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魔女とクマの使い魔  作者: 雪白せっか


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そこにいたのは

 

 森の中は予想以上にジメジメして湿気だらけで暑苦しかった。

 数分歩いただけで汗が出てきて、汗と湿気のダブルパンチで服が張り付き気持ちが悪い。


(ベタベタする…昨日、お風呂に入っとけばよかった)


 汗をかいてるから、意味がないと思いつつ匂いを気にしていた。匂いを消す魔法はあるが、店主を見つけ次第転送魔法をかける予定なので、今魔力を消費するのは良くない。匂いが何よ!気にしない気にしない!と自分に言い聞かせた。

 そんな事より森に入ってからピッタリと隣で歩いている使い魔が、先ほどから右左、後ろ前と忙しく首を動かしていた。


「さっきからキョロキョロとして、どうしたのよ。…もしかして怖い、とか?」

「何を馬鹿なことを言ってるんですか主は…」


 少し小馬鹿にした言い方をしたので、ムッとしたエルサナ


「そーですか。心配した私がバカでしたね!もう知らないわよ」

「使い魔を心配するなんて、主は変わってますね。まだ仮契約中ですよね」

「仮契約中だろうが、どんな状態だろうが、召喚したのは私なんだし、最後まで

 しっかりと責任は持つわよ。当り前じゃない!」


 本契約するかどうかは置いといて―――と言葉をグッと飲み込んだ。

 そんなエルサナの言葉を聞き、使い魔はじーと見つめてきた。

 正直、表情が分からないので今何を思ってるのかが読み取れない―――

 気まずそうにエルサナが話しかける。


「・・・・・なによ」

「いえ、別に」


 えっ何よそれ。めちゃくちゃ気になるんですけど―――

 そんなエルサナの気持ちは知らんふりで、使い魔はまた、キョロキョロと周囲を見始めた。相変わらずせわしなく首を動かしながら。

 森に入ってから一時間は経過した。先頭はアレックスの部下達が歩き、少し間を開けてアレックスが居り、後ろにエルサナと使い魔が並んで歩いていた。

 木の根っこが盛り上がってる所もあれば、ぬかるんでいる場所もあり、歩きにくい。中々、店主も見つからずエルサナは不安になってきた。

 この湿度に蒸し暑さ―――時間が立てば立つほど体力を消耗する。

 前に歩いているアレックスに声を掛けた。


「ねぇ、声掛けして捜索しない?この森、危険な獣とかいないし大声出しても大丈夫よ」

「そうだな、この暑さと湿度のせいで体力の消耗を考えながら捜索してたが、店主の命が優先だ。すぐに―――」


 アレックスが言いかけた時、突然使い魔が歩くのを止め、ある方向を直視して動かなくなった。


「なに、どうしたの?」


 不思議に思いエルサナが聞いた。使い魔は、真剣な声色で話してきた。


「主…ここは危険だ、すぐに森を出ましょう」

「何言ってんのよ、大丈夫よ。この森何回か来た事あるけど、危険な獣とかいないし、それよりもおじさまの安否が―――」

「待て!静かに…」


 アレックスが静かにするよう呼びかけた。

 皆が静止し耳を澄ました。すると、遠くから鈍い音が聞こえてきた。


「・・・・何の音?」


 何かが折られているような、音は少しずつ大きくなってきて、段々こちらに近づいてきているようだった。

 バキバキと木々を勢いよくなぎ倒す音が響き渡り、地面が揺れ始める。

 そして、猛獣の轟く声が森全体に響き渡った―――


「主!!」


 使い魔が前に出るのと同時に、目の前に巨大な猛獣が現れ、鞭のようなものが真横から飛んできた。

使い魔に当たり使い魔は遠くに飛ばされてしまった。

 エルサナの悲鳴が響く。


「キメラ!?なぜここに―――」


 アレックスは剣を抜き、部下たちも戦闘態勢に入った。

 ライオンの頭、ヤギの胴体。蛇の尻尾を持つ巨大な(七メートルはある)猛獣の出現に驚きを隠せない。


「キメラって隣国に居る猛獣よね!?どうしてここに…」

「理由は分からないが、戦うしかない。ここは危険だ!君は遠くに避難し―――」


 キメラの尻尾が真上から振り下ろされた。アレックスは間一髪で避け、剣で尻尾を斬りつけたが、直ぐに再生してしまい意味がなかった。

 部下たちが槍を持ち、突進していくも機敏な動きで避けられてしまう。


(逃げたいけど、足が上手く動かせない)


 戦闘経験がないエルサナは、恐怖で動けなくなってしまった。

 なんで動かないのよ!動きなさいよ―――

 ここに居ちゃキメラに殺されるし、足手まといよ。焦れば焦るほど動けなかった、

 パニック状態になり目から涙が止まらなかった。


 泣くな、泣くな!!―――


 魔女になるとき決めたでしょ!どんな事が起きても泣かない、あきらめない!

 完璧な魔女になるって―――


「危ない!避けろ!!!!」


 アレックスの叫びと共に、キメラがエルサナに向かって突進してくる、反射的に目をつぶってしまい死を覚悟した。

 あぁこんな所で死ぬのね私、やりたいこと…いっぱいあったのに―――


 その時、自身の体が勢いよく後ろに引っ張られる感覚が起きた。驚きで目を見開いたが、何が起きたのか分からず視界がグルグルと回り、気づいたら地面からかなり離れていた。離れているというか…


「な、な、な…」


 エルサナは、天高く飛んでいた。


「主、無事ですか?」


 振り向くと、初っ端遠くに飛ばされたはずの使い魔がいた。エルサナの服を咥えながら、ジャンプして助けたらしい。

 無事着地してキメラから離れた所で、降ろしてくれた。


「あなた、無事だったの!?かなり飛ばされてたけど」

「まぁ、何とか…うまく受けたので」

「そんなんで助かるの?」


 身体や手、頭から血は出てないし、泥がついている位でケガはなさそうね。

 色々と疑問しか浮かばないけど、無事生きていて良かったわ。最後まで責任持つといった手前、何も出来ずに死んでしまったら後悔しかないし。落ち着いてきたら頭が冷静になってきたわ。何とか体が動ける様になったし、よし!―――


 エルサナは、今だキメラと戦っているアレックス達を見た。何とか紙一重に躱しながら、攻撃を繰り返しているが致命傷になるほどの攻撃は当たっていないようだ。


「この状況、何とかしないといけないわね…」

「主は戦闘用の魔法は使えるんです?」

「使えないわ。戦闘用魔法なんて授業で習ったことないし。手伝いたいけど、下手に動けば足手まといになるし、どうしたら…」


 必死に策を捻りだそうと考えたが、何も思いつかず、ただ時間だけが過ぎていく

「主、俺が囮になります。その隙にあの男と一緒に逃げて下さい」

「なっ、何言いだすのよあなたは!一人で相手できるわけないでしょ―――」


 流石にきつくなってきたのか、アレックスの動きにキレがなくなってきていた。

 甲冑を着ている部下たちも同様で、よろよろと立ち上がっている。


「あの男もそろそろ限界だな…俺が攻撃を仕掛けてその隙に、あの男を主の居る場所まで投げ飛ばします。そのまま主は――――」

「待ちなさいよ!何勝手に話し進めているのよ!!!」


 今にも飛び出しそうな使い魔を、慌てて止めに入る。


「時間がありません。今の状態だと、あのキメラ相手に主を守りながら戦うのは無理です」


 使い魔がイライラし棘のある言い方をしたので、エルサナは余計に怒りをあらわにし怒鳴った。


「仮契約中とはいえ、あなたは私の使い魔でしょ!自分が助かるために、あなたを使い捨ての道具みたいにしたくないわ!」

「使い魔は使い捨ての駒ですよ主。今の時代、使い魔に対してどんな扱いをしているのか知りませんが、俺たちは所詮、主の駒として動き死ぬんです」

「何よその言い方!私たち魔女が使い魔を道具として扱ってきたみたいな言い方して」


 お互い譲る気もなく言い争いが続く。

 その時、キメラの咆哮が響いた。振り向くとキメラが前足で、部下の一人を踏みつぶしていた。二人の部下が、槍で前足を攻撃しているが効果はないようだ。


「どうしよう、どうにかして助けないと―――」


 直後、キメラが大きく前足を振り降ろし槍で攻撃していた二人に直撃した。その勢いで胴体が真っ二つになり、エルサナたちの目の前に落ちた。

 視界には大量の血に、臓物が広がって―――――――



 おらず胴体が真っ二つになっているのに、二人の部下から血は一滴も出ていなかった。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

次回は 9月3日 17時30分を予定しております。


「面白い」「応援したい」と思ってくださったら☆やブクマをよろしくお願いします。

読んでくださるだけでも執筆の励みになります。

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