悪夢の生徒会⑰
椅子に縛られた塩井の拘束を解き、悪しき生徒会たちから解放してやった。
「もう大丈夫ですよ、先輩。悪は滅びました」
「驚いたよ。まさか三対一で勝利するとは。香月は逞しくなったな」
「現代アート部に一年もいたせいかもしれませんね」
長時間縛られていたせいで痺れた腕をだらりと下げる塩井。制服のボタンは外されたままで、下着が露わになっている。
「誰も来ないとはいえ、一応その、隠しといたほうがいいんじゃ…」
「ん、そうだな。まったくこいつら、ここまで過激派だとは思わなかったよ。四条、深川。私は君たちのことを仲間だと思っていたんだがな」
香月に負かされて悔しそうに唸る四条と、ようやくスカートを脱がされていることに気づいた深川が同時に顔を上げた。だが両者とも反省の色は微塵も浮かんでいない。
「私を責めないでよー。深川ちゃんからお金をもらって雇われた傭兵みたいなもんなんだから」
「四条さんもノリノリだったでしょう。今更自分だけ逃れようとしてもダメですよ」
「生徒会長なんだから、生徒の失態の尻拭いもしてくれるんじゃないの?」
「生徒会長にそこまでの責務はありません。むしろ今回の件、直接的な危害を加えたのは四条さんのほうでは?過失でいえば彼女のほうが大きいと思います」
「いやいや、それはずるいよ。エッチな漫画描くために塩井ちゃんを縛りたかったんでしょ?そんな意味わかんないもの描いてるのが元凶じゃん」
「意味わかんないとはなんですか。これでも商業誌で連載しているんですが?プロですよプロ」
「私だったらその道のプロにはなりたくないなー。親になんて説明するのさ」
「漫画家、とだけ伝えています」
深川と四条は反省するどころか、互いに責任の擦り付け合いを始めた。なんて醜い先輩たちなんだろう。
「二人ともうるさい!まず先輩にいう事があるでしょ!」
たまらず恫喝した香月に、深川は肩をびくりと震わせ、四条は不満げに口を尖らせた。
「会長から聞きましょうか」
「えー、そうですね。この度は大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。いきなり校内を歩いているところを誘拐するなど、過激な手段を取ってしまったことは反省しております」
ふん、と塩井が鼻を鳴らす。
「モデルになってほしいなら、最初からそう言えばいいんだ。協力したかどうかは別としてな」
「それではダメなのです。不意を突かれて縛られたリアルな焦りと恥辱の表情。それを浮かべてもらうためには、ああするほか無かったんですよ」
やっぱりこいつ反省していない。本棚にあった古い広報誌を丸めて、深川の頭を叩いた。
「先輩がどれだけ怖い思いをしたか分かってるんですか?」
「ええ。おかげでいいものが見られました」
もう一発、今度は強めに叩いておいた。吹き飛んだ眼鏡を四つん這いで探す深川には、生徒会長の威厳などまるで感じない。
「で、四条さんの番。なにか言い残すことは?」
「なに、私殺されちゃうの?」
「答えによります」
「あはは、ごめんね塩井ちゃん。深川ちゃんからお金もらったから、これも仕事だと思ってついやりすぎちゃった。塩井ちゃんは縛り甲斐があるからさー。良かったら今度は、合意の上で緊縛させてよ」
四条の頭を叩く。
「痛い。深川ちゃんの時より威力強くない?」
「まだ先輩を縛る気ですか!」
「塩井ちゃんがダメなら、香月ちゃんでもいいよ。岩崎ちゃんは一回経験済みだし、あとは橘ちゃんと…、欲を言えば宇崎先生と前田先生も縛ってみたいかな」
塩井の目がどんどん冷たくなっていく。もはや四条を見下ろす視線が氷のようだ。
「行こう香月。もうこいつらの相手をしていられない」
生徒会室の隅っこで、敬愛する深川を辱められて泣いている野村がいた。
「貴様も同罪だぞ。刈上げが」
通り過ぎざまに塩井が地面を蹴って野村を威嚇した。




