部長殺人事件④
「なにしとんねん、ボケ!」
岩崎の拳がさく裂し、塩井の脇腹にめり込んだ。
「きゃん!」
香月が叩いた時もそうだったが、攻撃を受けた塩井は子犬みたいに鳴く。
「なんや死体アートって!ふざけとんか!」
「ふざけてるとは失礼な。これは好奇心からくる実験だよ。死を表現した作品というものはこれまでたくさん存在しているが、自らが死んでみるのはどうかと考えたわけさ」
岩崎に怒鳴られても、塩井から一切謝罪の言葉は出ない。これだけ人騒がせな事をしておいて、せめて一言詫びを入れるべきではないだろうか。あやうく警察が来るところだったわけだし。
「そこで私はまず、おもちゃのナイフと血のりを用意した。死に場所には悩んだが、やはり部室が一番だろうと思ってな。屋上という手も考えてみたが、誰にも見つからずにスルーされそうだし、それは嫌だからやめておいた」
そして不幸なことに、岩崎が第一発見者になってしまったわけだ。
「私の死体を見た時の岩崎のリアクション、傑作だったぞ。普段はガサツな感じだが、あんな可愛い悲鳴をあげるなんてな」
「う、うっさいわボケ!ホンマにびっくりしたんやからな!」
「しっかり映像も撮っておいたぞ。香月、橘、見たまえ」
「おい待てや!」
岩崎が止める前に、塩井が録画した映像の再生を始めた。
まず映っていたのは、部室の床に倒れこむ塩井の死体。誰かが来るのを待っているところだ。指先一つ微動だにしないのは、死体になりきるというプロ根性を感じる。
数分後、扉を開けて入ってきた岩崎が腰を抜かした。
『きゃああああああ!』
岩崎らしからぬ甲高い悲鳴は、バッチリ録音されていた。
「消せ、それ消せ!」
「ダメだ消さない。私の死体アートの記録なんだから」
「塩井部長。その映像、私にも送ってもらっていいですか」
「橘まで何言うとんねん!」
「いやはや、死体アートは大成功だ。なかなか貴重な経験だったよ。人前で死んでみるのが癖になりそうだ」
「絶対にもうやらないでくださいよ。先輩のせいで、また雄大とのデートなくなったんですから!」
塩井は最後まで、謝罪の言葉を口にしなかった。
そして癖になってしまったというのは本当のようで、翌日に塩井はまた死体で発見された。
よりによって、生徒会室で。




