部長殺人事件⓾
週末は雄大と一日デートした。塩井に邪魔され続けたせいで数週間の間お預けを食らっていた、念願のデートだ。予算は互いの小遣いの範疇なのでそこまで贅沢はできないが、ショッピングや映画だけでも十分に楽しめた。そう、これこそ本来の高校生のあるべき姿なのだ。なんだ現代アート部って。
塩井が迷惑をかけたお詫びにと、安い物ではあるがお菓子の詰め合わせセットを購入し、週明けに生徒会室へと持って行くことにした。
「すいませーん、二年の香月です。会長、いらっしゃいますか?」
ノックしても返事がない。放課後はいつも生徒会室にいるイメージだったが、留守だろうか。
もう何度かノックしても反応が返ってこないので、香月はゆっくりと生徒会室の扉を開けた。
「失礼しまーす」
「わぁっ⁉」
生徒会長専用の席に座っていた深川が飛び跳ねた。いるなら返事してくれれば良かったのに。
それにしても、いつも冷静で淡々としている深川から出た声とは思えなかった。
「あ、すいません。取り込み中でしたか」
「いや大丈夫です。何の用でしょうか、香月さん」
深川が何かを机の下に隠すのを、香月は見逃さなかった。教科書にしては薄い紙の束だ。
「今なにか隠しました?」
「え?何もないですけど」
深川は案外嘘が下手な人のようだ。目はキョロキョロ動いており、動揺がまったく隠しきれていない。まあ、あまり詮索しないでおこう。生徒会長にだって、人に見られたくない秘密の一つや二つあるだろう。
「これ、先日のお詫びです。つまらないものですが」
「ああ、これはご丁寧にどうも」
お菓子を受け取ろうとして立ち上がった深川の肘が、机の上のファイルに当たった。その中に挟まれていた一枚の紙が、はらりと宙を舞う。
「あっ…!」
深川がそれを掴もうと手を伸ばしたが、窓から吹き込んだ風によって紙は予測不可能な軌道で舞い、慌てふためく会長からどんどん離れていく。
そして散々深川をおちょくるような動きをしたあと、香月の足元に落ち着いた。
「会長、なんか落としましたよ」
その紙を拾い上げた香月は言葉を失った。
「なっ…」
そこに描かれていた人物には見覚えがある。漫画風にデフォルメされているが、間違いない。現代アート部の部長であり、生徒会室で騒動を起こした犯人でもある、塩井だった。




