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ガルエンヴィ  作者: 夢物語
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第一話 破壊する者

「はぁ…はぁ…はぁ…」



「探せ!遠くにはまだ行ってないはずだ!」



少女は物陰に隠れ、黒服の男達をやり過ごす。



「このままじゃ…」



少女は通りに出て、タクシーを捕まえ乗り込む。



「駅まで行って!」



「金はあんのかい?」



札束を運転手に見せる少女。



「これは失礼しました」



タクシーは駅へ向かい、黒服の男がタクシーに乗っている少女を発見する。



「ありがとう」



「お気を付けて」



少女はタクシーを降り、駅の中に入るが、改札に黒服の男がいるのに気付き、駅から離れた。



「どうしよう…」



考えながら歩いていると、曲がり角で人相の悪い男達とぶつかる。



「ごめんなさい!」



「いってぇなぁ。ただで済むと思ってねぇよな」



「あなた達も余所見をしていたでしょ!悪いけど急いでるの」



通り過ぎようとする少女の手を掴む男。



「ふざけんなよ。

可愛いお顔に傷が付くぞ」



男はナイフを取り出し、少女の頬に当てる。

その時、後ろにいた男に通行人がぶつかった。



「いて!何しやがんだよ」



ぶつかった相手の肩を掴み、振り向かせた時、男の眉間に銃口が当たる。



「死ぬか?」



「い、い、いいえ」



「じゃあ、とっとと失せろ」



男達は慌ててその場を走り去っていく。



「ありがとうございました」



男は少女に銃口を向ける。



「失せろと言ったんだ」



「は、はい」



少女がゆっくり下がろうとした時、後ろから黒服の男達が現れた。



「いたぞ!

貴様何してる!」



先頭にいた黒服の男が銃を抜くと、男は少女から黒服の男へ銃口を向け、頭を撃ち抜く。



「うるさい」



男は黒服の男達を全員殺し、去ろうとする。



「あ、あの!」



「なんだ?俺は忙しいんだ」



「カーロスの街へ連れて行ってもらえませんか?」



「なんで俺が?そもそもあそこはもうじき戦場になる。

ガキがいく場所じゃない」



「どうしても行かなきゃダメなんです!」



男は少女をじっくり見て、小さな端末を取り出し、写真を撮った。



「な、何ですか?」



「ハイド皇国の姫、アウル・ハイドか。

戦争でも止めにいくつもりか?」



「どうして私がアウル・ハイドだと?」



男は小さな端末をアウルへ向けると、自分の情報が事細かく写し出されている事に驚く。



「こんなに細かく…バレているなら仕方ない。

私をカーロスへ連れていきなさい」



「理由を言え」



「一般市民のあなたには関係のない事です」



「そうか」



男は去ろうとし、アウルは男の前に回り込む。



「なんだ」



「私はハイド皇国の皇女よ!」



男は銃口をアウルの眉間に当てる。



「俺がクルード帝国のスパイだったらどうする?」



「!?」



「違うがな。理由を言えば考えてやる」



「父は新たな兵器を作り出し、それをカーロスで試そうとしている。

しかも、パイロットには16歳位の若者ばかり」



「新型か」



「大人が始めた、身勝手な争いにどうして将来のある若者が命をかけなければいけないの?

私はわからない…」



「だが国を持つ以上、それは仕方ないだろ」



「わかってる…でも、戦争なんて必要ない!」



「必要ないか…一つだけ教えといてやる。

この世に平和はない。

争いが終わり、平和になったと言うやつもいるが、それは平和じゃなく停滞。

争いは必ず起こる」



「世界中が努力すれば!」



「無理だ。

なぜ争いが起きると思う?」



「それは…他人を理解しようとせず、自分達の利益ばかりを考えるから」



「理解なんて出来るわけがない。

人に感情があるから争いが起こる。

憎しみ、嫉妬、愛情、色んな感情が他人を拒絶する鍵だ。

だから、どんな素晴らしい言葉を言っても、世界中の人間が争いはダメだと理解しても、感情が全てを壊す」



「じゃあ、あなたは感情を無くせというの?」



「いや、そんなんじゃつまらないだろ?

だから、人間の持つ最強の武器を破壊すればいい」



「最強の武器?」



「知識だ。

知識がなければ兵器は作れない。

争いが起きても小さなものだけ」



「そうだけど…」



男は歩き始める。



「付いてこい。カーロスまで送ってやる」



「え?ありがとう」



それから会話をする事なく二人は黙々と歩き続け、小さなBARに着く。



「こんな所にきてどうするの?」



「黙って付いてくればいい」



BARに入ると、奥のドアに入っていく。



「何も無い」



ドアの中はタイル張りの壁と床で、何も無い小さな空間だった。

男は、壁のタイルを1枚指で押し込む。



「え?動いてる?」



全く音はせず、体が浮く感覚を感じ、下に動いているのを理解するアウル。



「止まった?」



壁が開き、先には巨大な空間が広がっていた。



「地下にこんな場所が…」



男が小さな端末を操作すると、何もなかった空間に戦艦が現れる。



「何…これ」



「シヴァルード。俺の親父と爺さんが造った戦艦だ。

装甲には、メテオレイドを加工したリフレクプレートを使ってる」



「メテオレイド!?隕石から採れる鉱石じゃない!

ハイド皇国の軍ですら少量しか確保出来ず、その強度と特性から加工に長年苦労しているのに…

あなた何者なの?」



搭乗口が開き、階段が現れた。



「ラウド・ウィラー。ただの破壊者だ」



「破壊者…?」



ラウドはそう言って中に入っていき、アウルも後に続く。



「こっちだ」



ラウドに案内されブリッジに入ると、そこには誰も居なかった。



「クルーは居ないの?」



「俺だけだ」



「わしもおるわ」



スピーカーから老人の声が響く。



「あなたは?」



「マッド・ウィラー、天才科学者じゃ。

お嬢さんはどなたかの?」



「アウル・ハイドと言います」



「ほう…あのハイド皇国の…

ラウド、このお嬢さんをどうする気じゃ?」



「カーロスへ届ける」



「事情があるんじゃな。わかった!

二人ともイスに座っておれ」



二人がイスに座ると、シヴァルードが動き始める。



「え?どうやって動いてるの?」



「わしが動かしとる」



アウルは周りを見るが、ブリッジにはラウドしかいない。



「爺さんは自分の意識を写して、シヴァルードと一体化してる」



「写す…?」



「昔からある技術じゃ。

Consciousness Link System 通称CLS(シーエルエス)



CLS(シーエルエス)ってかなり前の技術ですよね?

確か意識を別の物へ写す事が出来る。

でも、長時間使用した場合や写した物が損傷した時、精神にかなりの影響が出るせいで欠陥だらけと分かって誰も使わなくなった」



「そうじゃ。

最悪の場合、死に至る。

わしはそれを改良し、精神への影響をゼロにした。

わしの場合は、シヴァルードのコントロールシステム自体に意識を繋いでおる」



「でも、それを世界に伝えれば、様々な分野で役に立つのに、どうしてしないんですか?」



「言ったろ?知識は最強の武器。

それをどう使うかで変わってくる。

無人の大量破壊兵器が出来るかもな」



「そんな!」



「人間は必ずしも、正しい事に知識を使うとは限らん。

おっと、そろそろ行くかの」



海が割れ、滑走路が現れる。



「シヴァルード発進じゃ!」



シヴァルードはどんどん加速し、一気に空に飛び上がり、日に照らされた赤いメタリックな船体が輝く。



「アウル、ここからハイド皇国の部隊に呼び掛けるか?」



「出来るんですか!?」



「世界の裏側にだって通信可能だ」



「お願いします!」



その頃、カーロスへ向けてハイド皇国軍が進行していた。



「新型の調整は完了したか?」



「はい、全機完了しています」



「クルードは何をしてくるかわからん。全員気を抜くな!」



ブリッジにいる全員が声を揃えて返事をする。



「艦長!識別不明の通信が来ています!」



「識別不明?なんと言ってる?」



「…そんな!アウル様です!」



「皇女様だと?繋げ」



ハイド皇国軍の戦艦にアウルの姿が映し出された。



「カーロスへ向かっているハイド皇国軍の皆さん、私はハイド皇国皇女、アウル・ハイドです。

今すぐ軍を引いてください」



「私はナバラ艦隊指揮官、シーマス・ベラ大佐であります。

理由をお聞かせ願います」



「クルードとは話し合いで解決すべきなのです。

未来ある若者達を戦わすなどあってはなりません」



「御言葉ですが、全兵士は未来を勝ち取るために戦場にいるのです。

クルードを倒さねば、未来など無いに等しい。

申し訳ありませんが、我々はジキル皇帝陛下の命で動いております。

アウル皇女様であろうと、我が艦隊に命令する権限はございません」



「相手を理解せず、武力で得た未来などに価値などありません!

我々はお互いの思い理解し、歩み寄る事が出来るはずです。

憎しみを増大させるだけだと思わないのですか?」



「…長年の憎しみは、骨の髄まで染み込んでいるのです。

憎しみを断ち切るため、我々はクルードを潰す!

間もなく戦闘に入るので、失礼いたします」



通信は切られ、その場に座り込むアウル。



「前線の兵士に言うより、親父さんに言えばいいんじゃないのか?」



「言ったわ…でも、世迷い言だと言われ、私は軟禁されてしまった」



「それであの黒服達に追われてたのか。

どうりで平気で人を殺す俺なんかを頼ったわけだな」



「もう止められない…」



それから少しして、カーロスでナバラ艦隊とクルード軍モルデア艦隊の戦いが始まる。



「ヴァールガン隊を先頭に、ブラスナー、モールス隊出撃!

イレヴァンス隊は分散して支援だ」



「イレヴァンスを支援に回すのですか?」



シーマスの側にいる女性が訊ねる。



「上からの指示だ。

新型はまだ量産が追い付いていないから失いたくないんだろう。

たく、上の連中は兵士の命をなんだと思ってるんだ。

サラハ副長、例の機体はどうなってる?」



「もうしばらく掛かるそうです」



「そうか。期待せず待つとするか」



一方、クルード軍モルデア艦隊も部隊を出撃させる。



「ドルガム、アルカム、フェルム隊を出撃させろ。

しかし、私がこのような戦艦で戦場に駆り出されるとはな」



「メスト大佐、心痛お察し申し上げます」



「バナール、お前に期待しているぞ」



「はっ!我がワグナーがあれば敵のウォーアーマーが何体来ようと蹴散らしてみせます!」



バナールはブリッジを出ていく。



「失望させるなよ」



バナールは、他のウォーアーマーより一回り大きい紫の機体に乗り込む。



「待っていろハイド皇国め!

バナール、ワグナー出撃する」



ワグナーの羽のようなブースターを広げバナールは飛び出す。



「艦長!敵主力艦から高熱源反応!」



「報告のあった紫のネオアーマーか。

仕方ない、イレヴァンスで集中攻撃させろ!他の隊はイレヴァンスの側に敵機を近づけさせるな!」


次々とハイド軍のウォーアーマーを破壊していくバナール。



「弱い!弱すぎるぞ!」



その時、ワグナーを取り囲む様にイレヴァンス隊が現れ、一斉射撃をする。



「くっ!敵の新型か!

だが、このワグナーをなめるなよ!」



バナールは空高く上がり、ブースターの羽を広げた。



「砕け散れ!」



ブースターの羽から放たれた振動波が大気を揺らしながら、真下にいたイレヴァンスを破壊していく。



「イレヴァンス隊、全滅です!」



「バカな!?」



「艦長!ネオアーマーがこちらに来ます!」



「絶対に近づけさせるな!」



厚い弾幕を掻い潜り主力艦へ近付くバナール。



「終わりだ」



羽を広げ、ワグナーの振動波が主力艦のブリッジを襲い、内部にまで伝わる。



「ぐあっ!」



「か、艦長!持ちません!」



「こんな所で…」



その時、バナールは横から蹴り飛ばされた。



「ぐっ!新手か!」



ハイド軍の主力艦を守るように、鮮やかな青色の機体が現れた。



「遅れました!」



「ヨシュア少尉か。助かった」



「あの機体は僕が相手をします!」



「頼んだぞ!」



ヨシュアはバナールへ猛スピードで接近する。



「このワグナーに勝てると思っているのか!」



再び羽が広がり、振動波を放つと、ヨシュアはスピードを落とさず右へ反れた。



「バカな!?あのスピードでかわすだと!」



「このスピルターは高速戦闘に特化した機体だ。

お前の攻撃なんか当たるか!」



バナールの背後を捉え、照準を合わせライフルを放つヨシュア。



「くっ!」



何とかかわすが、羽を一枚損傷し体勢を崩すバナール。



「よくも!ハイドの蝿が調子に乗るなよ!」



一方、シヴァルードはまだカーロスへ向かっていた。



「ラウド、ここまで連れて来てくれてありがとう。

もういいわ」



「勘違いするな。俺達の行き先もカーロスだからな」



「何しにカーロスへ?」



「もうじき着くな」



ラウドはブリッジのドアを開く。



「どこに行くの?」



「役目を果たしに」



ラウドはそのまま近くのエレベーターで下へ降り、格納庫へ入り目の前にある赤黒い機体へ乗り込むラウド。



「お前の出番だ」



機体を起動させ、二本の筒状の物を機体に握らせ、ラウドは出撃準備に入る。



「射出角調整完了。システムオールグリーン。出撃OKです」



「ガルエンヴィ…全てを破壊する!」



カタパルトから射出され、ガルエンヴィの背中にある漆黒の翼を広げ、戦場へ向かうラウド。



「ちょこまかと…これをかわしてみろ!」



ワグナーの装甲に無数の穴が開き、次の瞬間、周囲の大気が振動して、ガードしたスピルターのシールドを破壊し距離を置くヨシュア。



「あの羽だけじゃなく、機体その物から振動波を放つなんて。

このままじゃ近付け…ん?」



その時、スピルターとワグナーのコックピット内に、アラームが鳴り響き、戦場に無数の黒いいかずちを帯びた閃光が走る。



「ぐぐっ!なんだ!?」



「か、艦長!三時の方向に高熱源反応!」



「クルード軍の機体でもなさそうだな…被害は?」



「我が艦隊、敵艦隊共に半数以上が大破!

我が艦隊の残りは戦艦4隻、ヴァールガン、ブラスナー隊残り40、モールス隊…全滅」



「くそっ!モニターを映せ!」



主力艦のブリッジに、翼を広げ、両手に銃口が無数にある武器を持ったガルエンヴィが映し出された。



「悪魔…」



一方、クルード軍の主力艦にもガルエンヴィの映像が映る。



「あの機体はなんだ…バナールを戻せ!全軍撤退だ!」



「しかし、ハイド軍はまだ目の前に」



「命令だ!(この感じ…恐怖)」



バナールの元に帰艦命令が届く。



「帰艦だと!くっ…目の前に敵がいるのに…

あの機体も次会ったら粉々にしてやる!」



バナールは主力艦へと戻る。



「撤退したのか…

艦長!あの機体、嫌な感じがします」



「嫌な感じ?」



「うまく言えませんが、性能や技術とかではなく、根本から僕達や、クルードとは違う異質な何かを感じるんです…

我々も撤退しましょう!」



「仕方ないか…わかった。全軍に撤退命令をだせ!

生存機を回収後、全速力で現空域を離脱する!」



両軍が撤退し始め、ラウドは両手の武器を筒状に戻す。



「撤退か…爺さん !」



「わかっとる!」



ガルエンヴィの頭上にシヴァルードが現れ、船底から巨大な砲身が出てくる。



「接続完了。パワーチャージ開始…18…42…68…91…チャージ完了。照準をマニュアルに変更」



コックピットに映し出された両軍の後方に照準を合わせるラウド。



「罪深き愚者に救いを…」



ラウドが引き金を引くと、ガルエンヴィの両手にある巨大な砲身からまばゆい光が放たれ、撤退する両軍を襲う。



「ば、ばかな!?この距離から攻撃だと!」



「艦長!左エンジン消滅、後方にいた戦艦消滅」



「なんなんだ!」



一方、モルデア艦隊。



「ぐっ!さっきの機体からか!」



「メスト大佐!我が艦隊は本艦を残し全滅、本艦も甚大な被害が出ています!

このままでは基地に戻る前に墜落してしまいます!」



「救援要請を出し、行けるギリギリまで飛ばせ!

墜落する前に収容したウォーアーマーで脱出する!」



「了解!」



「目的はなんなんだ…」



一部始終を見ていたアウルはその光景に驚愕していた。



「何…」



「あれはじゃな、太陽エネルギーを使った」



「そうじゃなくて!なんで戦闘は終わったのに!」



「爺さん、全滅したか?」



「いや、主力艦は何とか生きとるみたいじゃ」



「やっぱりマニュアルだとズレるな」



「なん…なの?」



ラウドを収容し、シヴァルードはカーロスの側に降りていく。

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