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第40話(ヒルギー王国編は終話) 土の大精霊にも憑りつかれた男は旅立った


「治療に行くかどうか判断するのに患者がいったい誰なのか教えてくれないか。」

「それは・・・・・・」


再びおねぇが口を閉じてしまった。


「その代わりと言ってはなんだけど、こういうのはどうかしら。」


しばらく考えた後におねぇが口を開いた。


「望みの報酬の倍、いえ、3倍払うから患者の詮索はせずに治療に来てはもらえないかしら。」

「報酬が3倍かぁ・・・・・・・」


俺はおねぇあまりの気前良さに絶句してしまった。


報酬が3倍・・・・・、って、食券6年分だぁぁぁぁぁぁぁ。

なんて気前がいいんだ、信じらんねぇ。

もうこれは行くっきゃねぇでしょ。

とっとと治療を終えてfireだ。

これでもう治療院で大鬼様の顔色を窺ってビクビクせずに済むし、聖戦士の訓練で地べたに這いつくばることもしなくて済むんだぁ。


'信じられんのはフン、貴様の金銭感覚じゃ。

食券6年分の報酬で経済的に自立し、早期リタイアするっていうのはのぉ。

6年間はのんびりできるかもしれぬが、そのあとはどうするのじゃ。

財産らしいものは他に持っておらんのだろ。'


"それよりも報酬が食券ちゅうのがそもそもfireと結びつかねぇだろ。

一生遊んで暮らせるぐらいの金か宝石を要求すんのが筋ってもんだろうがぁ。"


一生遊んで暮らせるぐらいの金か宝石って、いったいどのぐらいを要求すればいいんだ、怨霊様。


"えっ、私? "


しょうがない奴だなぁと言うあきれ顔から何でそんなことを私に聞くんだという驚愕の表情に変わった、怨霊様。


さては怨霊様もわかってねぇな。


"そっ、そんなことはねぇぞ。

なぁ、茶色い子。"


顔を引きつらせながら話を茶色い子さんに振る、怨霊様。


'そうじゃのぉ、食券60年分ぐらいかのぉ。'


そっかぁ、6年分では足りねぇか、60年分の食券かぁ。

でっ、それって、金や宝石で例えるとどのぐらいなんだ、怨霊様。


"だからぁ、私に話を振るんじゃねぇってぇの。

もう食券での経済推測だとわけがわかんねぇから、レーミヌイ王都の中堅どころの宿屋で朝昼晩3食、10時と3時のおやつ付きの50年分の滞在費を報奨金として要求するでいいんじゃねぇか。

これならfireできる金を手に入れられるだろ。

まぁ、その他の生活費や雑費分はおやつを一、二食減らせば足りんだろ。"


おぉいいねぇ、中堅どころの宿屋っていうのがいいよな。

お貴族様御用達の高級旅館でなんて言うと報酬を渋られて、50年分の宿泊費だけで食事とおやつは自腹って言い出しかねないからな。


'そうじゃのぉ。

宿を冒険者御用達の安宿にすれば、娯楽に使える資金が残せるのじゃな。'


"おぉぉぉぉ、それいいなぁ。

たまには花街にも行けるってことかぁ。

良いぞ良いぞ、それで行こうぜ。

普段は宿は三流、食事は三食パンとスープ、おやつなしでいけば週一で花街に通えるかもな。

よし、それで決定だ。

報酬はレーミヌイ王都の中堅どころの宿屋で朝昼晩3食、10時と3時のおやつ付きの50年分の滞在費として請求しようぜ。"


急に目を輝かせてノリノリの怨霊様。


あぁ、言っとくけど花街でなんて散財しないからな。

そんな金が有ったら屋台の串焼き屋の制覇だぁぁぁぁ。


'花街でも串焼き屋台でもいいが、まずは報酬の交渉をしたらどうじゃ。'


おっ、おぉ、そうだよな。

その報酬が約束できるか確認しないとな。


"あぁ、ちなみに良いか。

報酬としてレーミヌイ王都の中堅どころの宿屋で朝昼晩3食、10時と3時のおやつ付きの50年分の滞在費を請求すんだよな。

おねぇはその3倍を出すと言ってんだけど。

3倍にした報酬がそれなのか、それともそれをさらに3倍にしたものを最終的に要求すんのか。

それの3倍だとすっと、隔日で娼館に行けんじゃねぇか。"


そう言えばという顔をして尋ねてきた。怨霊様。


さすがにそれを3倍にしてくれとは欲張り過ぎじゃねぇ。

さっきも言ったけど報酬をケチられて結局、冒険者御用達の安宿で、食事とおやつはなしなんてなったら目も当てらんねぇぞ。


'それでは、まずは最低限の報酬としてそれを要求してはどうじゃ。

後はおねぇの顔色を見て、もう少し出せそうであれば上乗せを要求するのじゃな。

例えば小遣いとして週に一回花街に行ける費用を上乗せしてくれとかのぉ。'


それはいいが、花街に通う費用の上乗せ請求はまずくねぇか。

そんなとこに行くんだったら私が相手してやるなんて言われら地獄だぞ。


"いいじゃねぇか。

お前の望み通りだろ。"


にやにやしている、怨霊様。


ぜってぇ違うから、そんなことは望んでねぇから、金輪際。

世間様に誤解を生むような発言は控えてよ。

上乗せ報酬は週に一回、串焼きの屋台を借り切ることにするぞ。


'まぁ、それでよいのではないかのぉ。

それに見合う金を出せと言っているだけで、もらった後にどう使うかはフン次第なのじゃしのぉ。'


"小遣いの使い道は私の許可を必要とする、キッパリ

わかったな、シュウ。"


えぇ、そんなぁ。


"とにかく、早くおねぇと報酬の話をしろよ。"


してやったりと言わんばかりの怨霊様。


くっ、一気にやる気がなくなったぞ。


'小遣いの使い道は後で話せばよかろう。

まずはその報酬が認められるか聞いてみるのじゃ。'


若干イライラした口調の茶色い子さん。


「報酬の件だけど当方の最低ラインとしてはこんなもんかな。

レーミヌイ王都の中堅どころの宿屋で朝昼晩3食、10時と3時のおやつ付きの50年分の滞在費、これ以下にはできねぇぞ。」

「そっ、そんなぁ・・・・・・・・」


俺の報酬の提示に驚きを露わにして言葉が出てこない、おねぇ。


"高すぎたか。

宿屋だけでも冒険者御用達程度にしとけば良かったか。"

'この驚き方はそれでも高いのではなかろうかのぉ。

初心者冒険者御用達の宿屋で、おやつの件は取り下げるべきかのぉ。'


そっ、そうなのか。

とりあえず、宿屋は冒険者御用達で、おやつはなしまで条件を引き下げてみっか。


「あぁ、その報酬が・・・・・・・」

「そんな報酬でいいのかしら。

もっと、金や宝石、貴族の地位と領地何かがほしいのかと思ったわ。

欲がないのねぇ。」


えっ、逆に安すぎたぁぁぁぁぁぁぁ。


"じゃぁ、こうしろ。

レーミヌイ王都の下級貴族用の宿屋で朝昼晩3食、10時と3時のおやつ付き、週一で娼館に通える小遣い付きで50年分の滞在費に今すぐ訂正しろぉ。"


だからぁ、娼館はねぇって言ってんだろ。


レーミヌイ王都の下級貴族用の宿舎で朝昼晩3食、10時と3時のおやつ付き、週一で串焼き屋台一軒貸し切り付き、50年分の滞在費だな。


"まぁ、娼館じゃなくてもそこのおねぇのお部屋へのお泊り券でもいいぞ。"


にやにやが止まらない、怨霊様。


あぁぁぁぁ、おねぇのお部屋へのお泊り券だったら娼館の方が一億倍マシだぁ。

だいたい比較するに値しねぇ。


「おっほん。

えぇ、あまり易い報酬だとちゃんと治せないんじゃないかと不安にさせるので、報酬は次のように変更致します。

レーミヌイ王都の下級貴族用の宿舎で朝昼晩3食、10時と3時のおやつ付き、週一で串焼き屋台一軒貸し切り付きで50年分の滞在費だな。

これでどうだぁ。」

「のったぁぁぁぁぁぁ。」


間髪を入れず合意に達した、俺とおねぇ。


"串焼き屋台は娼館だからな。"

'おねぇの部屋へのお泊り券の間違いなのじゃな。'


おねぇの部屋へのお泊り券だけはないから。

そんなのが付いてくるんだったら、治療しになんて行かねぇから。


"その辺は後にしてだな、早くおねぇを土から出してやれ、茶色い子。

お姉の気が変わったらてぇへんだからな。"


「それでは土の中から出すよ。

そして、転移魔法で元の場所に一緒に戻るので、今の話をあんたの仲間に通してくれないか。」

「わかったわ。」


茶色い子さん、おねぇを土から出してくれ。


'わかったのじゃ。'


おねぇの体が土の中からひょいと現れた。


怨霊様、みんなを元の聖なる泉に転移させてくれ。


"わかった、任せろ。

なんならおねぇとおまえの二人だけで誰にも知られていない別の聖なる泉に転移させてやろうか。"


余計なことはせんでいいわぁぁぁぁ。

おねぇが元居た、仲間が待っている聖なる泉に転移させてくれ。


"冗談だってぇ。

じゃぁ行くぞぉ、そして、新天地、レーミヌイに出発だぁ。"


そして、シュウたちは新たな地に旅立ったのだった。


********************************************************


とりあえず、おしまい。




「精霊と魔物、そして人が渦巻く世界 聖戦士の憂い」

これにてヒルギー王国編は終話となります。

レーミヌイ王国編はまた時期をみて再開したい・・・・・・・

・・・・・・・できたらいいなぁ。

とりあえず、長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。



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