新任教師の秘密⓾
「おはようございます、香月さん」
「おはようございます。あの宇崎先生…」
翌朝に学校ですれ違った宇崎は、前日のことなど無かったかのように振舞っている。公園で吐いていた酔っ払い。前田をストーキングしている変態の面影はそこには無かった。
「なんですか?」
そう聞き返してくる声には妙な圧がある。
「その、昨日のことなんですけど」
「なんのことか分からないなあ」
このまま白を切るつもりらしいが、そうはいかない。
「あのあと真っすぐ家に帰ったんでしょうね。また前田先生を着け狙ったりしてないか不安で」
「約束したじゃん。もうストーカー行為はしないって」
ほかの生徒に聞かれないように、廊下の隅で体を寄せ合ってコソコソと囁き合う。
「香月さん、念には念を入れてのお願いになるけど、絶対にあの件は学校に言わないでね」
「安心してください。私だって宇崎先生に首になってほしいわけじゃないですから」
それを聞いて安心したらしく、宇崎は先生の顔といつもの快活さ取り戻して、職員室のほうへ去っていった。
「なるほど、ストーカー、ですか」
「うわぁ、会長!いつからそこに⁉」
気配を殺したまま近づいてきた深川が、知らない間に香月の背後に立っていた。
「そんな幽霊を見たような反応されると傷つくんですが」
「だったらもっと主張しながら近づいて来てくださいよ」
「宇崎先生と何やら興味深い話をされていましたね。詳しく聞かせてもらっても?」
「だ、ダメですよ。口外しないって約束なんですから」
宇崎と前田が交際しているという事実も学校側には隠さないといけない。ここで深川に知られるわけには…。
「あ、お二人がお付き合いしている事なら知っていますよ」
「なんで…?」
深川がスマホを取り出して、画面に一枚の写真を表示させた。
「この前の試合。参加を決めさせたのはこの写真を脅しに使ったからです」
そこに映し出されていたのは、やたらカラフルで電飾の多い建物に入っていく宇崎と前田の姿だった。看板には『休憩 1時間2000円』と書いてある。




