悪夢の生徒会⑫
珍しく部室に塩井が来ない。いつもなら放課後になるとすぐに現れるのに、どこで油を売っているのだろう。
「なんや香月、そわそわして」
「えっ、いや別に。そういえば先輩が来てないですけど、なにか聞いてます?」
塩井と岩崎はクラスは違うが、なにか知っているかもしれないと思い探りを入れる。
「なんも聞いてへんよ。どっかそのへんで変なもん作ってるんとちゃう?しっかしあいつがおらんと静かやな。久しぶりにのんびりできるわ」
岩崎が部室の床に寝ころんで体を伸ばし、手の甲で目を擦った。
「岩崎先輩って猫みたい」
「なんやそれ、可愛いって褒めてんのか?」
「ほーらほら、猫じゃらしですよー」
放置されていた塩井の私物らしき筆を猫じゃらしに見立てて、岩崎の前で振る。
「うにゃあん」
さすが関西人。ノリが良い。
岩崎とじゃれていると校内放送が流れ始めた。
『2年1組の香月さん。至急、生徒会室までお越しください』
深川の声だ。絶対にろくな用事じゃない。
「呼ばれてんで。行かんでええの?」
「いいんです。あの人の呼び出しには応じないって決めたので」
「なんかあったんかいな」
『繰り返します。2年1組の香月さん。直ちに生徒会室までお越し下さい』
スピーカーから聞こえてくる深川の声が若干の苛立ちを含んでいる。早く来いと急かす気持ちがだだ漏れだ。
「なんかあいつ半ギレやぞ。行った方がええて」
「行きません。絶対行きません」
『何してるんですか。早く来て下さい』
もはや校内放送を私物化している。無視だ無視。
『あと5分待ちましょう。それまでに来なければ、あなたの大事な人がそれはもうとんでもない事になります』
「あいつ誘拐犯やったっけ」
「ちょ、ちょっと行ってきます!」
悪い想像が脳内を駆け巡る。部室に来ない塩井。そして今さっきの不穏な脅迫。もしや塩井の身に何かあったのでは。




