バカと部長は高いところが好き②
「参加不参加の意思は聞かない。全員強制参加だ」
この場にいない橘も、強制的に予定を空けさせられることが確定した。
「まあええけど、どこに行くかは決まってんの?」
「岩崎はどこか行きたい場所はあるか?」
「映画」
「却下」
「グランピング」
「却下」
「ほな聞くなや!」
提案をことごとく却下された岩崎が不貞腐れた。
「香月はどこがいい?」
「あー…、どこでも」
「どこでもいい、は無し」
「じゃあ、遊園地とか?」
思い返せば小学校の時以来、遊園地には行っていなかった。久々に童心に帰ってみるのもいいかもしれない。まあどうせ却下されるのだろうが…。
「なるほど、遊園地か。気分をリフレッシュさせるにはいいかもしれないな」
案外すんなりと提案が通ってしまった。
「よし、決定だ。日程は今週の土曜日。各々予定を開けておくように。集合時間は朝の8時」
「早ない?」
「せっかくなら一日たっぷり楽しみたいだろ。入場料は何時に入園しても変わらないんだから、開園と同時に行ったほうが得だ」
せいぜい半日程度のつもりだったのだが、朝から晩まで目一杯時間を使うつもりらしい。
「橘には私から連絡しておく。顧問の2人にも来てもらいたいが、休日にまで付き合わせるのは少々気が引けるな…」
塩井にしては珍しい気遣いだ。部員のプライベートにはお構いなしだが、顧問とは一線を引いている。
部活メンバー4人での校外活動という方向で話を進めていると、職員会議を終えた宇崎と前田が部室にやってきた。
「話は聞かせてもらったよ。私たちも行く!な、葵。遊園地行きたいよな?」
「恵ちゃんと遊園地デートってしたことなかったもんね」
この2人、生徒そっちのけで遊ぶつもりだ。それならプライベートで勝手に行ってくれればいいのだが、宇崎と前田は部員以上にノリノリだった。
「では先生方も含めて6人での校外活動とする。だがこれは遊びじゃないぞ。あくまで弛んでいる君たちに、今一度現代アート部として気を引き締めてもらうためだ」
「遊園地行くのにそんな気合入れたないんやけど」
「それでは本日は解散。施錠担当は…私か。下校時間までに当日の効率的な回り方を考えておいてやる。せいぜい楽しみにしておくように」
遊びじゃないと言いつつ、塩井もなんだかんだでワクワクしているのが表情から伝わってくる。日頃見せない塩井の一面が見れるかもと思うと、香月も土曜日が待ち遠しくなってきた。
「む、橘から返信が来たぞ。『人が多いところは苦手だから不参加でお願いします』だと?」
塩井は眉間に深いしわを寄せると、橘に通話をかけ始めた。出なければいいのに、橘は律儀にも応答してしまったものだから、塩井の詰問にあう羽目になる。
「メッセージを見たが、あんなもの不参加の理由になるか!どうせ暇なんだから来るんだ。なに?どうしても外せない用事がある?君は嘘が下手だな。さっきは人ごみが嫌いだからと言っていただろ。ほう、今になって急に用事を思い出したと。橘、私は嘘が嫌いだ。もう一度聞くぞ。土曜日は暇だな?」
橘の声は聞こえないが、電話の向こうで力なく頷く姿が見えた。




