疑問
「へ…どうなっているの?」
気の抜けた声で、恐る恐る近づく。
確かに真っ二つになっているし、甲冑もズタズタだしこの状態で血が出てないのは変だ。
よく見ると千切れている部分がドロドロとした液体になっており、甲冑で見えなかったが身体?の部分が、スライムを固めたような固形で触るとブヨブヨとしていた。
触ってはじめて気が付いたわ。魔力を感じる…魔法だ――――
怪しいとは思っていたけど、まさか魔法を使えるなんて。
今の時代、魔女以外で魔法を使うのは禁止されている。
どうゆうことなの!?どうして彼は魔法を使用できるの。
魔女協会でも教えてくれなかったわ!何か都合の悪い事でもあるの――――
グルグルと考え事をしていたら余計に困惑して、頭が痛くなる。
正直、この危険な状況に疑問をぶつけても意味がない。
この甲冑達が人間じゃなく魔法でできているなら、上手く利用できるかも。
――――
(きつくなってきたな…)
アレックスは、キメラの攻撃を躱しながら自身が魔法で動かしている人形に、攻撃を仕掛けているがキメラの再生能力が強く、致命傷を負わせられない。
二体やられて残りは四体。
とはいっても、一体はキメラに踏みつぶされてボロボロで使えない。他に手はないではないが…彼女に私が魔法を使えると、知られる訳にはいかない。かといって今の状況で勝てる相手でもない―――
彼女の使い魔は、何故か無事だったな。おかげで彼女は助かった。
あの使い魔に言ってこの場から離れるよう言えば、気にせず魔法が使える。
またキメラが大きく前足を振り下ろしてきた。アレックスは避け、人形たちに槍を投げ目を狙うよう指示した。少しよろめいたスキを狙い、アレックスは大声で呼びかけた。
「使い魔!この場に居ては危険だ。彼女を連れてこの場から離れろ!!」
そういいながら、エルサナたちが居る方向を見たが、何故か居なかった。
「何処に行った…?」
すると逆方向から使い魔が何やら袋を咥えて走って来た。勢いよく走り、キメラのちょうど真上までジャンプし、咥えていた袋をキメラの頭に落とした。
何をしているんだ―――
すると、袋から自身が魔法で作った甲冑達がバラバラに出てきた。驚いたのも束の間、茂みに隠れていたエルサナが即座に魔法をかけ始めた。
「そのモノよ増幅し、化の者の動きを止めろ」
唱えたら一つ一つの部分が肥大化し、キメラの体に覆いかぶさった。元々、スライムを固めたような体だったため、肥大化したのを機に体が液体になりドロドロし、キメラの動きを鈍くした。
「早く!今のうちに!!」
エルサナが叫ぶと、使い魔がアレックスを咥えて走った。
「主の命だ。遠くに逃げるぞ」
「クソ…。お前たちこの場に残ってキメラの足止めをしろ!」
咥えられながらもアレックスは人形たちに何とか命令を出し、エルサナと合流して二人と一匹は森の奥へと入った。
――――
かなり遠くまで走り、キメラの叫び声が聞こえなくなったところでアレックスが止まった。
「ちょっと、聞こえなくなったぐらいの距離で大丈夫なの?もう少し離れない?」
エルサナがまだ走るよう促したが、アレックスの鋭い目つきが更に悪くなりエルサナを睨んだ。
「ハァ、ハァ・・・・君は、使い魔に乗っているから…そんな事を言えるんだ。かなりの距離を走った。すぐに来ることは、ないだろう」
肩で息をしながらアレックスが話す。
不安は残るが、アレックスの体力を考えて休むことにした。
近くに隠れられそうな場所を見つけ、少しでも不安を無くしたいエルサナは、周囲に音が出ない魔法をかけた。
(いま出来ることはこれくらいね…)
人が二人ほど隠れられる大きな木の近くに、エルサナは座り、まだ危険はないか目を配らせながら辺りを確認した。木の反対側にアレックスのマントが見える、どうやら休んでいるみたいだ。
今、使い魔は周囲の様子を確認しに行くよう命令した為いない。落ち着いている今なら聞けるかしらと思いエルサナは疑問をぶつけた。
「あなた、魔法を使えるのね…どうして魔女でもない人が魔法を使えるのかしら」
「・・・・」
「答える気はないのね。一応、私あなたを助けたのよ。貸しがある人には答えた方がいいと思うわよ」
「・・・・」
「流石に無視し続けられるの悲しいのだけど…答えなさいよ」
「・・・・」
ついに堪忍袋の緒が切れる。
「あなたね!いい加減に――――」
「何をしているんだ君は…」
目に前にアレックスと使い魔が現れた。
「なぜ、私のマントに話し掛けているのだ?」
木の反対側を確認すると、アレックスのマントが木にかかっていた。
エルサナが魔法をかけている間、使い魔と共に周囲を確認しに行っていたようだった。
恥ずかしさで顔が熱くなる。
「・・・・・・・・・・・なんでもありません・・・」
――――
私は木にもたれかかり、その隣に使い魔が座り、アレックスは少し離れた所に座っていた。しばらく無言の時間が続く。
聞きたいけど、さっきの出来事が恥ずかしすぎて話しかけられない。
心の中で悶えていると、意外なことにアレックスの方から話しかけてきた。
「もう気づいていると思うが、私は魔法が使える…」
「えっ…そ、そのようね…」
もう、ビックリさせないでよ――――
「なぜ、私が魔法を使えるのか、気にならないのか?」
「気にならないわけないわ・・・・話してくれるの?」
アレックスは少し考え込む。
腹をくくったのか、深呼吸した後、エルサナに向き合う。
「・・・・そうだな。君に私の正体を話そう」
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次回は 9月5日 17時30分を予定しております。
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