表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
74/93

新任教師の秘密⑪

 「会長、これってまさか」


 「分かりますか香月さん。この看板を見ただけでピンと来るとは、あなたも中々ですね」


 しまった、罠か。


 「いえ、違いますよ!私はこういう施設、利用したことないですから!」


 「休憩1時間2000円は良心的な価格だと思いませんか?駅近くに出来たところなんて、倍の値段はしますから。去年のクリスマスシーズンは行列がすごかったですね。よくもまあ、長時間待てるものですよ」


 なぜ深川はラブホテルの価格帯に詳しいのだろう。堅物というイメージだったころの生徒会長像は、もはや欠片も残っていなかった。


 「この写真、いつ撮ったんですか」

 

 宇崎と前田が並んでラブホテルに入っていく場面は、しっかり高画質で激写されていた。宇崎が前田の腰に手をまわしており、前田は恥ずかしそうに俯いている。初々しさを感じる表情から、前田の緊張感が写真越しに伝わってくる。


 「先月ですね。先生方が赴任されてから間もなくの夜です。あの日、私はネタ探しのために夜の街を歩いていたんですよ。そしたら偶然、宇崎先生と前田先生が」


 「ネタ探しっていうと、例のいやらしい漫画の?」


 「エロ漫画は想像で描いてはいけないんですよ。中にはイマジネーションだけで作品を作り上げている漫画家さんもいるでしょうが、私が自分の作品に求めるのは、より湿度の高いリアルさ。そのためには自分の足でネタを集めないと」


 情報は足で稼ぐ、という刑事みたいな事を言っている。そんな理由で高校生が夜の、しかも風俗店が立ち並ぶエリアを歩くなど危険極まりない。この生徒会長、いつかこっぴどい目に遭いかねない気がする。


 「ハマってるんですよね。ラブホテルに入っていく瞬間のカップルが出てくるまで待って、入るときと出てきたときの顔のギャップを確かめるの」


 「え、なにその趣味、きも」


 「きもいとはなんですか。人間観察の一種ですよ。観察力を高めることは漫画の質を高めることにも繋がるんです」


 趣味は人間観察です、という時点で十分に気持ちが悪いが、そのうえ深川がやっていることは不愉快さに拍車をかけている。生徒会長は一度弾劾されるべきだ。


 「そうしてカップルを観察していたところ、先生方が現れたんです。どこかで見た顔だな、と思って、宇崎先生と前田先生だと気づいたときには心臓が跳ねましたね。これはすごい特ダネだと。光の速さでシャッターを切りましたよ」


 「それがこの写真ってわけですか」


 「てっきり綺麗なお付き合いをしてるものだと思ってたんですが、まさかストーカーとはね。ここまで知ってるんですから、私には話してもいいでしょう。さあ香月さん、宇崎先生と何があったんですか?」


 逃げようとした香月の腕を掴み、深川は自身のテリトリーである生徒会室へと引っ張っていった。


 周りの生徒、特に一年生からは、あの生徒会長と親しくしているなんて、という憧憬の視線を向けられたが、とんでもない。誰でもいいから助けてくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ