バカと部長は高いところが好き⑥
人間4人と犬一匹となったメンバーは、宇崎の提案でお化け屋敷に向かうこととなった。開業以来何度かリニューアルはしてきたらしいが、入口のろくろ首のオブジェからして老朽化が激しい。首と目玉が動くギミックは半分くらいしか作動しておらず、逆にそれが不気味さを演出している。
お化け屋敷の前までやってくると、岩崎がぴたりと立ち止まった。
「ウチはええわ。みんなで行ってき」
妙に声が震えている。もしや怖いのが苦手なのだろうか。
岩崎が見せた弱みをみすみす見逃すほど塩井は甘くない。
「ほほう、怖いのか、怖いんだな?ああ、言わなくても分かってる。見るからにビビっているからな」
犬耳と首輪という恥ずかしい恰好をさせられているにも関わらず、塩井は岩崎を煽りまくる。ウキウキして頭を小刻みに振っているせいで、犬耳がまるで本物のようにぴこぴこと動いている。
「ちゃうし。怖いとかないから」
「ならば入らない理由がないじゃないか。思えばさっきから少し様子が変だった。宇崎先生がお化け屋敷に行こうと言い出したあたりから、君は露骨にテンションが下がっていたな?真横で私が屈辱的な目にあわされているのだから、いつもの岩崎なら私をもっと茶化すはずだ」
塩井がにやにやと笑いながら岩崎ににじり寄っていく。犬が人間の匂いを嗅いでいるみたいに、岩崎の首元に顔を近づけている。近くを歩いている人が、塩井と岩崎の絡みを見て足を止めた。容姿の優れた2人が、しかも片方は謎のコスプレをしている状態で密着しているのだから、つい目を奪われてしまうのは仕方がない。香月もすかさずその様子をスマホで撮影した。
「んん?なにか反論はないのか、岩崎」
「うっさいねん」
「うっさくなどない。もし君が怖くないというのなら、私たちを先導して入りたまえ。このお化け屋敷は歩いていくタイプのやつだから、君を先頭にしてみんなでついていこう」
「い、嫌や!」
「嫌ときたもんだ。では高校生もなって、作り物のお化けに怯えているということを認めるか?」
額に青筋を立てた岩崎が塩井の首輪を引っ張った。
「ぐふっ!」
「ウチがびびってるって?馬鹿にすんのも大概にせえよ。ええわ、先頭歩いたるわ!」
お化け屋敷の中へ先陣を切って入っていく岩崎。その後ろ姿は。いつもよりすこし頼りなく見えた。
メンテナンスがろくにされていないせいか、壁にかけられたお岩さんの絵画ががたりと揺れる。
「きゃあぁ!」
岩崎は腰を抜かし、壁に手をついて生まれたての小鹿のように震えだした。
「愉快。実に愉快だ。いいものが見れそうだな、香月」




