第三話 増大する力
カーロスの戦いから一ヶ月が過ぎた頃、ハイド皇国領内にある研究施設の遥か上空に停止しているクルード帝国軍の戦艦があった。
「作戦地点に到着しました!」
「わかった。
やつらも我々がこんな上空にいるとは思わんだろうな。
陛下より授かった戦艦ノスティルガルの為せる技か」
「メスト大佐、新型機の準備が整いました」
「ダールス、聞こえるか?」
ハッチの前に金色の機体がスタンバイしている。
「大佐、聞こえてますよ」
「感じはどうだ?」
「変な感じですね。
思うように動かせますが、機械の体ってのがね」
機体がまるで人のように頭を掻く。
「CLSを改良し、痛覚を遮断して全神経をネオアーマーに接続させる。
天才技術者だから出来る事なんでしょうか?」
メストに歩みながらバナールが話しかける。
「確かにCLSは昔の技術で欠点があると言われているが、本当は遥かに進んだ技術だと知っていたか?」
「いえ…」
「ただ生まれた時代に欠点を補う技術がないだけで、それ自体は優れていた。
人間が劣っていただけだからな」
「人が生み出した物が人を超える…少し恐ろしいですね」
「心配はいらんさ。扱うのが人間ならいずれ人間も優れた存在になる。
時間は掛かるがな」
「大佐、もう出撃していいですか?」
「その前に操縦の確認だ。
レーダーは分かるな?」
「ずっと頭に写し出されてますから大丈夫です。
通信の切り替えも脳で命令すればいいんですよね?」
「そうだ。
ブースターやスラスターは背中への集中の仕方で調整、遠くを見ようとすれば自動でズームされる」
「完璧です!」
「よし、ハッチ開放!」
「インデュリス出撃!」
降下するインデュリスを太陽がまばゆく照らす。
「しかし大佐、ダールスで良かったんですか?」
「彼は生身なら敵無しと言うほど、戦いに長けている。
更に適性検査では十の事を同時にこなし、五人と同時に会話していた。
ダールスの為にある機体だ」
ダールスが雲を抜けると、真下に研究施設が見えた。
「あれか。
これより目標を破壊する!」
ダールスが近付くと同時に、研究施設にサイレンが鳴り響き、ウォーアーマーが数体飛び立つ。
「ちゃんと訓練させてくれよ!」
鳥型のウォーアーマーが上昇しながらミサイルを発射するが、大の字に為って落下するダールスは、機体をスピンさせかわし、鳥型のウォーアーマーの翼を掴む。
「なんだこいつ!操縦が…」
「鳥型は翼が弱点だからな。
翼をもがれた鳥は」
ダールスは脚にあるブレードで翼を落とし、落下するウォーアーマーを追い抜き、目の前に来た瞬間にかかと落としを放つ。
「一匹終わり。空中は飽きたな…」
スピードを上げ、鳥型のウォーアーマーを次々と蹴り落としていくダールス。
「次は地上か」
研究施設に降り立ったダールスを狼型のウォーアーマーが取り囲む。
「かかってきな」
ダールスが人差し指を動かし挑発すると、背後にいたウォーアーマーが飛び掛かるが、機体を捻りながら後方へ宙返りし、ウォーアーマーの頭上で両肩にあるサーベルで交差するように切り刻む。
「な、なんだこの機体…まるで、人間」
ダールスは着地すると同時に、横へ跳びながらウォーアーマーを破壊していく。
「く、くそ!」
狼型の背中に積んであるマシンガンの弾を軽やかな動きでかわすダールス。
「当たるかよ!」
サーベルから手を離し、落下したサーベルの柄を蹴ると、ウォーアーマーに突き刺さる。
「ナイスシュート。
だいぶ片付いたかな?」
その時、ダールスに通信が入り手を止める。
「首尾はどうだ?」
「施設のウォーアーマーは全部破壊したと思います」
「なら今から送る座標まで後退しろ」
「いや、施設破壊してからにしますよ」
「別に構わんが、死んでもしらんぞ?」
「へ?」
その時、上空にあるノスティルガルの船首が二つに分かれ、船底へ移動する。
「大佐、準備完了しました!」
「ダールス、これから主砲の試し撃ちだ」
「試し撃ち!?」
ダールスは猛スピードで施設から離れていく。
「エネルギーチャージ完了!」
「よし!主砲トールグラビティ発射!」
地上に向いた船首の間に凄まじい光りを放つ電撃が走り、中央に集まって地上へ光りの柱が一瞬で伸びる。
「と、飛ばされる!」
光りの柱は研究施設周辺を消し去り、地面はマグマだまりと化していた。
「素晴らしい威力だ。
敵が来る前にダールスを回収、再び成層圏まで上昇し撤退する!」
ノスティルガルは降下し、指定座標にいるダールスを帰艦させる。
「CLS接続解除。
生身とインデュリスの感覚が混ざって変な感じだ」
コックピットを開き、ダールスが下へ降りると、バナールが待っていた。
「どうだった俺の圧倒的な強さは?」
「雑魚相手に調子に乗るな。
動きに無駄が多すぎる」
「お前の戦った新型もあっさり倒してやるよ」
「言っとくが、インデュリスがあるから腕のいいパイロット相手とまともに戦えるレベルだ。
普通の操縦も出来るようになっておけ」
「う、うるせぇな!どの機体も反応が遅すぎるんだよ!
でも、こいつは思った通りに動く」
「エルドクロイツの名を汚すなよ」
「それはこっちの台詞だ!」
それからノスティルガルは成層圏まで上昇し、クルード帝国へと戻っていく。
「あとは実戦だけだな。
ハイド皇国もアンノウンも私が排除してみせる」
ノスティルガルが去ってからしばらくして、ハイド皇国軍が研究施設跡へと駆けつけた。
「何がどうなっている!」
「ルウェン将軍落ち着け」
「落ち着けだと!攻撃されたのは俺の管轄だぞ!」
「これからちゃんと説明してくれる。
シュタイン博士お願いします」
「まず、敵の戦力だけど…分からないね」
「なんだと!」
テーブルを強く叩き立ち上がるルウェン。
「怖いなぁ。
研究施設が完全に破壊されてたからね。
ただ、最後の通信で見たこともない機体が襲撃してきたとは言ってたよ」
「じゃあ、前に現れたアンノウンか!」
「さあ?でも、これだけの威力がある兵器はかなり厄介だ。
クルードの新兵器か、アンノウンの新兵器か…どちらにしても、敵は研究施設のレーダーに映らない遥か上空から攻撃してきたみたいだね」
「上空から…何か対策を打たないと」
「スヴェル将軍の言う通り。
だからこちらも新兵器を使う事にしたよ」
「そんなのはどうだっていい!襲った奴を教えろ!」
「教えろと言われても…ん?」
その時、シュタインの元に連絡が入る。
「…敵が分かったよ。
クルードの新兵器みたいだね」
「クルード…」
ルウェンは会議室を出ようとし、スヴェルに止められた。
「邪魔をするな!」
「私情で軍を動かす気か?」
「俺が新兵器とやらを破壊してやる!」
スヴェルを押し退け、ルウェンは出ていく。
「全く…博士、新兵器と言うのは?」
「言うより見せた方が早いだろうね。
敵の新兵器見せてもらうよ」
それから数日して、ルウェンが軍を率いてクルード領に侵攻を開始した。
「俺を怒らせた事を後悔させてやる!」
「将軍、敵防衛艦隊接近!」
「よし!ブラスナー、モールス隊出撃!
右翼艦、左翼艦は敵を挟み込め!」
クルード防衛艦隊もウォーアーマー部隊を出撃させる。
「フェルム、アルカム隊出撃しました!」
「堂々と正面から来るとは」
「艦長、僕たちも出ていいかな?」
銀色の美しい長髪の男が艦長の後ろに立つ。
「エルドクロイツのあなたが出撃される程の相手ではありませんよ」
「最近、出撃が少なくて腕が鈍ってしまってね。
新型の力も試したいし、あの敵本隊の艦はルウェン将軍だよ」
「ルウェン将軍!?戦場の獅子と呼ばれる男がなぜ単独で…」
「とにかく、相手がルウェン将軍なら苦戦は間違いないからね。
中央は僕の隊が相手をしよう」
男はそう言ってブリッジを出ていく。
「中央にいる部隊にレイス様に任せて、他の援護に回れと伝えろ!」
レイスはネオアーマーのコックピットに乗り込む。
「ヴェルティカ、君の力を見させてもらうよ」
中央にいた部隊が左右に分かれていく。
「将軍、中央の敵部隊が」
「なんの真似だ?」
「新たな敵部隊が中央に展開!
なんだこの機体は…敵機の照合するデータがありません!」
「新型か!俺がダンカルで出る!
指揮は任せたぞ」
「はい!」
ルウェンはブリッジを出て、格納庫にある一回り大きな機体に乗り込む。
「ダンカル出るぞ!」
ルウェンが出撃し、レイスへと突撃する。
「そろそろ行こうか、爺さん」
「うむ」
遠くから戦場を観察していたラウドが動き出す。




