新任教師の秘密⑫
「なるほど、宇崎先生がストーキングを。それはそれは…」
「お願いだから、私が言ったって言わないで下さいよ」
「安心してください。事を荒立てるつもりはありません」
そう言いつつ、深川はしきりにメモ帳にペンを走らせている。香月の発言を記録して、学校側に報告するつもりではないのか。
いぶかし気な視線に気づいた深川が、メモ帳をパタンと閉じた。
「これは漫画のネタにするために書いているだけですよ」
「会長は先輩をモデルにした漫画を描いてるんじゃないですか」
「それはもちろん。ですが一本の作品だけで勝負できるほど甘い世界ではありません。私のようなアマチュアとも呼べないずぶの素人は、とにかく数多く作品を生み出して世に出すチャンスを掴まないと。いいじゃないですか。新任教師2人の甘い恋愛。そこへストーキングという危険な要素がスパイスとして足され、スリリングな雰囲気に」
先生たちの関係を口外しないとは言っているが、漫画にしないとは言っていない。深川に知られた時点で、ある意味詰んでいる。
「しかし生徒の模範となるべき教師ともあろう方が、ストーカー行為に手を染めるとは。にわかには信じられませんね」
「若居のおっさんがストーカーしてるとかならまだ分かるんですけど、まさか宇崎先生がね。しかも正式に付き合ってる前田先生のプライベートを覗きたいがためにつけ回すなんて。どうしてこの高校には変態が多いんでしょうか」
変態というジャンルに自分が入っているとは思っていない顔で、深川は頷いてる。
「せっかくの新任教師どうしのカップル。なかなかお目にかかれるものではありません。この関係を宇崎先生のストーキングで壊すなんてあってはならないと私は思います。宇崎先生には注意をしたんですよね?」
「しっかり注意しましたよ。先生も反省したみたいで、もうやらないって言ってました」
「ではひとまず安心、といったところでしょうか」
そう思いたいが、香月は宇崎のことをもう信用していなかった。捕まった犯罪者の再犯率は高いという。一度罪の味を覚えた人間は、反省していてもまたやらかしてしまうものだ。
「会長、一つ提案があります」
本当は深川と一緒にいる時間は減らしたいが、事情を知るのが彼女だけなので仕方がない。
「今日の夜、宇崎先生の跡を付けてみませんか?」




