新任教師の秘密①
香月が部室に入って最初に見たのは、現代アート部、緊縛クラブ、それぞれの部長に加えて、生徒会長までもが一堂に会する光景だった。
嫌だ、絶対に関わりたくない。授業終わりで疲れているというのに、放課後にまで無駄なストレスを抱えるのはごめんだ。
「失礼しましたー…」
「おい香月、どこへ行く」
「お取込み中でしょ?」
「いやいや、先日の試合に協力してくれた礼をしていたところだ」
3人は部室の床に直接座り、皿に乗せられたクッキーをつまんでいた。塩井なりに感謝を示し、彼女たちをもてなしていたらしい。休日を一日潰され、小学生から遊び場所を奪うという暴挙に加担させられた事を思うと、あまりに安い謝礼だ。
「四条の機転のおかげで無事に勝つことができた。まさかスプレーでバットと一体化するとはな」
「発想の転換だよ。普段は女の子を固くギチギチに縛ってるけど、頭は逆に柔らかいんだー。お礼は塩井ちゃんを縛らせてくれればそれでいいよ」
「それについては断る。縛るならうちの部員にしてくれ。香月あたりでどうだ?」
「なにサラッと人を売ってるんですか」
「私と岩崎はすでに被害にあってるんだ。あとは香月と橘の2人だけだぞ」
香月も全身ではないとは言え、四条の緊縛によって腕の自由を奪われたことはある。手首を縛られただけだったが、あの俊敏な動きと強力な拘束。思い出すだけでも恐ろしい。
「香月ちゃんも縛り甲斐はありそうだよね。結構足とかいい感じの太さだし」
「失礼じゃないですか⁉」
「褒めてるんだよ。細すぎず太すぎず、健康的な体ってこと」
四条はクッキーを口に放り込み、缶コーヒーを飲んだ。この女、どうして人を縛ることに情熱をかけられるのだろうか。
「深川もご苦労だったな。最初の打席でホームランを打った時はびっくりした」
「ええまあ。偶然ですよ」
嘘だ。塩井のユニフォームから透けた下着に興奮してアドレナリン全開で振るったバットが、見事にホームランを叩きだしたのを知っている。
「つきましては塩井さん。このあと少しお時間いいですか?着てほしい服がありまして」
「うむ、構わないが」
「ダメです!」
香月が2人の間に割って入った。
「会長、またよからぬ事を考えてますね?」
「さて、なんのことやら」
「どうせ先輩にいやらしい格好をさせようって魂胆でしょ」
「先日の塩井さんの姿を見て、色々とインスピレーションが湧いてきたんです。鉄は熱いうちに打て、といいますし、妄想が捗っている今こそ様々なコスチュームを試して…」
「はいもう出て行ってください。仕事忙しいんでしょ」
「待ってください。ボンテージまでとはいいませんから、せめてバニーだけでも」
食い下がる深川を部室から追い出し、ついでに四条も追い払った。ようやく部室に平穏が戻ったと思ったのも束の間。
「君たち!前田先生を見なかった?」
ノックもなしに飛び込んできたのは、宇崎先生だった。




