新任教師の秘密⑯
ストーカーをストーキングした結果、得られたのは証拠写真と被害者の下着だった。そして失ったのは、宇崎という一人の教師への信頼だ。もう信じることは出来ない。あの変態め。
現代アート部の部室で昨夜の尾行について岩崎に話し、例の赤の下着を広げて見せた。
「返してあげえや。先生困るやろ」
「なんて言って返すんですか。私たちが家の前にいたこともばれちゃいますし」
「まーそれもそっか。けどほんまびっくりやな。宇崎先生って生徒からの人気もあるし、結構女子からもモテてんねんで。ウチが言うのもなんやけど、ボーイッシュな感じやん。ああいうの好きな子多いねんて」
「岩崎先輩のファンクラブもありますからね。非公式ですけど」
「あれほんまやめてほしいわ。恥ずかしいやんか」
岩崎と宇崎は、ボーイッシュで快活なところが共通している。なんとなく雰囲気も似ているところがあるので、岩崎は親近感を覚えていたのかもしれない。その分、宇崎の正体が変態ストーカーだと分かってショックも大きいだろう。
「こんなもん学校に知られたら、絶対辞めさせられるで。危険人物やもん」
「ていうか異常性癖ですよね。普通のストーカーならまだしも、恋人相手にプライベートの詮索目的でって。ちょっと理解できません」
「恋人が自分に隠してる部分を見たいっていう欲望なんやろうなあ。その結果、見たくない部分も見えてもうたんやろ?前田先生が煙草吸うのなんか想像つかへんもん」
「あれは私もびっくりでしたねえ」
岩崎に昨日の出来事をあらかた話し終えたところで、塩井が部室に入ってきた。なぜか髪の毛がびちゃびちゃに濡れて、肌に貼りついている。
「なんで濡れてんですか」
「道具を洗ってたら蛇口が暴発してな」
「そんなことあります?」
「この学校の設備は老朽化してる。香月も気をつけたほうがいいぞ。ところで何か拭くものを持ってないか?」
「あ、はい。ハンカチならありますけど」
「ちょい待ち。香月、さっきの下着貸して」
ハンカチを取り出そうとした香月から、岩崎が前田の下着を奪った。それをハンカチに見えるように折り畳み、塩井に手渡す。
「ああ、すまないな。ちょっと借りるよ」
教師の下着で頭を拭く生徒。なんとも奇妙な光景だ。
「し、塩井さん、それ…」
聞き覚えのある、か細い声がした。




