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魔女とクマの使い魔  作者: 雪白せっか


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昔話 ②

「に、兄さま…?」


「なんだ、その幽霊でも見た顔は…そんなに驚くか?」


「いつも父様と一緒にいるから…それに、話しかけちゃいけないと思って…」


久しぶりに会話をするので、どうしたらいいのか分からず、エルサナは本の端を

ギュッと軽く握る。


「そっか、ごめんな。後継者として色々覚えることが多いし、学ぶことばかりで…

気を遣わせたな」


「いいえ、兄さま謝らないでください。わたしが勝手に思い込んでいたのです。

お忙しいのに、ここに居て平気なのですか?」


「大丈夫だよ、珍しく時間が空いてね。休憩しようと裏庭に来たらエルが熱心に本を読んでいて気になったんだ、どんな本なんだい?」


頬を赤らめながら本で半分顔を隠すようにして答える。


「ええと…魔導書の偽物本です。以前学校で流行っていて…それで、その…」


「魔導書・・・・」


一瞬不穏な空気が流れるのを肌で感じる、初めてみる兄の表情を視たからだろうか

怒り?不安?どちらともいえない――――


「兄さま…どうしましたの?」


「いや、なんでもない…その魔導書は偽物なんだな」


「は、い。持ってきた女子生徒が偽物と…」


「それならいい。偽物ならいいんだ…」


どうゆう意味なのか分からなかったが、あれほど熱心に解読しようとしていた意欲が、急速に下がっていく。

兄の表情を視てこれ以上はやめた方がいいと判断した。


冷静になると自分を客観視できるようになるもので、これからは熱中しても

一度落ち着いてから行動に移そうと決意する。



 それでも魔導書を読むのは止めず、以前のように授業をサボってまで読むことはなくなったが・・・

まじめに授業を受けるも、兄のいった言葉や魔法の事がチラつき、授業中エルサナはどこかうわの空で窓の外を見ていた。


案の定 成績が落ち、読書の時間を減らして勉強するようにと母に言われた。


読書が出来ないのは何よりつらいが、来年エルサナは15になる歳…

いい加減、将来なにをするのか決めなければならない。


よーし決めるぞーやるぞー頑張るぞー・・・・と意気込んでもやりたい事が不明。


もういっそのこと、適当にくじでも引いて決めようかとも考えたが、

そんなんで決まるわけもなく

本が読めぬストレスを抱えたまま年が過ぎ、15を迎える誕生日が来月までに迫ってきた。


 (ここまで迫って追い込まれているのにいるのに、どうしてわたしは見つけられないの…)


焦り 苛立ち 不安 もどかしさがエルサナの精神を蝕んでいく

自分の情けなさが鬱陶しく感じ、怒りを覚える。




そんな日々を過ごしていた、ある日の午後――――

街に「魔女が訪れた」との知らせを同級生達が騒いでいるのを耳にした。


「ほんとに?その話しどこからよ」

「お父様からきいたのよ。船で渡って来たみたい」

「ほうきとか乗らないんだ…」

「物語の読み過ぎよ、人間が飛べるわけないでしょ」

「この街になんの用事で来たのかしら」

「魔女って遠い国の人でしょ、向こうでは魔女がお医者様の代わりをしているって噂よ」

「職業が魔女って、なんだか可笑しいわね」


 好き勝手におしゃべりをしている同級生達を横目に、エルサナは廊下にある大きな窓から空を見上げた。


 魔女、魔法を習得した人――――


狂ったように魔導書を読んでいた感情を思い出すエルサナは、大胆な行動に出る。



*******


「ここに魔女がいるのかしら…」


学校が終わり、エルサナは迎えの者に居残って勉強するからと言い残し、こっそり学校の裏門から出て走ってきたのだ。


そこは、木々が多く植えられており緑豊かで

果樹もあり、実は新鮮で引き締まっており

腰ほどの高さの塀が囲うようにつながっている。

ここは街外れに位置し、主に農業を生業としている人たちが働いている場所である。


魔女は街に来る前に王様とお会いした後、この国の果樹と草木を少し分けて欲しいと願ったそう、

王様は快く承諾して

国の中でも多く生産し、品質の高いこの街を紹介してくださり

魔女は訪れたそうだ。


エルサナは魔女が街に来た理由をダメもとで学長に聞いてみたところ、

驚いたことに知っていて、あっさりと教えてくれたのだ。


(おしゃべりが好きな学長様でよかったわ・・・・)


あてずっぽうで街の中を探すなど無理があるので、情報を聞けただけでも運がよかった。


確実にここに居ると確証はないが、果樹や草木がある場所など限られている

居てくれればラッキーぐらいの気持ちで、エルサナは塀を登り中に入っていく。



夕刻の時間というのもあり、農民の人々は帰っており

木々がうっそうと生い茂っている薄暗い空間を、エルサナはゆっくり歩いて行く。


作業がしやすい様に、人ひとりが通れる手入れがされている道が在るため

歩くには問題はないが、どこまで繋がっていて、どれほどの大きさなのか

地図がないので分からなかった。



しばらく歩き続け広場のような開けた場所に着いた。

木で建てられた小屋に、果物を入れている正方形の箱がいくつも置いてあり

薬草を育てている温室があった。


ちらほらと手作り感満載のテーブルと椅子が置いてあり、おそらく農民の休憩場所でもあるようだ。


広場を見ていたら、奥の木々の方から人影を見つけた。

ドキリと心臓が鳴った。

魔女なのかしら…思わず木で隠れてしまった。


遠くて見えにくいが薬草を取っているのだろうか、かがんでいる姿がうっすらと目に映る。

もう少し見えないかと体を前のめりしたその時――――


「ホー!!ホー!!」


頭上から羽をバタつかせながら、エルサナをつついてくるフクロウが現れる。


「うあぁーーーーなに!?なんなの!!!」


突然の攻撃にエルサナは大声を上げ叫ぶ。


「こら ローラン。女の子の頭をつつくものではありません」



芯がありハリのある声が耳に入る。



短くまとまった白髪に、色鮮やかな宝石が埋め込まれたネックレスと

闇の中に溶け込みそうなほどの深い黒色のシックなドレスを纏った年配の女性が

木々の奥から現れる。


「あ・・・あの・・・」


「うちの子が驚かせてごめんなさい。

お詫びにお茶とかいかがかしら」


ニコリと笑うその女性は、目鼻立ちがハッキリしていて

クールな印象の一重にライトブラウンの瞳

年齢は六十代後半ぐらいだろうか、見た目は年配だが

不思議と若々しさを感じてしまうような人だった。


それに、目の前の女性が微笑むと何故だか分からないが、安心してしまい

それまで緊張で全身の筋肉がこわばっていたが、ゆるゆると力が抜けていく。



「え、と・・・いただきます」


「ふふ。準備するから椅子に座って待っててね」



そう言うと女性は小屋の中に入っていった。



これが わたしが、生まれて初めて出会った魔女である――――





ここまで読んで頂きありがとうございます。

次回は 明日 17時30分を予定しております。


「面白い」「応援したい」と思ってくださったら☆やブクマをよろしくお願いします。

読んでくださるだけでも執筆の励みになります。

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