悪夢の生徒会⑱
「ふーん、部室に来いひん思ったら、そんな事件に巻き込まれてたんか。そら災難やったな」
深川に誘拐され、四条に緊縛された塩井が事の顛末を話しても、岩崎は適当に相槌を打つだけだった。
「あの不穏な校内放送を聞いてなんとも思わなかったのか。助けに来てくれたのは香月だけだぞ」
「所詮学校の中で起きてることなんやし、大したことあらへんやろ」
「あれは立派な事件だ。警察が動くレベルだった!」
塩井が机を叩いて抗議するも、岩崎はスマホを見たまま雑な返事をしている。
「普段変なことして周りに迷惑かけてんねんから、しっぺ返し食らったんちゃう?」
「どうしてそんな意地悪ばかり言う」
岩崎に相手にされない事に拗ねた塩井は、四条から取り返したクラゲ帽子を弄び始めた。
「先輩、怪我とかしてないですか?」
「ああ大丈夫だ。ちょっとロープが食い込んだ部分が痛むが、すぐに治るだろう。それにしても香月があんなに強いとは思わなかったよ」
「咄嗟に思いついた戦い方だったんですけど、意外となんとかなるもんですね」
「四条の悔しそうな顔は実に愉快だった。強さに自信があったからこそ、格下だと舐めてた香月にやられてショックだったんだろうな」
今回の件で逆恨みされて、四条が香月を縛りに来なければいいが。
ドン、といやに大きな音を立てて部室の扉がノックされた。
「入れ」
「失礼します!」
扉を勢いよく引き開けたのは、生徒会の一年生、野村だった。会長である深川に付き従い、なぜかあの変態を敬愛している奇人だ。
「貴様、どの面下げてここへ来た!」
塩井が野村に向かって投げたのは、スライム状のべちゃっとした塊だった。製作途中の作品から出た残りかすらしい。
野村は上半身を反らしてその物体を避け、入室してきた時と同じようにビシッと直立姿勢になった。
「塩井先輩が私を敵視するのは当然っす。深川会長の命令とはいえ、先輩を誘拐して危険な目に合わせたんですから。それについては心から謝罪します!」
直角に腰を折って頭を下げる野村だったが、誠心誠意の謝罪も塩井には届いていない。
「なんだ、お詫びの品でも持ってきたのか?私は受け取らんぞ」
「いえ、私が用があるのは塩井先輩じゃなく、そっちの香月先輩っす」
「え、私?」
「香月先輩の戦いっぷりに惚れました!私を弟子にしてください!」




