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第6話:しにたい女の子に興奮する女の子

ムギは、あの夜からわたしの家に住んでいる。あの夜とは、ODして爆発的に泣き出したムギを抱きしめた夜のことだ。彼女の泣き方はまさに、爆発的と言わざるをえない。

burst into tearsという表現がある。burstは爆発という単語で、tearは涙。「爆発的に泣きだす」ムギにぴったりな表現だ。

わたしも普段から一人暮らしで寂しさを抱えているし、ムギもわたしの近くにいると安心感があるとのことで自然と一緒に暮らすという選択になったのだ。


ムギの泣き顔、リストカットーーー

わたしはそれらをたびたび思い出しては、胸が苦しくなるのだった。ここでの「苦しく」とは、ときめきに似た変な感情であった。


ムギはわたしと暮らすようになってから安定しているようである。お酒を飲む量も減ったし、ODもしていない。昼は絵の練習をし、絵描きとしてちゃんと生産的な生活をしているようだ。


「ムギは彼氏とかいないの?」


以前こう質問したことがある。


「いないし、いたことないよ」


と意外な返事が返ってきた。こんなにかわいい娘に限ってそんなことがあるだろうか。ちょっと嬉しかった。


家に友達がいるというのは本当に楽しい。仕事の帰りにムギが好きそうなケーキを選んでいるときや、ムギと一緒に動画を観ているときに特にそう感じる。ムギといると、知らなかった世界を見ることができる。生活に深みがでる。



そんなこんなで2週間が経過した頃だっただろうか。

いつものようにわたしが帰宅すると、部屋は真っ暗であった。


「ムギいないのー?」


そう言いながらリビングのドアを開けると、背中を丸めた黒い影が見えた。ムギである。


「どうしたの?」


どう見ても普通ではなかった。わたしは真剣な声でそう訊いた。ムギは何も言わなかった。

ただ、泣いている。わたしの声に反応するかのように、静かにすすり泣き出した。


「死にたい、、」


消え入るような声で彼女はやっと口を開いた。

どうして、何があったの、と訊いても何も答えず、ただ泣くばかりである。

あの夜のことを思い出した。

わたしたちが一緒に暮らすきっかけの夜。

彼女の泣き顔を見て、わたしは忘れていた感覚を思い出した。いや、本当は気づいていたが、気づかぬふりをしていたものだ。湧き上がるような、本能ともいえる感覚。性欲。


初めて性欲を感じたのは小学生の頃。歴史の漫画を読んだときであった。

縄文時代の狩猟生活を表すコマに、石を投げられて殺されるウサギの絵があった。それにわたしは性欲を感じたのだ。

わたしはどうも、可愛いものが酷い目に遭うことに興奮するらしい。それはウサギ、女の子、なんでもいい。


リストカットも好きであった。漫画でしか見たことがないが、女の子の感情が昂り、しくしくと泣きながら切るさまを何度も想像した。

自分の腕を切ってみたこともあったが、夏場は目立つためやめた。あとわたしはそこまでメンタルが弱くないから、必要のない行為であった。


わたしは彼女の泣き顔を見て、明確に興奮していた。この間の一件のせいで、性欲が高まっているのかもしれない。まるで体の中でお湯が沸騰していて、鼻先に蒸気が集まってきているようであった。

その蒸気はやがて頭に入り込み、思考を曇らせた。ぼうっとなり、理性がなくなっていく。


わたしは堪えきれなくなって、彼女を抱きしめた。彼女を抱きしめて、息を荒くした。興奮していたのもあるが、大きく息をするとなぜか満足感があった。

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