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ガルエンヴィ  作者: 夢物語
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第二話 加速

「もう少し精度を上げるか…」



ラウドがブリッジに入りながらつぶやく。



「どうして…どうして撤退している人達を攻撃したの!?」



胸ぐらを掴み、ラウドの体を壁に押し当てるアウル。



「何言ってる?敵を撃っただけだ。

俺に何を期待した?」



笑みを浮かべるラウドの頬をぶとうとアウルは右手を上げるが、拳を握り、ゆっくり下ろす。



「俺はあんたの敵でもある。

戦争を止めたいんじゃない。力を潰したいんだよ」



「でも、あなたを倒すためにまた新たな兵器を産み出すだけよ」



「それも潰す」



「どれだけの血が流れると思ってるの!」



「さあな…対話を諦めた結果だ。

自分達は無力だと嘆き、争いの愚かさも理解せずのうのうと生きている国民の血が流れてなぜ悲しむ?」



「国民だって分かってるはずよ!

それでも争いは止められないから…」



「仕方なく同じ人間を、国が違うというだけで殺すか…

それが人間…だから俺は力を奪う。

人間に期待しても無駄だ」



「…あなただって…あなただってとてつもない力を持ってるじゃない!」



「ああ、だから全ての力を奪った時、俺が死ぬときだ」



「!?」



「悪いな、半端な覚悟の相手に付き合ってる暇はないんだよ」



アウルを払いのけ、ラウドは近くのコンソールを操作する。



「爺さん、姫様を返すと向こうに連絡してくれ」



「わかった」



シヴァルードをカーロスの近くに着け、アウルを外に連れ出すラウド。



「直に迎えが来る。

世界も人もそう簡単には変わらない。

だから一度壊せばいい」



「世界を敵にまわしても?」



「破壊者だからな」



そう言ってラウドは艦内に戻り、シヴァルードは去っていく。

それからしばらくして車が数台、アウルの側に近付き止まる。



「姫様!」



中性的な顔立ちをした男が駆け寄った。



「スヴェル…ごめんなさい」



「いえ、御無事で何よりです。

識別不能の通信で姫様がここに居ると聞き、半信半疑でした。

ささ、ここは中立とはいえ危険です。

急いで戻りましょう」



「ええ」



アウルを乗せた車はカーロスの空港へ向かい、民間機を装った飛行機でハイド皇国へと飛び立つ。



「馬鹿者!お前は立場をわかっているのか!」



玉座の間にハイド皇帝の怒鳴り声が響く。



「わかっています!でも、争いからは何も得れません!」



「お前はクルードの恐ろしさを知らんのだ。

奴等は残虐で、放っておけば奴等に有益でない者は皆殺しにされる」



「そうならないためにしっかりと話し合いを」



「こちらの話を聞くと思っているのか?

両国の因縁はお前が思っているより深いのだ。

もう下がってよい」



アウルが下がろうとした時、ハイド皇帝が口を開いた。



「カーロスに現れた謎の機体はお前の仕業ではなかろうな?」



「違います!私は御父様と違って国民の命を軽んじてはいませんからっ!」



「なっ!?アウル!私が軽んじてると思っているのか!?待たんかアウル!」



アウルは早足で玉座の間を出ていき、スヴェルが慌てて後を追う。



「姫様!言い過ぎです!陛下は姫様を本当に心配なさっておられました!」



「わかってます。でも、私は御父様の考えを認める訳にはいきません」



廊下を歩いているアウルの前に三人の男女が立ちはだかる。



「ご機嫌ななめだな姫様」



「私たちを置いていった罰よ」



「まあまあ、二人とも」



「みんな!ごめんなさい」



「俺達はあんたを守る盾だ。

側にいなけりゃ守れるもんも守れねぇ」



「アルファ!貴様、姫様になんて口の聞き方だ!」



スヴェルはアルファの前に近付き、睨み付けた。



「スヴェルいいの!三人は家族みたいなものだから」



「アウル、もう一人で勝手に動かないで。

私達はどこまでもついていくから」



「ありがとうレベッカ」



「スヴェル将軍、後は僕達に任せてください」



「…わかった。私は軍議に出なければいけないからな。

姫様を頼む。

それとクイン、この馬鹿に言葉を教えてやってくれ!」



「なんだと?」



「アルファ!わ、分かりました。

さあ、行くよ」



アウル達は先に歩いていく。



「全く…私も急がねば」



スヴェルは急いで軍議室へと向かう。



「待たせた。始めてくれ」



スヴェルが席に着くと、部屋の明かりが消え、巨大スクリーンにガルエンヴィの姿が映し出される。



「今回、この機体の攻撃により、ナバラ艦隊は壊滅寸前に追い込まれました。

一度目の攻撃はプラズマ砲に似た攻撃、二度目は長距離による攻撃です」



「クルードの機体ではないのだな?」



「はい。

ナバラ艦隊に攻撃を仕掛けると同時に、クルードにもかなりの被害を与えました。

恐らく別の勢力と考えてよいかと」



「新たな勢力…しかし、我々やクルードの技術を遥かに超えたもののようだな」



「ちょっといいかな?」



白衣を来た男が手を挙げた。



「シュタイン博士どうぞ」



「この二度目の攻撃の映像を解析したんだけど、この機体と機体の上に現れた戦艦はもしかするとメテオレイドで作られてるかもしれない」



軍議室がざわつきはじめる。



「静かに!博士、どうしてそんな事がわかるんですか?」



スヴェルの言葉に静けさを取り戻す。



「この日光の反射した光りだよ。

メテオレイドは光りを屈折させずに反射するからね。

となると、相手は我々やクルードよりもメテオレイドの加工技術が上回っている」



「じゃあ、我々に勝ち目はないと?」



「いやいや、いくらメテオレイドとはいえ、機動兵器に使うのなら、耐久性は落ちるよ。

厄介なのは戦艦の方だ。

映像を解析しただけで武装は分からないが、通常兵器では歯が立たない」



「倒せるのはあの機体だけか…」



「そうでもないよ」



シュタインが手を叩くと、巨大スクリーンに設計図が映し出される。



「これは?」



「僕の新作、ドグライトアーマー!

メテオレイドを使った機体だよ」



一方、クルード軍モルデア艦隊の主力艦は海に沈んでいた。



「メスト大佐、もう少し速度を落としましょうか?」



「いや、構わん。もう迎えが来た」



バナールが操るワグナーの手の上に乗っているメストが指差した方向に、クルード軍の戦艦が見える。



「メスト、よく無事に戻った」



「申し訳ありません。このような帰還になるとは…」



メストはクルード皇帝の私室にいた。



「気にするな。お前をここまで追い込んだ敵は久し振りだな」



「次こそは陛下の期待に応えられるよう全力を尽くします」



「二人の時はネスタでいいと言っているだろ?

皇帝になっても友人だ」



「…ああ」



「それより、持ち帰って来た戦闘データを見たが、かなりの技術力だな」



「圧倒的だった…あの機体を見た時、死の恐怖を感じた。

あの時、撤退が少しでも遅れていたら全滅していたな」



クルード皇帝は近くの机にある機械を操作し、ガルエンヴィの映像を映し出す。



「まともにやり合うなら、こちらも更に上の機体が必要か…。

開発を急がせるか」



「ところでネスタ、例の物はどうなっている?」



「もうじき完成する。

将軍達から不満は出たが、お前に託す」



「いいのか?」



「友人ではなく、皇帝として出した答えだ。

必ずハイド皇国、そしてアンノウンを蹴散らしてくれ!」



「我が命をもって必ず敵を討ちます。

祖国と陛下の為に」



こうして、ラウドの影響により、戦争は激しさを増していく。


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