下着が一枚、なくなっちゃったんです」
「そうですか。それは災難でしたね。また買えばいいと思います」
心底興味のない話題を振られたときの塩井の反応だ。まるで会話を続ける気がない。
「ち、違くて。その下着、アパートの外に落ちちゃったんです。急いで取りに行ったんですけど、どこにも見当たらなくて…」
「へえ」
前田が話している間にも、塩井の髪の水分を吸って、下着が重たくなっていく。
「塩井さんが持ってるそれ…、私の下着じゃないですか?」
「ははっ、まさか。どうして私が先生の下着を持ってるんです。そもそもベランダから落ちたという話が本当なら、私が下着を手に入れるためには昨日、先生の家の前にいなくてはいけない。あいにく私は昨晩、家から一歩も出てないんですよ」
「で、でもそれ」
「先生がこんなことを言ってるが…、岩崎、これはハンカチだろう?」
「ちゃうで。パンツや」
「は?」
「よう見てみい。エロい柄のパンツやろ」
塩井は自分の手に握られた布を、目を細めて見た。
「どういうことだ。パンツじゃないか」
「誤解せんでな。それ拾ったのウチちゃうし。香月や」
「か、香月さん⁉え、どういうことですか?」
前田が今まで聞いた中で一番大きな声を出して、香月に駆け寄ってきた。
岩崎は面白そうにケラケラ笑っている。
「あのですね、説明すると長くなるんですが…」




