部長殺人事件⑧
「生徒会室で一体なにをやってるんですか。淫らな行為なら学校の外でやってください。風紀が乱れます」
外なら生徒会長の管轄外。しかし校内で緊縛プレイとなると、生徒のトップとして黙認するわけにはいかないのだろう。
「でもー、部活として認められてるし」
「あくまで芸術的な活動として、です。人をみだりに縛るのは認めません」
「淫らとか乱れとかみだりとか。早口言葉ですかー?」
深川相手にもまったく物怖じしない四条は、肝が据わっている。その気になれば会長権限で廃部に追い込むことも出来そうなものだが、四条に怖いものはないのだろうか。
深川が机をバン、と叩いた。
「出ていってください、今すぐに」
「とか言ってー、深川ちゃんも興奮してるんじゃないの?普段はクールな塩井ちゃんのこんな姿に」
耳たぶを噛むだけに飽きたらず、四条は塩井の耳に吐息を吹きかけた。
「…ぅぅぅ」
香月はシャッターを切った。
「わ、私のアートを汚すなぁ…」
「アートじゃなくて、塩井ちゃんを汚すのはアリなのかな?」
「香月、早くこいつを殺せ。私が許可する!」
「死体を増やそうとしてます?」
四条のおかげで有用な参考資料が手に入ったので、しばらく泳がせておくことにしよう。
「すぐに出ていかないと、緊縛クラブの部費を削りますよ」
「どーぞ。ロープは自前のだし、全然お金かからないから」
何を言っても四条には響かない。愉快そうに笑いながら、塩井への拘束を強めていく。四条の手が下へと下がってゆき、塩井のスカートの中へ侵入していった。
「四条さん、それはさすがにアウトですって!」
「んー、写真撮らないでいいの?」
「私は先輩と契約してるんです。現代アート部に部員を勧誘できれば、どんな姿でも絵のモデルとして描かせてもらうって。だからこんな形で先輩の、その、淫らな姿を拝むのは反則です。私のポリシーに反します!」
自分でも何を言ってるのか分からないが、四条の手によって塩井の秘めたる部位が白日のもとに晒されるのは不本意だ。最初の約束の褒美としてモデルをやってもらった日、ブラウスのボタンを外して、谷間をのぞかせた塩井の姿を思い出す。その先を見るには、自分自身の努力が必要なのだ。
「香月。君というやつは、なかなか情熱的だな」
四条に耳を責められて半泣きになっていた塩井が、ついに涙をこぼした。それは恥辱からくるものではなく、香月の情熱に心を打たれた感激の涙だった。
「へえー、面白いこと言うね。だったら今日のところは勘弁しといてあげるよ。でも塩井ちゃんのこと、諦めたわけじゃないからね。また隙を見て縛りに来るよー」
四条が恐ろしいほど早い手つきでロープを解いた。複雑に絡み合っていた糸が、嘘みたいにするすると解けていく。
「助かったよ香月。ありがとう。あやうく私は、変態女の慰み者にされるところだった」
「変態じゃないよ、緊縛アーティスト」
カウボーイのようにロープをくるくると回しながら、四条は生徒会室から去っていった。扉を閉める直前、口元をにやりと歪めて「次は岩崎ちゃんかなあ」と捨て台詞を吐いたのを、香月は聞き逃さなかった。




