表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/28

部長殺人事件⑨

 「お騒がせしてすみませんでした。ほら先輩、行きますよ」

 

 緊縛から解放され、自由を取り戻した塩井を連れて生徒会室を出ようとした。その直後、深川から「ちょっと香月さん」と呼び止められたので、塩井を廊下に残して室内へ戻る。


 「どうしましたか」


 「あなたのところの部長さんにしっかり言っておいてくださいね。アートだかなんだか知りませんけど、人様に迷惑をかけるな、と」


 「はい。重々承知してます。ほんとうちの先輩がすみません」


 「くれぐれも校内で死体にならないこと。これは徹底させてください」


 生徒会長からの注意に、死体などという言葉が含まれる事がかつてあっただろうか。


 「それじゃ、私はこれで…」


 「あ、待って下さい。香月さんに聞きたいことが」


 「私に?」


 同じ高校の生徒ではあるが、生徒会長と香月では立場がまったく違う。一般生徒の中でも、特に何の実績も目立つ要素もない香月とは住む世界が違う。深川とは話す機会すらないと思っていたが、まさか自分に聞きたいことがあるとは。


 「香月さんは絵を描かれるんですよね。なかなかに上手だと噂を聞いています。作品が表彰されたこともあるんですってね」


 「あ、はい。そんな大したもんじゃないですけどね」


 なんだろう。校内のイベント用ポスターでも描けと言われるのだろうか。塩井が迷惑をかけた手前、自分には非がないと分かっていても、無下に断ることもできない。


 「絵はどういうジャンルを?」


 「ジャンルですか…。普通にスケッチとかも描きますし、人物画も好きですね。前にクラスメイトの顔を描いたのが入賞したことがあります」


 「人の顔を描くのって、なにかコツとかありますか」

 

 「コツ、ですか?」


 深川がそんな質問をしてくる意図が読めない。どうやら仕事を頼みたいわけではなさそうだが。

 

 「そうですねえ。パーツの立体感を意識することは大事にしてます。例えば鼻ですけど、線ではなく面で捉えないと、どうしても平たい感じになっちゃいますね。目を描くときも、眼球が平面ではなくて球体であることを意識したらリアルな仕上がりなると思います」


 「ふむ、なるほど」


 「もしかして会長も絵を描くんですか?」


 何気ない質問のつもりだったが、深川は悪さがばれそうになっている子供みたいに、不自然な挙動になった。

 

 「いえ、違うんです。ただ気になっただけです。教えてくれてありがとうございます」


 香月は廊下で待っていた塩井に、今しがた深川に妙なことを聞かれたと話した。


 「ふうん、芸術に興味を持つのはいいことじゃないか。わが校の生徒会長も、ようやく分かってきたな」


 それが塩井の勘違いであり、深川が目覚めたのは芸術でないということが発覚したのは、後日のことである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ