表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/92

新任教師の秘密⑭

 宇崎が小さな悲鳴を上げた。手に持っていたシーチキンおにぎりを取り落とし、膝から崩れ落ちていく。


 「会長、125番っていうのは」


 「タバコの番号ですね」

 

 前田が煙草を購入した。あのひ弱で、蚊の鳴くような声で喋る前田が。育ちの良さがにじみ出ており、悪い事など一つもしてこなかった、というような顔で生きている前田が。煙草を買っている。


 「う、嘘だ…」


 宇崎がショックを受けているところを見るに、恋人の前では喫煙者だという事を隠していたのだろう。


 「宇崎先生、めちゃくちゃ落ち込んでますね」


 「世の中は喫煙者に対して風当りが強いですし、特に女性となるとイメージが悪いでしょう。別に吸う吸わないは個人の勝手ですが、宇崎先生としては彼女に吸ってほしくなかったみたいですね」


 前田が煙草を吸っている様子は想像がつかない。香月の中で、ゆるふわ系の人は喫煙と無縁という偏見があった。


 「いや待て待て、男か?男の線もあるな」


 宇崎が酒のコーナーで立ち止まり、ブツブツ言い始めた。


 「前に付き合ってた男の趣味とか。そうだ、そういうのよく聞くじゃん。彼氏の影響で吸い始めるとかさ。え、待って。そういう男と付き合ってたってこと?葵って彼氏いたことないって言ってたのに、それ嘘だったってこと?私が初めてじゃないの?」

 

 周りの客が宇崎を避けて通っていく。宇崎のせいでこの店の酒の売り上げが落ちそうだ。


 「前の男っていうか、実は前田先生に今彼氏がいるってパターンもあるんじゃないですか?」


 「ほう、二股ですか。それはそれで妄想が捗りますね」


 「あっ、それか誰かに頼まれて買っただけとか」


 もしそうなら一番平和的に解決したはずだ。しかし前田はコンビニを出るなり、店の前の喫煙所で足を止めた。


「あっ…」

 

 香月と同じ希望を抱いていたらしい宇崎が、再び崩れ落ちた。


 「…吸ってますね」


 「前田先生が喫煙者であることはこれで確定。私も詳しくはないですが、おそらく結構重たいやつかと」


 「会長ももしかして喫煙者…?」

 

 「父親が吸ってるんですよ。今は銘柄が変わりましたが、前田先生が買ったのは父親が昔に吸っていたのと同じ。臭いもきついし、肺にガツンとくるやつだと父が言っていました」


 せめて若い女性に人気の銘柄であれば救いがあったが、前田は結構な愛煙家のようだ。


 店内から恋人の喫煙シーンを見つめる宇崎。その情けない教師の姿を、香月と深川は後ろから見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ